出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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胸やけ、吐き気、嘔吐から考えられる主な病気

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吐き気、嘔吐から考えられる主な病気

◆ 腹痛あり

◆ 腹痛なし

症状 疑われる病気
頭痛あり 意識障害 脳出血
くも膜下出血
脳静脈・静脈洞閉塞症
高血圧性脳症
髄膜炎・脳炎
脳膿瘍
脳腫瘍
光や音に過敏 片頭痛
眼痛 緑内障
眼精疲労
倦怠感、めまい、動悸 本態性低血圧症
頭痛なし 胸痛 急性心筋梗塞
めまい 突発性難聴
内耳炎
メニエール病
前庭神経炎
腹部膨満感 急性胃拡張
胃幽門狭窄症
無尿・乏尿 急性腎不全
むくみ、食欲低下、便秘、下痢 慢性腎不全
尿毒症
脱力感、筋力低下、多尿、多飲 低カリウム血症
高カリウム血症
口渇、多尿、多飲 糖尿病
過食、拒食 摂食障害

◆ その他

胸やけ、吐き気、嘔吐とは?

胸やけとは、文字どおり胸の奥のほうが焼けるような一種独特の不快感を指します。胃または食道が何らかの損傷を受けると起こります。
吐き気とは、みぞおちから胸のあたりがむかむかする不快感で、悪心ともいいます。嘔吐は胃の内容物を吐いてしまうこと。嘔吐は、脳内にある嘔吐中枢がさまざまな病気やストレス、乗物酔いなどの心因性の因子などによって刺激されて起こります。

胸やけ

胸やけは、日々経験しやすい症状のひとつです。脂肪分や糖分の多いもの、コーヒーなどの嗜好品をとりすぎると胃液が逆流することがあり、そのため胸やけが起こってきます。このような一過性で、ほかに症状もない胸やけなら病気ではありませんし、とくに心配はいりません。
ただし、胸やけが続くようなら、一度検査を。食道や胃などのがんの可能性があり、これらは初期にはほとんど症状がないので、たとえ胸やけでも軽視しないようにしましょう。
胸やけは、主に食道や胃の病気で起こります。近年、増えているのが逆流性食道炎で、胃食道逆流症(GERD)のひとつです。胃の内容物が食道に逆流し、食道の粘膜が胃液や十二指腸液にさらされて炎症を起こします。胸やけや嚥下障害、吐き気、腹部膨満感などの消化器症状だけでなく、咽頭部の違和感や喘息などの呼吸器症状、胸痛などが現れることもあります。
そのほか、食道潰瘍、食道裂孔ヘルニア、バレット食道、胃・十二指腸潰瘍などでも胸やけが起こります。バレット食道は、前述の逆流性食道炎が長期的に続くことに起因すると考えられています。欧米では、食道がんの約半数はバレット食道から発生しています。このタイプの食道がんは、現在のところ日本では少ないのですが、ライフスタイルの欧米化などにより、将来的にバレット食道がんの増加が危惧されています。

吐き気、嘔吐

吐き気は心理的な要因が強く、人によってはいやなもの、嫌いなものを見たり、嗅いだり、食べたりした時などに嘔吐を伴わないで起こることもありますが、吐き気のほとんどは、そのあとに嘔吐が現れてきます。
吐き気、嘔吐は消化器系の病気で起こることが最も多く、そのほか脳や眼、耳、心臓、精神的な原因など多岐にわたっています。ほとんどが腹痛や頭痛、発熱などさまざまな症状を伴います。

腹痛などを伴う

主にみぞおちあたりが痛むのは胃の病気。胃潰瘍では食後、十二指腸潰瘍では空腹時~夜間に痛み、吐き気、嘔吐、吐血などさまざまな症状を示します。胃潰瘍は40歳以降の人に、一方、十二指腸潰瘍は10~20代の若い人に多くみられます。
胃がんは持続する軽度の痛みで、しかし進行すると嘔吐を繰り返し、少しでも口に食物を入れると直後に全部吐いてしまいます。
食道下部の粘膜が裂けて発症するマロリー・ワイス症候群は激しい嘔吐のあとの、痛みと吐血を伴います。
熱が出て、主に右上腹部の鈍痛、吐き気、全身倦怠感、茶褐色の尿、白っぽい便が出るならA型急性肝炎。主に左上腹部に強い痛みがあるなら急性膵炎の可能性があります。

頭痛などを伴う

まず第一に脳血管障害を疑います。くも膜下出血の激痛は有名で、嘔吐を繰り返し、次第に意識が消失してきます。脳出血は必ずしも頭痛は現れず、嘔吐のほか意識障害、片麻痺(体のどちらか片側の麻痺)となり、昏睡状態に陥ります。

その他

急性心筋梗塞でも、胸痛に伴って吐き気や冷や汗が現れます。素早い処置が命を救う最大の手立てですので、心肺蘇生法はぜひ知っておきたい事柄です。
いわゆる拒食症・過食症と呼ばれる摂食障害では、食べては吐き出すという自己誘発性嘔吐を繰り返すことがあります。なかなか治りにくく、心療内科や精神科などでの地道な治療が望まれます。