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[教えて!ドクター] 2009/07/27[月]

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『腎臓は沈黙の臓器』毎年3万6000人が人工透析を受けることに!

取材協力/富野康日己(とみのやすひこ)教授
順天堂大学医学部附属順天堂医院腎 高血圧内科
取材・文/松沢 実・医療ジャーナリスト

カルナの豆知識2007年6/7月号特集より

26万近くにのぼる人工透析を受ける患者

 ご存じのように腎臓は尿をつくり、体の中の老廃物や有害物質を排泄する臓器です。加えて、血圧のコントロールや血液をつくることにもかかわっており、私たちの生命と健康を維持するうえで非常に重要な働きを担っています。
 病気などによって腎臓の働きが失われた状態を、腎不全といいます。
 「腎不全になると老廃物などの排泄が困難になり、尿毒症や心不全などから重大な生命の危機を招くため、人工透析によって血液を浄化しなければなりません」
 と順天堂大学医学部附属順天堂医院の富野康日己教授(腎.高血圧内科)は指摘します。
 現在、日本で人工透析を受けている患者は25万7765人にのぼります。「毎年、3万人もの患者が新たに人工透析を受ける事態に陥っています」(富野教授)
 25年前に比べると約10倍以上の人数で、最近は年を追うごとに増えています。

年間1万4350人が人工透析を始める糖尿病患者

 新たに人工透析を受ける患者のうち、もっとも多いのは糖尿病性腎症の患者です。
 「年間1万4350人(42.0%)もいます」(富野教授)
 第2位は慢性糸球体腎炎の患者で9340人(27.3%)、第3位が腎硬化症の3069人(9.0%)、第4位が多発性嚢胞腎の794人(2.3%)と続きます。
 糖尿病性腎症は糖尿病の三大合併症の1つです。
 「糖尿病は血液中のブドウ糖が過剰になる病気ですが、高血糖の状態が続くと、しだいに血液を濾過する腎臓の糸球体(毛細血管の集まり)の血管壁が厚く、硬くなっていきます。すると腎臓は正常に血液を濾過することができなくなり、体の中に老廃物がたまって全身の臓器にさまざまな悪影響を及ぼします」(富野教授)

糖尿病の患者に微量アルブミン尿検査は必須

通常、糖尿病性腎症はゆっくりと気づかないうちに進行し、糖尿病になってから10〜20年後に発症するといわれます。もちろん、血糖を低く抑えるための血糖コントロールがうまく行われれば、腎症を招く可能性は小さくなります。

3ヵ月に1回は受けたほうがよい微量アルブミン尿検査

 糖尿病性腎症の進行病期は、第1期の「腎症前期」から第5期の「透析療法期」までの5つの段階に分けられます。
 「第1期の『腎症前期』は、腎臓がまだ正常に働いている段階です。第2期の『早期腎症期』は尿に微量のタンパク(アルブミン)が漏れ始めたものの、まだ腎臓は正常に働いている段階です」(富野教授)
 第3期の「顕性腎症期」は尿にタンパクが持続的に漏れ出ているものの、まだ腎臓の働きは正常か、あるいは低下し始めた段階です。
 第4期の「腎不全期」は尿にタンパクが持続的に漏れ出て、かつ腎臓の働きも著しく低下している段階で、人工透析を考慮しなければなりません。そして第5期の「透析療法期」は、人工透析を受けなければならない段階です。
 「重要なのは第2期の『早期腎症期』までに糖尿病性腎症の発病と進行に気づき、人工透析に至らないように早期の治療を行うことです」(富野教授)
 幸いなことに「微量アルブミン尿検査」が登場し、糖尿病性腎症の早期発見が容易となりました。3ヵ月に1回の頻度なら健康保険も適用されます。
 「第2期の『早期腎症期』までに、『微量アルブミン尿検査』で糖尿病性腎症の進行を発見してください。そして、きちんとした治療を受ければ、人工透析を受けなくてもすむようになります」(富野教授)


