転移性肝がん
てんいせいかんがん
転移性肝がんとは?
どんな病気か
肝臓以外の場所にできた悪性腫瘍(がん)が血液の流れに乗って肝臓に転移してきたものが転移性肝がんで、原発性肝がん(肝細胞がんと胆管細胞がん)とは区別する必要があります。
肝臓に転移してくるがんのうち、日本で多いものは、大腸がん、胃がん、膵臓がん、子宮がん、肺がん、乳がん、胆嚢がんなどです。もともとあった臓器のがん(原発巣)が外科手術などで十分に除去されている場合と、残っている場合とがありますが、後者では治療が難しく、長期生存は難しい傾向にあります。
原因は何か
原発巣のがんの発生原因は、それぞれの臓器の性質によります。発生した悪性腫瘍が肝臓に転移してくるのは、免疫能が低下することに伴ったり、腫瘍の悪性度が増す(性質が悪くなる)ことによったりしますが、十分にはわかっていません。
症状の現れ方
腹部の膨満感、腹痛などの自覚症状のほか、定期的に通院をしている人では、血液検査で腫瘍マーカーの上昇や、肝機能検査値の異常が先に見つかるほうが多いようです。
また、定期的な診察を受けている人では、自覚症状が出る前に、超音波検査やCT検査などの画像診断で、肝臓内に無症状のがん結節が発見されることが一般的です。
検査と診断
腫瘍マーカーと画像診断で病気の把握をします。
もともとのがんがどのような腫瘍マーカーを産生するかにより、該当する腫瘍マーカーが高値となっているかどうかを調べます。腫瘍があるか、どのような性質のものか、肝臓内の広がりの程度がどうかなどの検査は、超音波検査やCT、MRIなどで行います。
外科切除や持続肝動脈注射など特殊な治療を行う時には、血管造影検査も必要になります。肝臓に転移したがんが他の臓器にも転移していないかどうかを調べるために、骨シンチグラムや腫瘍シンチグラム(ガリウムシンチグラム)、PET検査などを行うこともあります。
治療の方法
大腸がんなどで肝臓への転移が単発(1個だけ)であれば外科切除することがありますが、手術できないことのほうが一般的です。
腫瘍の種類と状態により、抗がん薬を肝臓の転移がんに高濃度に注入するために、肝動脈にカテーテル(細い管)を留置し、そこから持続肝動脈動注療法を行うことがしばしば有効です。最近では2種類以上の薬を組み合わせて行う全身化学療法(静脈注射または内服で抗がん薬を使う)を行うこともあります。
乳がんなど特殊ながんではホルモン療法が有効で、長期の内服治療も併用します。
病気に気づいたらどうする
がんの治療を受けたことがあれば、その後も定期的にその専門医の診察を受けることが基本です。転移性肝がんの自覚症状は少ないのですが、腹部の張り感・痛み、黄疸などに気づいたら、ただちに、もともとのがんの担当医を受診してください。
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コラム転移性肝がんのラジオ波治療
ラジオ波は、皮膚を2~3mm切り、電極をがんに挿入し、100℃に熱して死滅させる治療法です。1回に径3cmの組織が焼灼されます。大きながんでは電極を何カ所かに入れ分けます。100℃に熱せられる範囲にがんがすべて含まれれば、確実に治癒します。適応は3cm以内3個以下が一般的です。CTで効果を判定し、がん残存の可能性があればその部分を狙ってラジオ波を追加します。きちんと追加治療を行えば、99%の患者さんでがんが消失しています。
ラジオ波は全身麻酔や開腹手術が不要なので、高齢者にも可能です。東大病院では最近は患者さんの平均年齢は70歳を超え、80歳以上が11%です。ラジオ波による治療なら、治療時間は30分~2時間、その後ベッド上安静、食事は4時間後から、歩行は翌日から可能です。
ラジオ波は主に肝細胞がんに実施されてきましたが、成績も手術以上です。がんが3cm以内3個以下で肝硬変が軽い患者では、5年生存率は73%です。
転移性肝がんにもラジオ波が有効なことはあまり知られていません。ラジオ波で治療した大腸がん肝転移107名のうち、肝転移発見後すぐにラジオ波を受けたのはわずか25%で、28%は肝切除後に、47%はその他の治療後に受けていました。それでも生存率は、1年92%、3年67%、5年41%、7年36%です。
このなかには、肝以外にもがんがあったり、がんの数が多すぎたり、心臓や肺の病気で手術不能の方が57名いました。手術可能者50名(81歳以上6名含む)での5年生存率は64%で、肝切除の5年生存率である40%前後を上回っています。進行がんにも化学療法と組合せ、良好な成績を上げています。
ラジオ波治療は実績ある施設をおすすめします。単純な治療にみえますが、技術と経験がないと、がんが残存したり周りの組織を損傷したりします。また、高性能の超音波やCTの有無も重要です。
高齢化が進み治療におけるQOLが重視されるなかで、ラジオ波はますます重要な役割を担っていきます。
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