出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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発疹から考えられる主な病気

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発疹から考えられる主な病気

◆ 紅斑

症状 疑われる病気
発熱などに伴って両頬に蝶が羽を広げたような形の紅斑、関節痛 全身性エリテマトーデス
まぶた・手指・爪周囲・肘・膝などに紅斑、筋力低下 皮膚筋炎
手や足に親指の頭くらいの円形の紅斑が多発 多形(滲出性)紅斑
膝より下に円形・不規則形の紅斑が多発 結節性紅斑
発熱とともに顔・首・上半身を中心に境界明瞭な隆起した紅斑 スウィート病
発熱とともにサーモンピンク色の紅斑、関節痛 成人スティル病
親指や小指のつけ根が異常に赤くなる(手掌紅斑) 肝硬変
C型慢性肝炎
帯状に並ぶ紅斑と小水疱、その部分に一致する神経痛様の痛み 帯状疱疹
体幹・四肢に鱗屑のある紅斑が多発、長期持続ののち潰瘍に 皮膚悪性リンパ腫

◆ 紫斑

症状 疑われる病気
四肢とくに下肢に粟粒大~米粒大の点状の紫斑が多発 単純性紫斑
全身に点状・斑状の紫斑、鼻・口腔粘膜出血、血尿、下血 特発性血小板減少性紫斑病
下腿に多数の点状紫斑、繰り返すうち大腿、腰臀部へ拡大 慢性色素性紫斑
主に下肢・臀部に左右対称の紫斑、腹痛、膝・足関節の痛み アナフィラクトイド紫斑

◆ 色素異常

症状 疑われる病気
いわゆるしみ、頬・額・上唇などに左右対称に出る褐色斑 肝斑
いろいろな大きさや形の白斑 尋常性白斑
足裏・指・爪の下・背部・下肢などに褐色・黒色のシミ・ホクロ 悪性黒色腫

◆ 丘疹

症状 疑われる病気
まぶた・首・外陰部に乳白色~黄色の蝋のような丘疹 全身性アミロイドーシス
毛包に一致した赤い丘疹あるいは中央にうみをもった丘疹 毛囊炎
猫にひっかかれたのち紅色の丘疹、リンパ節のはれ、発熱 猫ひっかき病

◆ 水疱

症状 疑われる病気
口のなかをはじめ健康な皮膚に突然できる水疱 天疱瘡
手のひら・手指・足の裏に突然透明な小水疱が多発 汗疱
神経痛様の痛みののち、主に神経の走行に沿って紅斑・小水疱 帯状疱疹

◆ 結節

症状 疑われる病気
全身の関節のこわばり・痛み・はれ、前腕などの皮下結節 関節リウマチ
手指の関節のはれ・痛み・不快感、ヘバーデン結節 手における変形性関節症
眼・鼻・耳などの周囲に黒色~黒灰色の結節、その辺縁に小結節 基底細胞がん

◆ びらん・潰瘍

症状 疑われる病気
顔面・頭部などに盛り上がったその中央に潰瘍、しばしば悪臭 有棘細胞がん
主に下腿の下3分の1のところにしつこい潰瘍・むくみ 下腿潰瘍
口中・陰部に潰瘍、四肢に結節性紅斑、眼に紅彩毛様体炎 ベーチェット病

発疹とは?

皮膚に現れる肉眼的変化を総称して発疹といいます。皮膚自体の病気、皮膚以外の病気、薬物、心因性によるものなどさまざまな原因で起こり、かつ発疹の種類も非常に多彩です。原因によって治療法も異なりますので、発疹ができたら早いうちに皮膚科を受診することが必要です。

注意したい発疹

発疹を起こす病気は、とてもたくさんあります。ここでは、とくに注意したい発疹と病気について簡単にふれておきます。以下のような症状があったら、すぐに受診してください。

鼻を中心に蝶のような紅斑が出る

急に発熱、体重減少、食欲不振などの全身症状が現れ、それに伴って蝶が羽を広げたような紅斑(蝶形紅斑)が、鼻を中心に両頬に現れたら全身性エリテマトーデスを疑います。自己免疫疾患の代表的な病気で、圧倒的に女性に多く発症します。
発疹はさらに体のいろいろな部位に現れ、そのほか関節の痛みやはれ、手指が紫色になる、脱毛、血尿、むくみなどさまざまな症状も起こってきます。

手のひらが際立って赤い

手のひらの、とくに親指や小指のつけ根あたりの盛り上がった部分や指先が、ほかより際だって赤くなるものを手掌紅斑といい、慢性の肝障害とくに肝硬変でよくみられます。
手掌紅斑は健康な人、妊娠している人などにも現れますが、そのほか、胸や背中や上腕などに小さなクモが脚を広げたような赤い毛細血管が現れる(クモ状血管腫)、男性なのに乳房が女性のように大きくなる(女性化乳房)などもあるなら肝硬変の可能性が大です。

足の裏のホクロが大きくなってきた

まず悪性黒色腫(メラノーマ)を疑います。「ほくろのがん」として広く知られていて、皮膚がんのなかで最も怖く、転移しやすいがんです。全身のどこにでも発生しますが、足の裏が最も多い部位です。また悪性黒色腫は、手のひらや爪の下などに褐色のシミができ、それがだんだん大きく黒くなっていくこともあります。
皮膚がんには、さらに有棘細胞がんと基底細胞がんなどがあります。有棘細胞がんは日光にさらされた顔面や頭部などの皮膚、やけどや外傷などの傷跡に赤く盛り上がった潰瘍が発生し、しばしば悪臭を伴います。基底細胞がんは、高齢者の頭頸部とくに眼や鼻、耳の周囲などに黒色~黒灰色の結節として発生します。
なお、病気以外から現れる注意すべき発疹に薬剤の副作用があります。薬剤の使用中に発疹(丘疹、じん麻疹、紅斑など)が現れたら使用を中止して、すぐに医師へ連絡するようにしてください。

発疹の主な種類

皮膚の表面にあるもの

・斑(はん)…皮膚の表面に盛り上がりはなく、ただ色が異なる発疹
・紅斑(こうはん)…赤くて圧迫すると色が薄くなる
・紫斑(しはん)…皮膚組織内の出血により青紫色になる
・色素異常(しきそいじょう)…皮膚の色素がなくなったのが白斑、反対に色素の増加や沈着で褐色、黒褐色、紫褐色、青灰色などに見えるのが色素斑

皮膚の表面から盛り上がるもの

・丘疹(きゅうしん)…皮膚面から半球・円錐状に隆起した発疹
・結節(けっせつ)…丘疹がエンドウ豆以上の大きさになった発疹
・水疱(すいほう)…表皮のなかに透き通った水分がたまり、半球状に隆起した発疹
・膿疱(のうほう)…水疱にうみがたまって黄色く見える発疹
・膨疹(ぼうしん)…水分が皮膚の真皮から表皮の細胞の間にたまって、その部分だけがはっきりと扁平状に隆起した発疹、かゆみを伴う

上記の発疹に引き続いて起こる、あるいは変化して起こるもの

・びらん…水疱や膿疱をひっかくなどして膜が破れたもの
・潰瘍(かいよう)…びらんよりもっと深い傷で皮膚の真皮まで達したもの
・亀裂(きれつ)…細く深い裂けめが走るもの。いわゆるあかぎれ
・鱗屑(りんせつ)…表皮の角層がはがれて落ちたもの。はがれて落ちることを落屑