大腸がん執筆者:昭和大学病院医学部医学教育推進室教授 高木 康/昭和大学横浜市北部病院病院長 田口 進

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 人口の高齢化と食生活の欧米化の影響で、日本でも大腸がんが急激に増えています。同時に、診断技術の進歩、内視鏡による治療や外科手術の進歩によって治療成績も飛躍的に向上しています。大腸がんは、がんのできた部位によって、上行結腸がん、横行結腸がん、下行結腸がん、S状結腸がん、直腸がんに分けられますが、直腸がんとその他の大腸がんとでは、検査手順が少し異なります。

おもな症状

 血便、腹部膨満(ぼうまん)感、腹痛、粘液便、がんこな便秘、また、下痢と便秘が交互に現れる、便が細くなるなど。ただし、これらすべてはがん特有の症状ではなく、とくに血便では痔(じ)のケースが多いので、鑑別が重要です。

手順

①便潜血反応(数回行う)/直腸指診/腫瘍マーカー

②下部消化管X線造影

③下部消化管内視鏡/生検(病理診断)

 検査項目はおもなものを示してあります。また手順は、症状やがんの状態などによっては順序がかわることがあります。

便潜血反応は繰り返し行うと効果的

 大腸がんを疑うような症状があった場合は、その後の検査・診断方法を選択するためにも、まず問診が重要になります。どのような症状がどのくらい続いたかをくわしくきいていきます。大腸ポリープの有無も重要な情報です。また、わずかですが、家族性に発生する大腸がんもあるため、家族歴にも注意が必要です。

 検診では、1990年代から便潜血反応が行われていて、第一次のスクリーニング(ふるい分け)として効果を発揮しています。ただし、便潜血反応は何回か繰り返して行わないと確かなことはわかりません。

 腫瘍マーカーはいろいろなものが開発されていますが、検出率に問題があって早期がんの診断には向いていません。それらのうちで、CEA、CA19-9、TPAは比較的高い率で陽性になり、大腸がんではそれぞれ50~60%、40~50%、55~65%となっています。これらを組み合わせて検出率を高めると、陽性率は70%程度にまでなります。

 直腸がんでは、肛門から10㎝程度までの部分にできたがんは触診(直腸指診)で確認できます。また、直腸鏡検査は外来で行うことが可能です。

ポリープ状のものは内視鏡下で切除も可能 

 便潜血反応で疑わしい所見があった場合は、まず下部消化管X線造影が行われます。隆起があったりポリープ状のものは、X線造影でよくわかります。

 下部消化管内視鏡が最終検査ですが、近年は最初から内視鏡を行うことが多くなっています。

 内視鏡は、X線造影では発見できない色調の変化や小さな病変をみつけることができます。同時に疑わしい病変があれば、その組織を採取(生検(せいけん))して病理診断を行います。悪性と判断がついたポリープ状の腫瘍は、内視鏡観察下で切除することも可能です(ポリペクトミー)。また、胃がんと同様、大腸がんでも超音波内視鏡の検査が行われてきています。

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出典:四訂版 病院で受ける検査がわかる本 2014年7月更新版