[教えて!ドクター] 2009/11/25[水]

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日本でのOC(低用量ピル)発売から10年。
OCを飲む日本女性の96.7%が満足しているという事実。次の10年への期待が膨らみます。

北村邦夫先生
(社団法人 日本家族計画協会 常務理事 /
家族計画研究センター所長)


 1999年9月にOC(低用量ピル)が日本で発売されてから、今年で10年が経過しました。

 厚生労働科学研究の一環として2002年、04年、06年、08年に実施した「男女の生活と意識に関する調査」によると、OCを「既に使っている」割合は1.6%、1.9%、1.8%、3.0%と僅かながら上昇はしているものの、その割合は欧米に比べると依然として低いのが現状です。

 一方で、OC情報センターが服用者を対象に行った意識調査結果では、実際にOCを服用している女性の96.7%が「満足している」と答えており、その満足度はたいへん高いことがわかります。
 満足している点としては「避妊効果が高い点」のみならず、「月経が周期的になった点」「月経痛が軽くなった点」など、月経トラブルの改善を挙げている女性が多く、日本の女性達の間でOCが女性のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を高める薬であるという認知度が確実に高まってきていることが窺えます。

 ではなぜ、日本でのOCは、欧米に比べ普及していないのでしょうか。また、実際にOCを服用している日本の女性たちはどのように感じているのでしょうか。OC発売から10年を契機に、OCを取り巻く日本の現状と今後の課題についてお話したいと思います。

OCが広まるとエイズが増える?乳がんになる??
―NO! 思い込みより、正しい知識を。

 日本でOCの普及を妨げている要因のひとつとして、一般の方のみならず、処方する側の医療従事者の一部にも、副作用への懸念が残っていることが挙げられます。「エイズなどの性感染症を拡大させるのでは」「乳癌や血栓症のリスクがある」などの意見がありますが、OC発売から10年のデータが、それが事実でないことを証明してくれています。

 日本のHIV感染者およびエイズ患者は1999年以降増加傾向にありますが、性別にみると、増加しているのは「男性」であることがわかります。そして日本における感染経路のほとんどは「男性同性間」の性的接触なのです。OCは女性が服用するものですから、この増加とは無関係だといえます。その他の性感染症については、近年減少傾向にあり、「OC服用が性感染症を拡大させる」は誤解であるといえます。

 またOC服用者・非服用者でがんの罹患リスクを比較したところ、乳がんは、服用経験のある人と服用経験のない人で、有意差がないことがわかりました。つまり、OCを飲むと乳がんになるという事実はありません。むしろ、子宮体がん、卵巣がんについては、明らかに「OC服用者の方がなりにくい」ことが明らかにされています。婦人科のなかで、卵巣がんは非常に発見の難しい病気であり、これらのことからも、OCは女性のQOLを高めるのに非常に重要な薬であるといえます。

OC服用者の満足度は、96.7% 服用前に不安があっても、服用してみたら満足!

 では、実際の服用者の声を聞いてみましょう。OC情報センターがOC服用者を対象に行った意識調査によると、OCを飲んで満足している人は実に96.7%にのぼります。
 飲み始めるまでは、副作用に対する不安があった。しかし、実際に服用してみると、満足しているというのです。このような結果に私たち医師や看護師などのスタッフは大変勇気づけられます。

 満足している点としては、「月経が周期的になった点」「月経痛が軽くなった点」「月経量が減った点」など、月経にまつわる問題が上位を占めています。避妊効果よりも月経に関するトラブル改善にかなり期待があることがわかります。そしてそれは、生活上の変化でも見てとれます。
 また、若い方々はOCを服用することによって、「婦人科に対する不安や怖さがなくなった」と答えています。産婦人科は敷居が高い、と思われがちですが、若い方々はOCを処方してもらいに行く、という行動を通して、産婦人科に対するイメージを変えていったのです。OCは、医者と、一般の女性たちをつなぐ大きな役割を果たしたということになるのではないでしょうか。

 OCへの不満についてもみてみると、「不満は特にない」と答えている人が最も多く、35.6%です。服用前の不安として「副作用」を挙げた人が60%を超えていたにもかかわらず、実際に服用した後の不満については、「不満は特にない」と答えた人が35.6%と最も多く、「副作用」と答えた人は12.5%と少なくなっていることが分かりました。これは、服用前のOCに対する先入観や偏見が大きく、実際の服用における副作用への実感とは異なっていることを示しています。しかし経済的な不安はまだ感じている人たちがいるというのが現状ですので、この点は今後の課題といえるでしょう。


※画像をクリックすると、大きな画像を見ることができます。

ひとりでも多くの日本人女性が、思い描く”ライフ”を実現するために

 私たち医療従事者は、「OCを使ってみたいけれど、ちょっとね・・・」と悩んでいる人に向けて、しっかりと正しい情報を提供し、安心して使えるような環境をつくることが重要です。医師たちはなかなか、じっくりと服薬指導にあたる時間を割くことが難しいため、実際の服薬指導を行うスタッフとのコミュニケーションは重要です。また新聞・雑誌・インターネットなどのメディア、友達からのくちコミなども、同様に重要な情報源になってきます。様々な方向から、正しい情報を積極的に発信していく必要があります。

 一方で、お金の問題もあります。2007年に国際比較調査を行ったのですが、ハンバーガー1個を100円とすると、日本のOC1ヶ月分はハンバーガー30個分に相当します。同様に計算するとカナダは19個、オーストラリアは3個、中国は1個、イギリスやスウェーデンでは無料なのです。国によって税制度や物価は異なるため単純に比較できないにしても、経済的に入手しやすい環境が整えられるかどうかも、今後の課題だといえます。

 最後にひとつ、紹介したいアンケート結果があります。フランス人女性を対象に1990年に実施されたアンケートで「この20年間に、あなたの人生を変えることに最も貢献したことは?」という質問に対し、約6割のフランス人女性が「OCを利用した避妊」と回答しています。
今からさらに10年後、同じ質問を日本人女性に問いかけたとき、日本の女性たちが、「OCを利用した避妊」を真っ先に挙げられるかどうか。新たに始まる10年に向けて、日本人女性のOCに対する意識がどのように変化していくか、目が離せません。

北村 邦夫先生 社団法人 日本家族計画協会 クリニック  http://www.jfpa-clinic.org/

群馬県出身。
自治医科大学医学部を卒業後、群馬大学医学部産婦人科教室で臨床を学ぶ。
1988年から(社)日本家族計画協会クリニック所長。
現在、日本家族計画協会常務理事、厚生科学審議会臨時委員、日本思春期学会副理事長、日本母性衛生学会常務理事。
著書には「ティーンズ・ボディーブック」(扶桑社)、集英社新書「ピル」、「幸せのSEX 男の誤解 女の誤算」(小学館)、「ほんとうのスローセックス」(毎日新聞社)など多数。


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