※クリックして拡大

新たな腎臓病の薬として注目される降圧薬

 糖尿病性腎症の治療は、なによりも血糖のコントロールを厳格に行うことが求められます。
 「加えて、高血圧を抑えるための血圧コントロールや、塩分などを控える食事療法などが重要です。とくに高血圧は腎臓の血管の動脈硬化を促進し、腎臓の負担を高めてしまうからです」(富野教授)
 最近、腎臓病の治療薬としてアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)と、アンジオテンシンII受容体阻害薬(ARB)が大きな注目を集めています。いずれも血圧の上昇を抑える優れた降圧薬ですが、血液を濾過する糸球体の中の圧力を減少させ、腎不全への進行を遅らせる効果が確認されてきているからです。
 残念なのはこの2つの薬が腎臓病の薬として、まだ健康保険が適用されていないことです。
 「すでに高血圧の症状が認められる腎臓病の患者さんには処方できますが、そうでない場合は使用できません」(富野教授)
 腎臓病の患者にもACEIARBを処方できるように、早期の健康保険の適用が切実に望まれています。

IgA腎症が劇的に治る画期的な扁桃摘出術

 慢性糸球体腎炎は糖尿病性腎症に次いで、人工透析を受ける患者が多い腎臓病です。IgA腎症や膜性増殖性糸球体腎炎、膜性腎症などがありますが、その4割以上を占めているのがIgA腎症です。
「IgA腎症は尿の中に、突起のあるコブ状やドーナツ状に変形した赤血球やタンパク尿が出現.増加し、徐々に腎臓の働きが低下し腎不全に至る腎臓病です」(富野教授)
 発病後20年で、約40%の患者が腎不全で人工透析を受けるといわれます。日本人に多くみられ、いまだに原因もよくわかりません。ただし、細菌やウイルスによる扁桃炎にかかったとき、その際につくられた免疫複合体(免疫グロブリンIgAと補体C3)が糸球体に沈着して発症するのではないかと考えられています。
 IgA腎症の治療では、「扁桃摘出術」という手術が大きな注目を集めています。大元の扁桃を手術で摘出してしまえば免疫複合体は産生されず、糸球体にも沈着しないので腎機能の低下が免れるというわけです。
 「実際には扁桃摘出術と、副腎皮質ステロイドホルモンを点滴で大量に投与する、ステロイドパルス療法の2本立ての治療を行います」(富野教授)
 すでに腎臓の働きが著しく低下した患者にはあまり治療効果が期待できませんが、比較的早期のIgA腎症の患者には、腎機能の劇的な症状の回復がみられることもあります。
 「現在、扁桃摘出術の治療効果を確かめる多施設共同研究などを進めていますから、近い将来、最新のエビデンス(科学的根拠)を提示できると思います」(富野教授)

血液透析は週に3〜4回、1回につき約4時間

 人工透析とは働きが低下した腎臓の代わりに、体内の老廃物を含む血液等の体液の浄化と、体内にある余分な水分を抜く治療法です。
 「一般的に、腎臓の機能が健康なときの10分の1以下へ低下すると尿毒症を起こし、生命の危機を招きかねないので人工透析を準備します」(富野教授)
 人工透析には血液透析と腹膜透析の2つの方法があります。血液透析は長い歴史をもち、現在も多くの患者が受けている方法です。一方、腹膜透析は、日本では約20年前から採用された新しい方法です。
 「血液透析の機器は、(1)透析液を供給する透析液供給装置と、(2)透析が安全に行われるように監視するための患者用モニター、(3)透析を行う透析器(ダイアライザー)から構成されています」(富野教授)
 体内から取り出した血液を透析器の中を通過させ、浄化した後に再び体内へ戻します。「血液透析は通常、透析専門の病院やクリニックで、週に3〜4回、1回につき約4時間の透析を受けます」(富野教授)
 透析療法を一旦受けるようになり、続けていくと、腎機能はさらに低下していくことになります。尿の量も減少してくるため、排泄されずに体内に蓄積された体液は過剰になります。過剰な体液は透析にあわせて除水するものの、うまく除水量がコントロールできないと透析時間を延ばしたり、透析回数を増やしたりすることになります。

