出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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先天欠如歯
せんてんけつじょし

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先天欠如歯とは?

どんな病気か

 歯を形作る原基(歯胚)の形成が損なわれ、先天的に歯が欠如していることをいいます。先天欠如歯は、1歯から数歯の比較的少数歯に限られるものから、多数歯に及ぶものまでさまざまです(図24図24 先天欠如歯(X線像))。ごくまれに、全部の歯が先天欠如する場合もあります。

図24 先天欠如歯(X線像)

原因は何か

 1歯から数歯の比較的少数歯に限られるものは、人間の進化の過程で本来の歯の数が徐々に失われた結果という説などがあります。しかし最近では、多数に及ぶ場合、遺伝的要素により引き起こされるともいわれています。

症状の現れ方

 乳歯の先天欠如は、非常にまれです。永久歯では、親知らず(智歯・第三大臼歯)が欠如することはよく知られていますが、次いで、側切歯、小臼歯などが比較的多く欠如するといわれています。

 永久歯の先天欠如がある場合は、乳歯の根の吸収がうまくいかず、いつまでも抜けずに残る場合があります。仮に乳歯が脱落して、そのすきまが空いたまま放置しておくと、隣接した歯が傾いたり、噛み合う相手の歯が伸び出して噛み合わせが悪くなったり、先天欠如歯の部分の骨(歯槽骨)が萎縮してしまいます。また、発音が悪くなったり、歯磨きがしにくかったりすることもあります。

治療の方法

 乳歯が脱落せずに抜けずに残る場合は経過観察することありますが、欠如したすきまがある場合は、人工の歯(ブリッジ、入れ歯、インプラント)を入れてすきまを埋める治療を行う場合が比較的多いようです。しかし、矯正治療によって隣り合う歯を動かしてすきまを閉じることが可能な場合もあります。

(執筆者:東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科顎顔面矯正学教授 森山 啓司)

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東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科顎顔面矯正学助教 小川卓也

 口唇裂・口蓋裂のある患者さんでは、生後の裂閉鎖手術の影響で上あごの成長が不十分になり、上あごの歯列の幅が狭くなったり、反対咬合になる場合が多くみられます(図25図25 口蓋裂)。

 そのため、一般的には6歳臼歯(第一大臼歯)が生えたころから上あごの幅を広げたり、上の前歯を前方に押し出して噛み合わせを整えたりする治療を行います。

 また、上あごの成長を促進するため、上顎前方牽引装置と呼ばれる装置で治療を行う場合もありますが、上あごと下あごの成長に大きな不調和がみられる時には、成長終了後、外科手術を併用した歯科矯正治療を必要とする場合もあります。

 近年では、骨延長術を利用した外科手術も行われています。個々の歯を適切な位置に並べるためには、マルチブラケット装置を用いて治療を行います。

 さらに、上あごの骨を一体化する目的で、骨が欠損している部位に骨を移植する手術(二次骨移植術)を行う場合があります。この手術により上あごの骨の安定性を高めるだけでなく、骨の欠損があった部位に骨のなかに埋まっている歯を自然に誘導したり、矯正装置を用いて歯を移動したりすることが可能になります。

 骨の欠損部に隣接した歯は欠如したり、形の異常を示すことが多いといわれていて、最終的には人工の歯(ブリッジ、インプラントなど)を用いて治療する場合もあります。

 口唇裂・口蓋裂に対する歯科矯正治療には保険が適用され、育成・更正医療の給付対象にもなります。

先天欠如歯に関する医師Q&A