出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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選択性緘黙症
せんたくせいかんもくしょう

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選択性緘黙症とは?

どんな病気か

 本症の基本的な特徴は、言語理解、発語などの言語能力は正常であるのに、一部の生活場面(たとえば学校や友だちとの遊びの場面)で沈黙を続けることにあります。発症となるきっかけが明らかでないことが多く、入園や入学などにより気づくことが多いものです。

 一般に、発症は5歳以前が多く、有病率は1%以下で、全児童の0・2%前後といわれています。しかし、家庭では普通にしゃべっていることと、学校では周囲に迷惑を及ぼすことがほとんどないために、問題視されずにいることも少なくないようです。男児より女児にやや多い傾向にありますが、その理由は不明です。

症状の特徴と診断

 基本的な特徴はすでに述べましたが、ここでは、治療経過などからコミュニケーション意欲の強さの程度により分類されている3つのタイプについて触れます。

 タイプIは、家族以外にコミュニケーションを自ら求める、神経症的不安に基づくタイプです。

 タイプIIは、家族以外にコミュニケーションを自ら求める意欲に乏しく、性格や人格発達の未熟性に基づくタイプです。

 タイプIIIは、家族内外ともにコミュニケーションを拒否する傾向が強く、精神病的な問題をも含むタイプです。

 3つタイプのそれぞれの特徴などを一覧にしたので参照してください(表15表15 選択性緘黙症(症状と経過の特徴))。実際の臨床での診断は、表16表16 選択性緘黙症の診断基準に示すような診断基準に従って行われています。

表15 選択性緘黙症(症状と経過の特徴)

表16 選択性緘黙症の診断基準

治療と対応

 本症の本質を対社会、対人間との交流障害と考えるなら、治療や対応の目標は、話すことよりもコミュニケーションの拡大と自我の発達を促進することになります。

 タイプIの治療は、患者さんである子どもの不安を理解し、意思や感情を安心して表出できるような環境づくりを目指した精神療法的なはたらきかけが重要になります。

 タイプIIやタイプIIIでは、精神療法などになじみにくく、コミュニケーションも深まらず、家族関係の変化も乏しいケースが多い傾向にあり、よりきめ細かな生活療法的な援助が必要になります。また、時には発達障害や他の精神病性の障害との区別が必要になることもあるので注意しましょう。

 いずれにしても、本症の発生要因は、幼児期に起因することが多いようです。そこで、幼稚園や学校などの教育現場で、精神保健や心の発達の問題として、教育的な立場から早めに気づき、早めに対応することがポイントといえるでしょう。

(執筆者:前茨城県立医療大學医科学センター教授/さいたま市教育委員会教育相談室専門医 根岸 敬矩)

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