腹膜透析の煩わしさは透析液の交換だけ

 一方、腹膜透析は持続携行式腹膜透析=CAPDともいいますが、専用のカテーテルをお腹の中に留置します。そして、そのカテーテルを使ってお腹に透析液を注入し、本人の腹膜を介して体内の老廃物や余分な水分を取り除く方法です。
 「CAPDは1日4回、腹膜に注入した透析液を交換すればよいという透析法です。1回あたりの透析液の交換時間は30〜45分で、それ以外は自由に生活できるというメリットがあります」(富野教授)
 血液透析は週3〜4回、透析専門のクリニックなどに出向き、限られた時間内で行う透析ですが、CAPDは24時間連続して行う方法です。体液の恒常性が保たれ、循環系への負担が少ないというメリットもあります。尿の量が血液透析より長期にわたって維持しやすいために、尿路感染症を起こしにくいという長所もあります。そのため積極的に社会復帰を希望する患者にとって、大きな朗報となっています。

腹膜透析=CAPDは期間限定の透析法

 しかし、腹膜透析はいいことずくめの透析法ではありません。実際のところは解決すべきいくつかの問題点が残されています。
 「なによりも第一の問題は『被嚢性腹膜硬化症(EPS)』です。長期にわたるCAPDによって腹膜が劣化をきたす合併症で、腹膜の機能低下から老廃物や余分な水分の除去が十分にできなくなります」(富野教授)
 そればかりだけではなく、腸管同士が付着して繭のような形となり腸閉塞の原因となったり、そのために栄養失調状態から敗血症などで死に至ったりすることもあるのです。
 残念なことですが、今のところ劣化した腹膜を蘇らせる治療法はありません。腹膜の劣化や被嚢性腹膜硬化症を防ぐためには、長くても約8年、通常は5〜6年でCAPDを打ち切らざるを得ないのです。
 「そうすると働き盛りの患者さんは、当初、腹膜透析を選んだとしても、いずれ近いうちに血液透析に切り替えざるを得ません。それなら初めから血液透析を行っていこうということで、なかなか腹膜透析が普及しないのです」(富野教授)
 つまり、腹膜透析は「期間限定の透析法」であるところに最大の難点があるのです。

気になったときは、ただちに尿検査などを受けること

 腎臓病は自覚症状に乏しいことが大きな特徴です。しかし、まったく自分でチェックできないのかというと、そうではありません。
 「たとえば、皮下に水が溜まるむくみ(浮腫.水腫)は、典型的な腎臓病の徴候といえます。むくみのために靴下の跡がくっきりと残り、いつまでも消えないときは要注意といえます」(富野教授)
 トイレで排尿したときに泡立ち、その泡がいつまでも消えないときはタンパクが尿に漏れ出ている可能性もあり、腎臓病を疑ってみることも必要です。
 いずれにしても腎臓に関係するかも知れないなんらかの徴候がみつかったり、気になったりするときは、腎臓内科や泌尿器科などで尿検査などを受けてみることです。
 腎臓は肝臓と同じ「静かなる臓器」です。とくにゆっくりと進行する糖尿病性腎症や慢性腎炎を早期に発見するのは、難しいといわざるを得ません。職場や地域の健康診断などを積極的に利用し、年に1回は尿検査や血液検査を受けることが大切です。

富野康日己教授
順天堂大学医学部附属順天堂医院腎 高血圧内科科

とみのやすひこ 1949年生まれ。74年順天堂大学医学部卒業後、79年東海大学医学部内科助手、講師を経て、87年米国ミネソタ大学客員講師へ。
88年順天堂大学医学部腎臓内科助教授、94年から現職。06年から医学部長。わが国を代表する腎臓病の研究者であり、診断.治療のスペシャリストとして広く知られている。著書に『腎臓病がよくわかるQ&A110』(医歯薬出版)、『腎臓病を治すお医者さん』(保健同人社)など多数。

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