高尿酸血症・痛風と言われたら
[高尿酸血症・痛風の自己管理] 2009/05/15[金]
「高尿酸血症・痛風の自己管理」
監修:公益財団法人痛風財団 理事長
東京女子医科大学 客員教授 鎌谷直之先生
≫高尿酸血症、痛風とは?
高尿酸血症を治療しないで放っておくと |
高尿酸血症、痛風といわれたら?
≫食事で気をつけることは? |
食事で気をつけることは?
(1)総カロリーを制限する
(2)標準体重にコントロールする
(3)乳製品を多くとる …などがポイントです。
肥満のひとほど血清尿酸値が高く、体重が下がれば血清尿酸値も下がっていくことが知られています。したがって、カロリーのとりすぎに注意し、肥満を避け、標準体重にコントロールすることが重要となります。また、体重のコントロールは高尿酸血症に対してだけではなく、高血圧症や脂質異常症(高脂血症)などの合併症の治療や予防にもつながります。
プリン体を大量に含む食品の中で、肉類・内臓類・魚介類のとり過ぎは高尿酸血症・痛風になりやすいことが知られています。しかし最近の研究で、同じ高プリン体食品でも、干ししいたけなどの野菜類は、ほとんど影響しないことがわかりました。
特に低脂肪乳製品や大豆などは、継続的にとると痛風の予防になるという報告もあるので、意識してバランスよくとるようにしましょう。
お酒は飲んでもよい?
「お酒はひかえめに。」
アルコールはどんな種類でも飲み過ぎると確実に血清尿酸値を上げます。これは、アルコールが尿酸の産生を高めたり尿酸の排泄を抑制するために起こります。また、お酒の中に含まれるプリン体が原因になることもあります。
お酒を毎日飲むひとと、「休肝日」を設けているひととを比較してみると、アルコールの全体量は同じでも、毎日飲むひとの方が血清尿酸値が高いことが知られています。なるべくお酒を飲まない日を設けるようにしましょう。いずれにしても、食べ過ぎ・飲み過ぎは避けましょう。
運動で注意することは?
「激しい運動は避け、軽い運動をしましょう。」
高肥満を避けるためにも、適度な運動は必要です。水泳、軽いジョギング、散歩、サイクリングなどの有酸素運動は肥満防止の面からも必要です。自分にあった運動を定期的に行いましょう。
しかし、激しい運動(無酸素運動)は逆に血清尿酸値を上昇させるので避けましょう。
また、運動により大量の汗をかき、そのままにしていると血液が濃くなって血清尿酸値が上がったり、尿が濃くなって尿酸が溶けにくくなったりします。汗をかいたら、水分を十分にとりましょう。
他の病気との関係は?
「脂質異常症(高脂血症)や高血圧症などの生活習慣病と合併しやすいので注意が必要です。」
血清尿酸値が高いひとは、そうでないひとに比べて脂質異常症(高脂血症)の割合が高く、血液中のコレステロールや中性脂肪が多いことがわかっています。
また、高血圧症、脳血管障害、虚血性心疾患との合併が多いこともわかっています。高尿酸血症・痛風だから、これらの病気になるというわけではありませんが、かかりやすい体質といえるので、注意が必要です。
このように、血清尿酸値はいろいろな病気のマーカーになりますので、定期的にチェックすることが大切です。
痛風発作が起こったら?
「発作を抑える消炎鎮痛薬を飲みます。」
●痛風発作の前兆があったら、コルヒチンを飲みます
痛風発作の起こり始めには患部がむずむずしたり、はれぼったくなったりする場合があります。この前兆期にコルヒチンを1錠服用すると発作を防ぐことができます。しかし、コルヒチンは起こってしまった発作にはあまり効果は期待できません。また、大量に長期服用すると重大な副作用を引き起こしますので注意が必要です。
●痛風発作時には消炎鎮痛薬を短期間服用します
痛風発作が起こったら、インドメタシン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ナプロキセンなどの消炎鎮痛薬を発作の間だけ短期間服用します。痛風発作は通常1~2週間で大体おさまりますので、これらの薬を長期間服用し続けることはありません。
●痛風発作の応急処置
発作が起こった部位は、赤くはれて熱を持ちます。このような場合は、患部を心臓より高い位置に保ち、冷やすと痛みが軽減されます。温めたり、マッサージしたりすると、かえって悪化するので避けましょう。
高尿酸血症の治療は?
「尿酸値をさげる薬で血清尿酸値をコントロールします。」
食事の調節やアルコール制限などをしても血清尿酸値が高いひとは薬物療法を行います。
血清尿酸値を下げる治療は、痛風発作の痛みをとるだけの対症療法に対し、高尿酸血症・痛風そのものを改善する根本療法となります。
自分の高尿酸血症のタイプにあてはまる薬を飲むことによって、効率よく治療することができます。副作用の発現を抑えることにもつながります。
薬によって血清尿酸値は正常にもどります。しかし、高尿酸血症そのものは非常に治りにくい病気なので、薬を飲むのをやめると、だいたい2週間でもとの高尿酸血症の状態にもどってしまい、長い間放置されると尿酸塩の沈着による合併症の恐れがあります。ですから、根気よく薬を飲み続けることが大切です。
治療中に注意することは?
「自分の勝手な判断で薬の服用をやめないようにしましょう。」
尿酸値を下げる薬を飲み始めてから発作がおこることもあります。
痛風発作が再発するのは、関節などにたまっていた尿酸が溶けてなくなる途中だからです。治療を始めて半年間は発作が起こることもあります。このような場合は尿酸値を下げる薬を飲みながら、痛みをおさえる消炎鎮痛薬をあわせて飲みます。尿酸値を下げる薬の服用を中断すると発作がひどくなる可能性があるので注意しましょう。
尿路管理とは?
「尿酸が尿に溶けやすくするために行います。」
尿酸は尿に溶けた状態で排泄されますが、尿が酸性だと非常に溶けにくくなるという性質を持っています。そのために次のような尿路管理が必要となります。
健康なひとの尿量は1日1~1.5リットルぐらいですが、高尿酸血症や痛風の患者さんは尿量を1日2リットルぐらいにするとよいといわれています。
重度の腎障害や心臓病などで水分の摂取量を制限されているひと以外は、お茶を飲んだり、多めの水で薬を飲むなど、工夫するとよいでしょう。
尿酸は、中性~アルカリ性の尿には溶けやすい性質を持っています。尿が酸性に傾いているひと(pH6.0以下)は、尿をアルカリ化する薬があるので、アルカリ性に近い状態(pH6.2~6.8)にしましょう。また、野菜、海草、牛乳などのアルカリ性食品を食べるように心がけましょう。尿のpHは専用の試験紙で簡単に測定できます。
まとめ「日常生活の注意点」
日常生活の注意点を心掛けて、高尿酸血症・痛風の治療に取り組んでいきましょう。
また、尿酸値や他の病気の合併、お薬との相性などをチェックするため、定期的に検査を受けましょう。
鎌谷直之先生
1948年 福岡県生まれ
1973年 東京大学医学部卒業
1996年から2008年まで 東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター教授
現在
(株) スタージェン 情報解析研究所所長
公益財団法人痛風財団理事長
日本痛風・核酸代謝学会副理事長
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