出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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反社会性パーソナリティー障害
はんしゃかいせいぱーそなりてぃーしょうがい

反社会性パーソナリティー障害とは?

どんな障害か

 この障害は、社会規範に反する行動を良心の呵責なく行う人々に診断されるものです。犯罪者の研究から導き出されたこの障害は、過去にはサイコパス(精神病質)と呼ばれていました。

 男性に多く、知的な印象を受ける場合も少なくないのですが、社会規範や道徳には顧慮はなく、自己の利益や都合といったことを追求します。このため、やはり自分からこの障害のために医療機関を受診することはなく、多くは犯罪が犯されてから、その原因を検討されるなかで明らかになってくるものです。

 症候は、表13表13 反社会性パーソナリティー障害の診断基準(A項目)に提示した項目を参照していただくとよりわかりやすいと思われます。

表13 反社会性パーソナリティー障害の診断基準(A項目)

 本障害はパーソナリティーの障害と呼ばれますが、今日では15歳以前に発症の行為障害であったことが診断基準で求められています。すなわち、発達過程で思春期以前にもっている傾向であると考えられ、何らかの脳機能上の障害をもっているのではないかと推定されています。

 そのなかで、発達障害のひとつである、注意欠如多動性障害ADHD)を基礎にする一群の存在も仮定されており、ADHDから行為障害、そして反社会性パーソナリティー障害という経過をたどるものもあると考えられています。ただし、反社会的行動とADHDとは基本的に質の異なる問題を含んでいることも確かであり、このようなパーソナリティー特性がどのように形成されていくのかは不明な点が多いのが現状です。

治療の方法

 本障害の治療は医療刑務所などで、今までさまざまな試みがなされてきました。しかし、その効果については症例数が限られることから必ずしも明らかではありません。

 易怒性、攻撃性については抗精神病薬や気分調節薬、抗てんかん薬が用いられます。また、患者さんの認知のゆがみに関しては認知行動療法が、対人関係の問題については個人精神療法が行われます。

反社会性パーソナリティー障害と関連する症状・病気

(執筆者:東京慈恵会医科大学精神医学専任講師 小野 和哉)

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