会員限定この記事を読むと10pt 進呈!!

新規会員登録(無料) ログイン

[教えて!ドクター] 2008/10/31[金]

いいね!つぶやく はてなブックマーク

dsc01725.jpg


近年、「診療ガイドライン」(特定の臨床状況のもとで、臨床医や患者が、適切な判断や決断を下せるように支援する目的で体系的に作成された文書)への関心が高まっています。なんだか言葉の響きは、私達に安心感を与えてくれますが、いったい誰が何の目的で作っているのでしょう?診療ガイドラインの作成方法を指導したり、利用促進活動の中心的な存在となっている日本医療機能評価機構EBM医療情報部Mindsの吉田雅博部長(国際医療福祉大学教授)に、お話を聞いた。

診療ガイドラインを作っているのは誰か

Q:診療ガイドラインとは、厚生労働省が定めたものですか?
dsc01692.jpgA:いえ、ガイドラインは国が決めるものではありません。実際の作成は主要な学会が行うことが多いです。ただし厚生労働省は、補助金などでガイドラインの作成支援をしたり、認知や利用促進をバックアップしています。私が部長を務める日本医療機能評価機構EBM医療情報部が、診療ガイドラインやその関連情報のインターネット掲載を担当しています。

Q:お金がかかるのですか、ガイドラインを作るのに?
A:「診療の手引き」的なものは個人でも作成可能ですし、昔からたくさんあります。ところが、「診療ガイドライン」を作るのには、各分野で信頼を持たれている専門家が、10人から多いときには50人で合議するのです。しかもエビデンス(ある診断や治療が効果があるという根拠。詳しくはこちらをご覧ください。)を吟味しながら丁寧に作成する必要がありますから、変化のスピードが速い分野では、かなり大変なことなのです。

Q:そもそも「診療ガイドライン」とは何ですか?
A:分かりやすく言うと、「主治医と患者さんが、治療方法を決める際の仲介資料」です。だから「EBM(根拠”エビデンス”に基づく医療。「最善の根拠」と「医療者の専門性」と「患者の価値観」を統合して、患者さんにとってよりよい医療を目指すこと)」「系統的」「公平」といった要素が重要です。「公平」というのも結構難しくて、特定の製薬会社に有利にならないといった視点は当然ですが、たとえば外科医は薬物療法よりも手術につい偏りがちです。こうした偏りを防ぐために、腰痛のガイドラインでも整形外科だけでなく、内科、脳神経外科、救急医学、放射線医学、心理学といった関連分野の専門家が参加して、それぞれの視点を持ち込むのです。患者さんの代表が参加することもありますよ。

dsc01740.jpgQ:え?患者もガイドライン作りに入るのですか。
A:正直を言うと、日本ではまだ少ないですが。「患者の代表者」を選ぶのが現実的に難しいからです。患者さんにもいろいろあって、住んでいる地域も違えば、経済格差もあります。このようにさまざまな患者さんの受けている治療やQOLを把握した上で、患者側の考え方を提案できる人が登場するようになるには、もう少し時間が必要かもしれません。これまで日本では「先生を信頼して、お任せします」という方が潔よしとする文化がありましたから、患者さんが意見を出したり、互いに情報交換やディスカッションしてきた蓄積が少ないと思います。

教科書ではない。医師でも勘違いする人が珍しくない

Q:それだけしっかりと作られた教科書なら、安心です。
A:いえ、「教科書」ではないのですよ。「マニュアル」でもありません。医師にも勘違いする人がいます。「ガイドライン通りにやっていれば、患者は皆治る」「ガイドラインを守っていれば、裁判になっても負けない」「ガイドラインばかり見てると、患者を見なくなる」・・・いずれも、間違いです。

dsc01824.jpgQ:それはどういうことですか?
A:診療ガイドラインを実際に見てもらえば分かりますが、「推奨度」付きで選択肢が明示されています。医師と患者さんがよく相談して、他の選択肢があることを知った上で、個別の治療法をより良い方向で決めるための、情報提供の媒体がガイドラインなのです。あるいは、情報収集を効率的に行う時にも、役立ちます。なんたって、なるべく系統的にもれなく整理しようと作られていますから、情報の迷路や落とし穴にはまらずに済みます。

Q:ガイドラインがなかった時代は、どうしていたのですか?
A:教科書、医学書をベースにしつつ、論文などで最新情報を補っていました。インターネットがない時代には情報収集が難しかったしお金もかかりましたから、先生によって差がありました。さらに、今の医療は専門分化が進んで、知見や技術要素が膨大になっています。専門医なら知っていることでも、他分野の医師が知っているとは限りません。そこで、時々刻々と変化する医療の最前線で、より多くの患者さんが専門家レベルの質の高い医療を受けられるようになるためには、ディスカッションの土台が大事なのです。

