出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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慢性腎不全
まんせいじんふぜん

慢性腎不全とは?

どんな病気か

 慢性(数カ月~数年かけて)に進行する腎臓の病気によって、徐々に腎機能の低下が進行する病態(状態)です。

原因は何か

 すべての腎臓病が原因になります(表15表15 慢性腎不全の原因となる病気)。透析を導入された患者さんの原因となった病気は、多い順に、糖尿病性腎症慢性糸球体腎炎腎硬化症(高血圧による腎障害)、嚢胞腎などです。近年、高齢社会の到来とともに糖尿病性腎症、腎硬化症が増えています。

表15 慢性腎不全の原因となる病気

 症状の現れ方は尿毒症の項目で詳細に解説しているので、参照してください。

検査と診断

 ゆるやかに進行する高窒素血症、高クレアチニン血症、糸球体濾過値の低下などで診断されます。

治療の方法

 まず、慢性腎不全の原因となった病気の治療を行います。その他の治療法は、①禁煙、減量などの生活習慣の改善、②減塩(6・0g/日未満)・蛋白質制限などの食事指導、③厳格な血圧(130/80mmHg以下)、血糖(HbA1C6・5%未満)および脂質管理、④貧血の改善、⑤カルシウムとリンの管理、⑥カリウムとアシドーシスの対策、⑦経口吸着剤などによる尿毒素対策など、すべて慢性腎臓病(CKD)の治療法に準じます。

 これらの治療にもかかわらず、腎機能の低下がさらに進行すると、血液浄化療法を行います。

病気に気づいたらどうする

 重要なことは、患者さん自身が「今、自分の腎不全はどこまで悪化しているのか」を理解することです。そのためには主治医とよく相談し、自分の病期に合った運動・食事療法を指導してもらい実践することです。

 他の病院にかかる時には、腎不全患者であることをよく説明し、安易に薬の投与を受けないことが肝心です。

(執筆者:望星田無クリニック院長 福井 光峰)

腎不全に関連する可能性がある薬

医療用医薬品の添付文書の記載をもとに、腎不全に関連する可能性がある薬を紹介しています。

処方は医師によって決定されます。服薬は決して自己判断では行わず、必ず、医師、薬剤師に相談してください。

・掲載している情報は薬剤師が監修して作成したものですが、内容を完全に保証するものではありません。

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コラム慢性腎不全のいろいろな症状

望星田無クリニック院長 福井光峰

 慢性腎不全の主な症状を表16表16 慢性腎不全の臨床症状に示しました。

表16 慢性腎不全の臨床症状

 慢性腎不全では、腎機能の低下はゆるやかであり、腎機能の指標である糸球体濾過量(glomerular filtration rate: GFR、正常は100ml/分、腎障害で低下する)による重症度(病期)と臨床症状の出現とはよく相関しています。

 慢性腎臓病(CKD)でのステージ(病期)分類で説明すると、ステージが進むにしたがい、多彩な症状が出現してきます。

ステージ1・2

 GFRが60ml~/分くらいまで低下していますが、代償(補う)機能がはたらいているため、ほとんど無症状です。

ステージ3

 GFRが30~60ml/分であり、軽度の高窒素血症が出現し、尿濃縮力低下のため夜間の多尿がみられます。また軽度の貧血のため、倦怠感や易疲労感(疲れやすい)、動作時の息切れがみられることもあり、高血圧、高リン血症も認められます。

ステージ4

 GFRが15~30ml/分となり、高窒素血症や貧血は高度となり、代謝性アシドーシスや電解質異常(高カリウム、高リン血症、低カルシウム血症など)が認められます。

 自覚的には倦怠感や脱力感などが強くなり、高血圧や浮腫(むくみ)などが現れます。

ステージ5

 GFRは15ml/分以下となり、著しい高血圧、浮腫、貧血、消化器症状(吐き気・嘔吐、食欲不振、アンモニア臭など)、循環器症状(動悸・胸痛・呼吸困難などの心不全、不整脈など)、神経・精神症状(眠気、集中力低下、けいれん、意識障害、運動・知覚障害)などの尿毒症症状が現れ、放置すると死に至ります。そのため、透析療法が必要になります。

 患者さんはご自身のステージをよく把握し、症状の出現に気をつけましょう。

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