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[ヘルスケアニュース] 2021/10/11[月]

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誤解や根拠のないうわさから広がるスティグマ

 「スティグマ」という言葉を聞いたことはありますか? 性や国籍、人種、年齢、外見、障害、信仰など、特定のカテゴリー・集団に注目して貼られるレッテルのことを「社会的スティグマ」と呼びます。依存症、肥満、学歴・職歴など、本人の意志や努力で何とかなるだろうと思われがちな属性や、障害者、感染症などで特に外見が一般的な人々と異なる属性はスティグマの対象になりやすいといわれています。

 皮膚の病気も、そのひとつです。

 皮膚の病気に詳しい埼玉医科大学の常深祐一郎先生は9月26日、製薬会社の日本ベーリンガーインゲルハイムが開いたセミナーで講演しました。


常深祐一郎先生(日本ベーリンガーインゲルハイム提供)

 スティグマはどのような過程で生まれるのでしょうか。常深先生は、①きっかけ(初めてスティグマ的な言動に触れた瞬間)、②ステレオタイプ(その属性に対する典型的なイメージが育まれる段階)、③偏見(そのイメージに対して、ネガティブな価値を育んでいく過程)、④差別(スティグマが、周囲に言動として現れ出たもの)――と次第にスティグマが広がっていくことを説明しました。皮膚の病気の1つである乾癬では、「Aさんは顔や手に皮膚の病気の症状が出ている」というきっかけから、「皮膚が赤くなっている。カンセンという病気らしい」というステレオタイプが生まれ、その言葉の響きから「感染する病気だ」といった誤解による偏見や「Aさんと温泉やプールには行きたくない」という差別につながるというのです。乾癬とは皮膚が赤くなって盛り上がり、その皮膚の一部がポロポロとはがれ落ちる病気です。周りの人にうつる病気ではありません。

助けを求められず、受診を控えてしまう場合も

 スティグマについて常深先生は、「大きく分けて2つのタイプがある」と話します。「公的スティグマ」と「自己スティグマ」です。公的スティグマとは周囲が当事者に対して持つスティグマのことで、例えば「女性は家事に率先して取り組むべきだ」「肥満は本人の努力不足だ」「あの病気は感染する。なるべく避けよう」といったものが含まれます。

 一方で、当事者が当事者に対して持つのが自己スティグマです。「私は女性なので慎ましくあるべき」「私の肥満体型は自己責任なので自分で何とかすべき」「私の皮膚の病気は見た目に症状が出ているので周囲から避けられるだろう」などと考え、助けを求められなくなってしまう場合があるといいます。常深先生は、「病気は治療すれば良くなるのに、自分の責任だと思い受診を控えてしまう」と問題視。「治らない病気だから仕方ない」「プールも温泉も諦めなければいけない」といった考えは誤解だとし、「認識さえ変われば解決できる」とスティグマをなくす必要性を訴えました。

 常深先生は、「病気の治療のために生きているのではなく、治療はより良く生きるための手段の1つだ」と強調します。治療により病気であることがほとんど分からなくなるケースや、治療して通常の生活ができる場合があることを紹介。根拠のないうわさなどに惑わされず、学会のホームページなどを参考に正しい知識を持つよう呼びかけました。

視点を前向きに。目標やできることを考え、自分から行動を

 セミナーではアレルギー疾患の患者会である認定NPO法人 日本アレルギー友の会で副理事長を務める丸山恵理さんも登壇しました。


丸山恵理さん(日本ベーリンガーインゲルハイム提供)

 幼少期から重度のアトピー性皮膚炎を抱えているという丸山さん。アトピー性皮膚炎はかゆみのある湿疹ができる病気で、良くなったり悪くなったりを慢性的に繰り返します。

 丸山さんは講演で、「17歳の頃から症状が悪化し、全身が搔き傷で真っ赤になり、顔や頭皮の傷口から液体が出て、体を動かすだけで痛みがでる状態だった。死にたいとも思った」と辛い過去を明かしました。現在は外用薬などを使い、日常生活に支障のない状態にセルフコントロールしているといいます。

 丸山さんは、「人に見られると恥ずかしい。髪や衣服で隠したい」「自己肯定感が持てず、劣等感が募る」と自分の体を見ては悲しみ、他人の視線を気にしてきたといいます。しかし、症状が良くなってからは、周りの人がそれほど自分の皮膚を見ていないことに気づいたのだそう。患者会でたくさんの患者さんと交流した経験から、「どんなに皮膚の状態が悪くても、明るい人やいろんなことにチャレンジしている人はとても素敵だ」と話し、「若いうちはどうしても外見が気になるが、内面を磨くことで自分に自信がつき、他人の視線も気にならなくなってくるのではないか」との考えを述べました。

 その上で、「できないことばかりを考えて思い詰めても何も変わらない」と指摘。視点を前向きに変えて、目標やできることを考えたり楽しいことを見つけたりするなど自分から行動するよう提案しました。

 インターネットが普及したことで玉石混交の情報が溢れ、病気の話題に限らずどの情報が正しいのかと迷ってしまったり、時には誤った情報を信じてしまったりした経験がある方も少なくないのではないでしょうか。正しい知識を基に行動することで、皮膚の病気を抱える人をはじめ、スティグマに悩む人が少しでも減っていく社会にしたいものですね。

 日本ベーリンガーインゲルハイムは11月7日(日)に、WEB市民公開講座「皮膚の病気の悩み、抱え込まないで~患者さんが向き合う、体と心の悩みを考える~」(詳細はこちら)を開催予定です。ご興味のある方は参加してみてはいかがでしょうか。(QLife編集部)

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