心気症
しんきしょう
心気症とは?
どんな病気か
昔、中国の杞の国の人は、空が落ちてくるのではないかと思い、そのことを思ううちに不安になって夜も日も明けぬ恐怖にとらわれたといいます。これを「杞憂」といいます。
人は些細な兆候によって何かを不安に思い、不安のためにその思いこみから抜けられないという落とし穴に落ちることがしばしばあります。その不安が、体の病気へのとらわれという形で表れたものが心気症です。
自分が何かの病気にかかっているのではないかという誤解に基づき、どんなに検査を行っても異常も病気も見つからないにもかかわらず、自分が病気ではないかという疑念はますます強くなります。しかし、妄想のように、人の解釈を受けつけないということはありません。むしろ医師の診断、解釈を求めて次々と病院を受診し(ドクターショッピング)、検査をしても納得せずに医師を手こずらせることが多いのです。
大丈夫だと保証してくれる医師には満足せず、病気を見つけてくれる医師を求めます。少しでも疑わしい所見が見つかったり、医療スタッフの会話から病気が示唆された時には驚き、あわてます。病気の末に、死んでしまうのではないかという恐怖が強くなります。
そのために仕事に支障が生じ、時には出勤不能となります。家族も、患者さんの不安に付き合わされ、疲れていることが多いようです。
原因は何か
過去に実際にあった病気や、近親者の病気などが原因になっていることがあります。うつ病を合併していることが多いのですが、抗うつ薬を服用してうつ病が改善しても、必ずしもよくならない場合があります。
時には、患者さんの背後に民間医療者や特定の宗教的な考えがあって、病気であるという考えを患者さんに与えている場合があります。また、患者さんの訴えは、その社会や患者さんが生きてきた文化に影響されていることもあります。
診断にあたっての注意
たとえば過去に炭坑で働いていた人で、空気の汚れや呼吸困難に敏感な人の場合、最も注意すべきなのは心気症ではなく、肺の疾患があることです。粗雑な検査による病気の見逃しを、心気症のせいにしてはなりません。
高齢者はしばしば自分の健康を心配しますが、その心配のしかたは合理的であり、やみくもに病気を探して医者を回るということはありません。また、自分の顔貌や身体が醜いのではないかというとらわれがある場合は醜形恐怖と呼ばれる状態であり、この場合は、患者さんの不安は自分の外観ということだけに限られているので、死んでしまうというような不安にはつながりません。
ごくまれに、心気症の人が、心配していたとおりの病気になってしまい、余命いくばくもないと本当に宣告されてしまうことがあります。筆者の経験では、そのような場合、患者さんはもはや無用の心配をすることをやめ、現実の病気に合理的に対応したことが印象的でした。
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バーンアウト症候群ともいわれます。1980年代初め、アメリカの医師フロイデンベルガーが提唱した病態で、モラール(勤労意欲)の高い理想家肌の人が、ホスピスや障害児(者)の施設で働いているうちに、無力感を感じ、慢性に疲労を訴え、やる気をなくし、心身の不調を訴えることに対して用いられました。つまり最初は、職場における一種の職業病という観点でみられていました。
その後の研究で、このような病態は看守、教師、医師、看護師、長距離トラックの運転手など、多くの職種においてみられることがわかってきました。こうした人たちはうつ病と類似の症状(無気力、易疲労感、いらいら、不眠など)を訴えるため、抗うつ薬の投与などが試みられてきましたが、あまり効果がないことがわかりました。
かといって休養すれば回復するものでもなく、いまだ治療法は十分確立しているとはいえません。心身の自然な活力の復活を目指した認知行動療法や、精神療法を含めた人間学的な接近が必要とされています。
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