Q:私達も見られるのですか!・・・でも、見ても理解できるでしょうか?
A:Mindsのサイトでは、無料で見られますよ。現在、利用登録者が約4万人いますが、そのなかには生活者も多く含まれます。むしろもっと見ていただくために、医学用語を解説するコーナーを作ったり、「医師向けガイドライン」のほかに「一般(患者)向けガイドライン」の普及にも力を入れています。

dsc01837.jpgQ:現在Mindsには、何本のガイドラインがあるのですか?
A:現在約50本です。書籍などの形で世に出回っているガイドラインは600本くらいあるのですが、Mindsが精査して”根拠に基づくガイドライン”といえるもの、かつネット上に開示できる権利許諾を得られたものは、現時点ではその1割強です。そして、「患者向け」となるとさらに少なく、「胃がん」などごく一部の分野にとどまっています。「医師向け」も「患者向け」も、今後もっと本数を増やしていきます。

患者さん自身が病気と向き合う、任せきりにしない、そのための武器

dsc01711.jpgQ:具体的に、私達はガイドラインをどう使ったらよいですか?
A:まず、知人が病気にかかったときには、該当するガイドラインを見てみてください。自分が病気になったときよりも冷静に情報に接することができるでしょうから、よい勉強の機会になると思います。もちろん、もしすでに何かの病気に苦しんでいるのでしたら、その病名をクリックしてみてください。

Q:逆に注意点は?
A:繰り返しになりますが、ガイドラインは情報収集や対話、意思決定の土台になる資料です。ガイドラインに書かれていることが常に適切な医療とは限らないし、それにはずれたものは間違いである、と決めつけるのも良くないのです。まして、「標準的な医療をしているから良い医療機関で、そうでないのは悪い医師」、などとは決して言えません。「ガイドラインは、主治医の判断に勝るものではない」というのは世界的な合意となっています。

Minds トップページ
Mindsホームページのトップ画面。URLは、http://minds.jcqhc.or.jp/

Q:他に面白い使い方がありますか?
A:最近「たばこ増税」問題で、再び「喫煙が本当に害があると証明されているのか?」議論がまき起こっていますね?Mindsでは、それぞれの病気のガイドラインのなかで喫煙がどの程度危険因子と証明されているのかを、確認することができます。多数の世界中の研究成果から、エビデンス・レベルを吟味した上で客観的に結論を出していますから、非常に効率的に確認できます。

Minds 喫煙は乳癌の危険因子になるか
ご注意:上記の3図は、上から、Mindsホームページの「ホーム > 乳癌 > 疫学・予防-日本乳癌学会/編(2005年版)/ガイドライン > 2.喫煙は乳癌の危険因子になるか」、「ホーム > 喘息 > MindsPLUS/医療提供者向け/トピックス > 喫煙と気管支喘息治療薬」、「ホーム > 肺癌 > 日本肺癌学会/編(2005年版)/ガイドライン > 1-1. 危険因子」から、それぞれ抜粋。
本来は、ガイドラインの一部のみを取り出して論じるのは不適切だが、あくまで記事中にあるMinds利用方法の一つをわかりやすく示すために、抜粋掲載している。

ためしに、トップページの検索窓で「喫煙」と入れてみてください。たとえば乳癌では、「喫煙は危険因子になるとは決定できない(喫煙しないことが勧められる強い根拠はない)」と書かれていますが、気管支喘息では「治療の妨げになる」、肺癌では「喫煙者が肺癌になる危険率は非喫煙者の10~20倍程度高い」「受動喫煙も危険因子の1つになり,受動喫煙者は非受動喫煙者に対して肺癌罹患危険率は21~26%増加する」などと確認できます。こんな使い方も、Mindsの利用に慣れていただくには良いかもしれません。


dsc01837_100.jpg財団法人日本医療機能評価機構 EBM医療情報部 部長
国際医療福祉大学 臨床医学研究センター 教授
吉田 雅博 氏

http://minds.jcqhc.or.jp/

記事を読んでポイント獲得!

10pt 進呈!!

この記事を読んで
簡単なアンケートに回答すると、
"Amazonギフト券に交換できる"
QLifeポイントを獲得できます!

おすすめの記事

この記事を読んだ人は他にこんな記事も読んでいます。
記事の見出し、記事内容、およびリンク先の記事内容は株式会社QLifeの法人としての意見・見解を示すものではありません。
掲載されている記事や写真などの無断転載を禁じます。