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[教えて!ドクター] 2013/12/06[金]

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すみやかに医療機関を受診し、皮膚科医の治療を受けること

取材・文/松沢 実・医療ジャーナリスト
取材協力/虎の門病院 皮膚科 林伸和(はやし・のぶかず) 部長
カルナの豆知識2013年4・5月号特集

ディフェリンゲルで劇的に変わったニキビ治療

 ニキビといえば思春期の十代や若い女性の悩みの種。ひどくなると炎症が広がり、きれいな肌がクレーターのように凹んだり、盛りあがったりして醜いニキビ痕を残してしまうこともあるから大変です。そんなニキビの治療が、ここ4~5年で大きく変わってきました。

 「医師から処方される医療用医薬品の『ディフェリンゲル』(一般名:アダパレン)が2008年に厚生労働省から承認され、健康保険の適用を受けるようになってから、日本のニキビ治療は劇的に変わったのです。いまやニキビの治療はドラッグストアなどで売られている市販薬や化粧品などに頼るのではなく、すみやかに皮膚科を受診して治す時代になったのです」と指摘するのは、昨年「ニキビ治療推進委員会」を発足させ、その委員長として新たな国際標準のニキビ治療の普及に努める、林伸和部長(虎の門病院皮膚科)です。

約半数の人が医療機関を受診して治療するフランス

 小学校6年生から大学生の世代の793人を対象とした林部長の調査によると、「ニキビにどう対応するのか」という質問に対してもっとも多かったのが、「ドラッグストアで市販薬を買う」との回答で36%を占めていました。次に「肌の手入れに努める」(35%)、「自分でつぶす」(26%)と続き、病院で治療すると答えた人は、わずか12%にとどまっていたのです。

 林部長「一方、世界各国のニキビ患者さんの医療機関受診率を調べた報告では、フランスは41%、イタリアは39%のニキビ患者さんが病院やクリニックを受診し、医療機関で治療を受けているのです」

 なぜ、日本では医療機関を受診するニキビの患者が少ないのでしょうか。ニキビの特効薬として国際的に認められている『ディフェリンゲル』などの外用レチノイイド薬の承認が20~30年遅れ、ニキビの国際標準治療で得られる優れた治療効果がまだまだ多くの人に知られていないからです。

微小面皰(びしょうめんぽう)から隠れニキビ=白ニキビ、黒ニキビへ

 そもそもニキビは尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)という皮膚の慢性炎症性疾患。毛穴の出口付近で生じた角質化異常からその内部=毛穴に皮脂が溜まり、皮脂を好みとする皮膚の常在菌=アクネ菌の急増によって、炎症が生じる皮膚病です。

 林部長「ニキビの初期は、毛穴の奥の皮脂腺から分泌された皮脂が毛穴に溜まり始め、毛穴を膨らませて微小面皰をつくります」

 微小面皰は顕微鏡でしか見えないような微かな変化ですが、そのうちに毛穴の膨らみが次第に大きくなっていきます。そして毛穴の出口が塞がれて皮脂が外に出られなくなると、目に見える膨らみ=面皰を形成します。ポツンと白い小さな点に見えることから、白ニキビと呼ばれます。

 林部長「白ニキビの毛穴が開いたりすると、毛穴を詰まらせている角栓(乾いた皮脂や周囲の皮膚角質の塊)にメラニン色素が含まれているため黒く見えます」

 黒ニキビと呼ばれるのがこれです。
 白ニキビや黒ニキビで不快感を覚えることはほとんどないので、「隠れニキビ」とも呼ばれます。

最終コーナーへさしかかると赤ニキビへ

 白ニキビや黒ニキビが生じて毛穴に皮脂が溜まると、皮脂を餌とするアクネ菌が毛穴の中で増殖し炎症を引き起こします。

 林部長「アクネ菌によって毛穴の内部やその周囲に炎症が広がると、赤い盛りあがり=丘疹がつくられます。赤ニキビと呼ばれるのがこれで、炎症性皮疹ともいいます」

 厄介なのは赤ニキビの出現によってようやく「ニキビができた」と認識する人が圧倒的に多いことです。あるいは、「赤ニキビ=ニキビ」と勝手に思いこみ、白ニキビや黒ニキビなどの「隠れニキビ」を、ニキビと考えていない方が多いという事実です。

 林部長「ニキビの発症は毛穴の出口付近で生じた角質化異常から、その内部=毛穴に皮脂が溜まり出した時点から始まっています。そして白ニキビや黒ニキビなどの『隠れニキビ』を経て進行し、最終コーナーにさしかかったところで赤ニキビが出現するのです」

 病気の治療は早期発見・早期治療が基本です。ニキビも例外ではありません。赤ニキビに至る前の隠れニキビの段階における治療なしに、ニキビの改善・解消はあり得ません。先の「ディフェリンゲル」は赤ニキビ=炎症性皮疹が生じる前に、毛穴に皮脂が溜まるのを防ぐ特効薬だからこそ、ニキビの国際標準治療の決め手とされているのです。

皮脂を排出させやすくする塗り薬がディフェリンゲル

 林部長「ディフェリンゲルは毛穴に溜まりがちな皮脂を、毛穴の外へ排出させやすくする塗り薬=外用薬です。もともと皮脂腺から分泌された皮脂は毛穴から皮膚表面に沁み出し、そのバリア機能(防御機能)を補強する役割を果たしています。ディフェリンゲルは、そうした皮脂の働きを促進する外用薬ともいえます」

