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[教えて!ドクター] 2008/11/19[水]

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高血圧治療がうまくいっていると思っていたら重大な落とし穴が…
早朝高血圧を克服する決め手はこれだ!

取材協力/桑島 巌副院長・東京都老人医療センター
取材・文/松沢 実・医療ジャーナリスト
カルナの豆知識2005年11月特集

仮面高血圧=早朝高血圧は
高血圧治療の重大な落とし穴

 病院の診察室で測る血圧は正常でも、日常生活では血圧が高いことがあります。「正常血圧」という仮面を被っていることから「仮面高血圧」と呼ばれています。
 「とくに問題なのは病院で高血圧の治療を受けているのに、仮面高血圧の患者が少なくないことです。医師から処方された降圧薬をきちんと服用し、一見、治療がうまくいっているように見えるため、高血圧に気づかないまま動脈硬化などを進行させ、脳卒中や心筋梗塞などを起こしやすい状態をつくりだしてしまいます」と仮面高血圧の第一人者、東京都老人医療センターの桑島巌副院長は指摘します。
 仮面高血圧にはいろいろな種類がありますが、代表的なのは早朝に血圧が高くなる「早朝高血圧」です。早朝高血圧には夜間から早朝にかけ寝ている間も血圧の高い状態が続く「夜間持続型」と、就寝中は正常な血圧なのに目覚めて起き出すと急激に血圧が上昇する「早朝上昇型」の2つのタイプがあります。
 血圧が正常な場合でも、早朝は血圧が高くなります。血圧をコントロールしている「自律神経」のバランスが変わるためです。血圧は「交感神経」と「副交感神経」の2種類の自律神経がバランスよく働くことでコントロールされています。昼間は交感神経が優位に働き、緊張した状態となって血圧を上昇させます。一方、夜間、寝ているときは副交感神経が優位となり、リラックスして血圧を低下させます。朝、目覚めると副交感神経から交感神経に優位が切り替わり、血管の収縮によって血圧を上昇させます。
 早朝高血圧は、目覚めたときのこうした生理的な血圧上昇が加わり、脳卒中や心筋梗塞などを発症させやすくなります。早朝高血圧はもっともリスクの高い仮面高血圧といえます。とりわけ、夜間持続型の早朝高血圧は、心臓の筋肉が厚くなる心肥大を起こしやすいため、心臓の筋肉に酸素と栄養を補給している冠状動脈が強い圧力を受け、血流の悪化から突然死を招くこともあります。

早朝高血圧か否かを確かめるには、起き抜けの血圧測定が不可欠

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 「すでに高血圧の治療を受けているのに仮面高血圧となるのは、多くの場合、降圧薬の飲み方に問題があると考えられます。現在、よく用いられている降圧薬は、血圧を下げる効果が24時間持続します。通常、1日1回、朝食後に服用することが多く、病院の外来を受診する午前9時頃から午後2時頃まではもっとも薬が効いている時間帯です。そのため医師も患者本人も血圧がうまくコントロールされていると勘違いし、早朝に血圧が上がっていることに気づきにくくなっているのです。
 早朝高血圧か否かを確認するには、家庭での血圧測定が欠かせません。朝食後に降圧薬を服用している人は、起床後、すぐに血圧を測ってください」(桑島副院長)
 また、就寝前の測定で夜間の、就寝中の血圧をある程度予測できます。ただし、晩酌や入浴によって血管が拡張し、血圧は下がります。晩酌や入浴から2時間以上経ってから、測るようにしてください。
 「家庭用血圧計は手首や指先で測るものもありますが、できるだけ上腕で測るタイプのものを使用し、心臓と同じ高さの位置で測ってください。病院で測る測定値との誤差が小さいからです。血圧は2回測り、2回目の値で判断します」(桑島副院長)
 もし血圧が高くなっていたら、ただちに医師に伝えてください。

服用のタイミングを夜、寝る前に変えるだけで解消することも

 降圧薬を飲んでいるのに血圧が高くなっている場合、次のような方法で薬の飲み方を調整し、早朝高血圧を改善していきます。
 「第1に降圧薬の服用のタイミングを変えて、夜、寝る前に服用するようにします。服用時間を変えるだけで早朝高血圧を克服できる場合が少なくありません」(桑島副院長)
 第2に降圧薬の服用回数を変えることも有効です。いままでの降圧薬の服用量を変えずに、1日2回、または1日3回に分けて服用するようにします。
 第3に持続性の高い降圧薬に替えるという方法もあります。効果の持続時間が短い薬から、効果の長い薬に替えてもらって早朝高血圧を抑えます。
 「第4に作用の違う降圧薬を時間差で服用するようにします。後述するように降圧薬は5種類ありますが、それぞれ血圧を下げる作用が異なります。『朝はACE阻害薬、夜は利尿薬』など作用の異なる薬を時間差で服用して早朝高血圧を予防します」(桑島副院長)
 第5に少量の利尿薬を追加するという方法もあります。利尿薬はもっとも古い降圧薬で、安全性が高く、効果の持続時間が長いという特長があります。多くの場合、降圧薬の飲み方や薬の種類を変えることで早朝高血圧は克服できます。ただし、自分で勝手に変更するのではなく、かならず主治医に相談することが大切です。

