出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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脳腫瘍
のうしゅよう

もしかして... 頭蓋咽頭腫  聴神経腫瘍  髄膜腫  水頭症

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脳腫瘍とは?

どんな病気か

 小児悪性腫瘍のなかで、脳腫瘍は白血病に次いで多くみられます。発育・発達期にある小児の中枢神経系に発生した脳腫瘍は、成人のものとは異なる特徴があります。脳腫瘍の種類では髄芽細胞腫、星細胞腫、脳室上衣腫、頭蓋咽頭腫が多くみられます。

 発生部位では、成人に比べて脳の中心部に発生するものが多く、テント下、すなわち後頭蓋窩に多くみられます。しかし、1歳以下ではテント上、1~10歳まではテント下、10歳を過ぎると再びテント上が多くなり、年齢によって好発部位が異なります。これは年齢によって発生しやすい脳腫瘍の種類が異なるためです。

 治療法の進歩によって良好な予後の期待できる脳腫瘍もありますが、悪性度の高い脳腫瘍や発生部位によっては予後不良の脳腫瘍も多くみられます。

原因は何か

 発生原因はほとんど不明です。しかし一部、遺伝性・家族発生のみられる脳腫瘍があり、神経線維腫症(NF2)では聴神経腫瘍髄膜腫が発生しやすいことが知られています。

症状の現れ方

 症状は、脳腫瘍の脳内での発生部位、脳腫瘍の種類、年齢などにより異なってきます。脳腫瘍が大きくなると意識障害、けいれん、性格変化、頭蓋内圧亢進症状(頭痛、嘔吐、うっ血乳頭)、局所症状(片麻痺、視野欠損、失語)がみられます。しかし、1歳半以下の乳幼児では頭蓋縫合が閉鎖していないため、頭蓋内圧亢進症状が縫合離開や頭囲拡大により代償されて現れにくいこともあります。

検査と診断

 画像診断が中心となります。頭部CT検査、頭部MRI検査では、脳腫瘍が脳内のどの部位に存在するかの局在診断が可能となり、また脳腫瘍には種類によってそれぞれの好発部位がみられることから、診断に役立ちます。石灰化像・嚢胞形成像、造影効果の有無なども診断の参考となります。

 脳血管造影は、脳血管と腫瘍との関係や腫瘍血管を把握するのに有用で、手術を検討するために必要となります。

治療の方法

 治療は脳腫瘍の種類、脳内での発生部位、年齢によって異なります。①外科的手術、②放射線治療、③化学療法が行われますが、場合によってはそれぞれを組み合わせた集約的治療が行われます。

①外科的手術

 腫瘍全摘出術が望まれますが、腫瘍の存在部位によっては困難であることも少なくありません。また閉塞性水頭症が合併していることもあり、症状軽減のために脳室シャント術も行われます。

②放射線治療

 脳腫瘍の種類によっては効果のある場合があり、他の治療と組み合わせて行われます。副反応として、放射線によって脳腫瘍以外の正常神経細胞の障害を来すこともあります。

③化学療法

 いくつかの化学療法薬を組み合わせて行われます。

(執筆者:石和こどもクリニック院長 石和 俊)

脳腫瘍に関連する可能性がある薬

医療用医薬品の添付文書の記載をもとに、脳腫瘍に関連する可能性がある薬を紹介しています。

処方は医師によって決定されます。服薬は決して自己判断では行わず、必ず、医師、薬剤師に相談してください。

・掲載している情報は薬剤師が監修して作成したものですが、内容を完全に保証するものではありません。

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コラムレノックス・ガストー症候群

石和こどもクリニック院長 石和 俊

 1~6歳ころの小児にみられるてんかん性脳症で、各種坑てんかん薬を使用しても発作のコントロールが難しく、予後不良な難治性てんかんのひとつです。このてんかんの研究を行った2人の研究者の名を冠してレノックス・ガストー症候群と呼ばれています。

 「点頭てんかん」の項で述べたように、この症候群は大田原症候群(新生児期から乳児早期)や点頭てんかん(生後4カ月~1歳)とともに年齢依存性てんかん性脳症で、脳の発達過程と密接に関連しているものと考えられています。

 てんかんの発作型は強直発作(頭部が前屈して全身強直、両腕の拳上が十数秒持続)が主で、ほかに非定型欠神(眼球上転とともに意識混濁)、脱力発作(筋緊張が失われ転倒)、ミオクロニー発作など小型発作が合併してみられます。てんかん発作のコントロールが難しく、ほとんど毎日のようにてんかん発作がみられ、また重度の精神運動発達遅滞を合併します。

 抗てんかん薬ではバルプロ酸ナトリウムやベンゾジアゼピン系薬剤が有効で、難治例ではケトン食療法(高脂肪・低炭水化物)も試みられます。

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