尿糖執筆者:昭和大学病院医学部医学教育推進室教授 高木 康/昭和大学横浜市北部病院病院長 田口 進

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おもに糖尿病の検査として行いますが、一度陽性だからといって、すぐに糖尿病に結びつくわけではありません。検査当日は絶食、前日の飲酒は控えます。

医師が使う呼び方:「にょうとう」

尿糖の基準値

陰性(-)

糖尿病になると陽性に

 尿糖は、血液中のブドウ糖(血糖)が尿中に漏れ出てきたもので、おもに糖尿病のスクリーニング(ふるい分け)検査として行われています。

 腎(じん)臓には、体に有用な糖がかなり高値になっても、尿中に漏出させない機構があります。この機構のレベルは血糖値が160~180mg/dlで、これを超えないと、糖は尿中には出ていきません。

 しかし、糖尿病などで血糖値がこれ以上に高くなると、腎臓での糖の処理能力が限度を超えて尿中に糖が出現し、尿糖は陽性になります。

尿糖陽性は糖尿病の特異的指標ではない

 食事で極めて多量の糖分を摂取すると、血糖値が異常に上昇して尿中に出て、尿糖が陽性になります。したがって、尿糖が1回陽性だったからといって、すぐに糖尿病に結びつくわけではありません。

 また、血糖値が160~180mg/dl以下で、とくに腎臓に病気がなくても尿糖の出る場合があります。これを腎性糖尿といい、腎臓での糖処理の機構がもともと低いためにおこる現象で、この場合は放置しておいても心配ありません。

食後2~3時間たってからの尿で検査

 採尿時の注意事項については、「尿蛋白」を参照ください。検査は、試験紙によって尿糖が出ているか否かを調べます。出ていなければ陰性(-)です。

 尿糖は、食事の摂取によって数値が大きく変わります。検査当日の朝は絶食し、前日の夕食は早めにとり、アルコールは控えます。

陽性、偽陽性ならくわしく検査

 尿糖が陽性(+)、あるいは偽陽性(±)の場合は血糖検査を行います。

 また、糖尿病というのは膵(すい)臓からのインスリンの分泌が低下したり、末梢組織でのインスリンの効果が減少した病態ですから、糖尿病の診断にはインスリンやその前段階の物質であるC-ペプチドなどの測定も行います。

 なお、自分で糖尿病のコントロール具合をみる方法に、尿糖検査と自己血糖検査(SMBG)があります。尿糖検査は、市販されている安価な試験紙で簡単に尿糖の有無が確認できます。この場合、毎食前および就寝前の4回行います。検査1時間前に排尿し、検査直前にあらためて排尿して、その尿で検査するほうが確かな情報が得られます。ただし、尿糖は尿の濃縮の程度で陰性・陽性になるため、この検査はおおよそのコントロール具合をみるもので、正確にみる場合は自己血糖検査が行われています。自己血糖検査は、市販されている簡易自己測定器という機械を使います。自己測定を行いたい場合は主治医に相談してください。

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疑われるおもな病気などは

  • 陽性

    糖尿病、内分泌疾患(クッシング症候群、甲状腺機能亢進症など)、肝疾患(とくに慢性肝炎、肝硬変)、膵組織の破壊(膵炎、膵臓がんなど)、腎性糖尿、妊娠、薬剤の影響など
出典:四訂版 病院で受ける検査がわかる本 2014年7月更新版