代表的な降圧薬は3タイプ、5種類

 現在、代表的な降圧薬は、(1)末梢血管を広げる薬と、(2)血管内の余分な水分を排出する利尿薬、(3)心臓の過剰な働きを抑えるβ遮断薬の3つのタイプに大きく分けられ、5種類があります。
 「血圧は血液が血管の壁を押しつけている圧力のことで、(1)血管の太さと、(2)血液の量、(3)心臓が送り出す力によって決まります。血管が細く柔軟性に乏しくなったり、血液の量が増えたり、心臓が血液を送り出す力が増したりすれば血圧は上昇します」(桑島副院長)
 一方、血管が太く柔軟性に富んでいたり、血液の量が減ったり、心臓が血液を送り出す力が減少したりすれば血圧は低下します。
 末梢血管を広げる薬は血管の太さ、血管内の余分な水分を排出する利尿薬は血液の量、心臓の過剰な働きを抑えるβ遮断薬は心臓が送り出す力に働きかけて、血圧をコントロールするのです。

末梢血管を広げるタイプは血圧を下げる効果も高い速効性の降圧薬

 第1のタイプの末梢血管を広げる薬は、さらにカルシウム拮抗剤とACE阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗薬の3つに分けられます。
 「カルシウム拮抗薬は血管を収縮させるカルシウムイオンが細胞に入りこむのを抑え、血管を広げて血圧を下げます。若干の利尿作用もあります」(桑島副院長)
 副作用として顔のほてり、むくみ、動悸などがあげられます。グレープフルーツを食べると血圧が下がりすぎることもあります。
 ACE阻害剤は血管を収縮させるアンジオテンシンIIの産生を抑えて血圧を下げます。空咳やめまいなどの副作用があります。
 「アンジオテンシンII受容体拮抗薬は血管を収縮させるアンジオテンシンIIの働きを阻害する薬です。アンジオテンシンIIは血管の中のアンジオテンシンII受容体に結合して血管を収縮させるのですが、このアンジオテンシンIIとアンジオテンシンII受容体の結合を邪魔して血圧を低下させるのがアンジオテンシンII受容体拮抗薬なのです」(桑島副院長)
 末梢血管を広げるこの3つの薬は、いずれも速効性が高く、血圧を下げる効果も高いのが特長です。しかし、血中濃度が低くなった場合は、効果が24時間続かないこともあるのが欠点だといえます。

利尿薬はもっとも確実で廉価な降圧薬

 第2のタイプの血管内の余分な水分を排出する利尿薬は、腎臓の尿細管でナトリウムと水分の再吸収を抑え、循環血液量を減少させることで降圧効果をもたらします。
 塩辛いものを沢山食べると水が飲みたくなるのは、血液中のナトリウム濃度が高くなり、「水で薄めよ」という指令が脳へ届くからです。同時に、腎臓における塩分(ナトリウム)の再吸収が抑えられ、腎臓から血圧を上げるためのホルモン(レニン)が分泌されます。血圧を上げて排尿を促し、ナトリウムを減らすためです。水分の摂取とレニンの分泌はいずれも血圧を高めますが、利尿剤はナトリウムと水分の排出を促すことで血圧を下げるのです。
 「利尿薬はもっとも確実で廉価な降圧薬で、安全性もしっかりと確かめられています。最近はその優れた効果が見直されてきています」(桑島副院長)
 血糖値や尿酸値の上昇、低カリウム血症などの副作用があります。
 第3のタイプの心臓の過剰な働きを抑えるβ遮断薬は、心臓の収縮力を抑えて血圧を下げる降圧薬です。
 「ストレスがかかると血圧も上昇しますが、これは交感神経を高めるアドレナリンというホルモンの働きです。アドレナリンは末梢血管を収縮させるα作用と、筋肉の血管や気管支を広げたり、心臓を刺激して心拍数を増加させたりするβ作用の2つの働きがあります。β遮断薬は後者のβ作用の働きを妨げて、血圧を下げる薬です。脈が遅くなったり、喘息が起こったりするなどの副作用があります」(桑島副院長)
現在、降圧薬を服用している方は、自ら服用している薬がどのタイプの、どの種類の薬なのかをしっかりと確認しておく必要があります。そのうえで早朝の血圧が抑えられていない場合は、仮面高血圧(早朝高血圧)を疑い主治医と相談することが大切です。

高齢者でも最大血圧は140未満に下げるのが大切

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 仮面高血圧はもちろん、高血圧の多くは症状が認められません。高血圧であっても痛くも痒くもないのですが、高血圧から動脈硬化が促進され、脳卒中や心筋梗塞など死に直結する病を発症させかねないことから、絶対に高血圧の治療が求められるのです。
 「現在、高齢者でも最大血圧を140未満に抑えることが求められています。140未満に抑えることによって、脳卒中や心筋梗塞の発症を抑えられるという確かなデータが発表されているからです」(桑島副院長)
 高血圧治療で重要なのは油断しないことです。頭重・頭痛、肩こり、耳鳴り、めまい、動悸、頭のほてりなどの症状がないからといって、治療がうまくいっているとは限りません。早朝高血圧のような仮面高血圧もあります。
 夜間持続型の早朝高血圧は、脳卒中や心筋梗塞などの脳疾患合併症の危険性を4倍に押しあげてしまいます。ものすごい大きな落とし穴といえます。自分が早朝高血圧か否かを、ぜひ家庭血圧計で確かめていただきたいと思います。

取材協力/桑島巌副院長 東京都老人医療センター
1971年岩手医科大学卒業後、73年に東京都養育院付属病院循環器科へ。80年米国ニューオリンズオクスナー研究所へ留学、87年東京都老人医療センター内科医長、97年同医療センター循環器科部長、2003年同医療センター内科部長を経て現在に至る。わが国の高血圧治療の第一人者。とくに仮面高血圧の存在を早くから指摘し、大きな注目を浴びた。『血圧変動の臨床—高血圧症の診断と治療への応用』(新興医学出版社)、『新編 高血圧の生活ガイド』(医歯薬出版)など著書多数。

※掲載内容は2005年11月月の情報です。

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