 実は、これまでの日本のニキビ治療は、抗菌薬で炎症を抑える治療が主軸とされてきました。すなわち赤ニキビの炎症を抑えるだけの治療が主軸だったので、抗菌薬によって炎症が一旦抑えられても、周囲の隠れニキビを含めて毛穴に溜まった皮脂はそのままなので、赤ニキビの再発が免れなかったのです。

 林部長「抗菌薬を患部に塗ったり服用したりしても、モグラ叩きのモグラのように、叩いても叩いても赤ニキビが繰り返し出現するのは、こうした理由からなのです」

 毛穴に皮脂が溜まりやすいことに対する治療は、赤ニキビを根治させるために欠かせません。赤ニキビの炎症を抑える抗菌薬に、皮脂が毛穴に溜まるのを防ぐディフェリンゲルを加える治療で、初めてニキビの改善・解消が可能になるのです。

3カ月間の塗布で面皰と炎症性皮疹が減少

 ニキビの重症度は、主たる症状が白ニキビや黒ニキビなど隠れニキビの面皰にとどまっている段階と、赤ニキビやそれが化膿して膿を持つ膿疱が見られる炎症性皮疹の、二段階に大きく分けられます。

 林部長「炎症性皮疹は片顔のその数により、さらに(1)軽症(5個以下)と(2)中等症(20個以下)、(3)重症(50個以下)、(4)最重症(51個以上)の4つに分けられます」

 ディフェリンゲルは1日1回、就寝前に患部に塗ることを、3カ月以上続けますが、いずれの段階でも目を見張る治療効果が得られます。

 林部長「たとえば軽症から中等症のニキビの場合、3カ月間のディフェリンゲルと外用抗菌薬の塗布で、隠れニキビの面皰は43%、赤ニキビなどの炎症性皮疹は55%減少したことが臨床試験で確かめられています」

 中等症から重症のニキビの場合、3カ月間のディフェリンゲルの塗布と経口抗菌薬の服用により、面皰は57%、炎症性皮疹は60%減少したことも確認されています。

主な副作用は肌の乾燥だが工夫を凝らすことで克服可能

 重要なのはディフェリンゲルが医師の処方薬であることです。皮膚科医の指導を受けながら塗布することが不可欠とされています。

 林部長「なによりも軽微ではあるものの、ディフェリンゲルの副作用に直面するケースが約8割と、少なくないからです」

 主な副作用は肌が乾燥すること。肌の乾燥を「痒い」「少し痛い」と訴える患者さんもいます。女性の場合、乾燥肌の方が多いので、よけいに副作用が強く出やすいといえます。

 林部長「副作用については、いろいろと工夫しなければなりません。保湿剤を塗ったうえでディフェリンゲルを塗布するとか、個々の患者さんの肌の状態に即して使い方を指導していきます」

 乾燥が強ければディフェリンゲルを塗布する量や塗布する回数を減らすなど、さまざまな工夫を凝らすことで、患者さんのほとんどが使い続けられるようになる、と報告されています。

皮膚科医と二人三脚で取り組むことが不可欠

 ニキビは皮膚の慢性炎症性疾患で、非常に経過の長い病気です。

 林部長「ディフェリンゲルなどによって一旦治ったとしても、維持療法としてディフェリンゲルを、長期に塗り続けねばならない患者さんが少なくありません。皮膚科専門医の指導は欠かせません」

 また、ディフェリンゲルなどによる治療を受けていても、基本的にメイクは可能です。ただし、ある程度、化粧品は選ばなければなりません。

 林部長「角栓・面皰(コメド)ができにくいノンコメドジェニック、ハイポコメドジェニックと記載されている化粧品は安心です。しかし、そうでない化粧品も多いので、困った時は遠慮なく皮膚科医に相談していただければ、適切なアドバイスや指導が受けられます」

 ニキビは12~13歳から出始め、20歳を超えても約半数の人が悩み続けます。治りにくい皮膚病であることをしっかりと認識し、いかによい状態を維持し続け、悪化を防ぐのか、患者はそのことを皮膚科医と二人三脚で取り組むことが求められているのです。

求められるのは悪化を予防し良好な状態を維持すること

 率直に言うとニキビを悪化させ、クレーター状のひどいニキビ痕が残ってしまうと、きれいな元の肌に戻すのはきわめて困難です。

 林部長「ニキビを悪化させないためには、ニキビに気づいたらすみやかに皮膚科医に受診することです」

 白ニキビや黒ニキビなどの隠れニキビの段階ならば、ディフェリンゲルの塗布だけで治り、よい状態を維持し続けることができます。

 林部長「赤ニキビや、その炎症が周囲の組織にまで広がり膿を持つようになっても、ディフェリンゲルや抗菌薬などによる適切な治療で治り、肌の良好な状態が維持し続けられます」

 そのためには、まずクリニックや病院などを受診し、皮膚科医の治療を受けることが必要です。
 費用も健康保険が適用され、いまやニキビは医療機関で治す、というのが常識となってきました。ニキビ治療に関する意識を大きく変えることが求められています。

林伸和(はやし・のぶかず)部長
1989年東京大学医学部卒業後、同大学皮膚科へ入局。93年米国マイアミ大学細胞生物学教室へ留学し、95年関東逓信病院(現・NTT東日本関東病院)、2000年東京女子医科大学皮膚科講師、06年同大学皮膚科助教授、11年から現職。わが国におけるニキビの診断と治療の第一人者として広く知られている。

※掲載内容は2013年4・5月の情報です。

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