出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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収縮性心膜炎
しゅうしゅくせいしんまくえん

もしかして... 急性心膜炎  うっ血肝  心房細動

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収縮性心膜炎とは?

どんな病気か

 急性心膜炎などが治る過程で、心膜の肥厚、癒着、線維化、石灰化が生じ、心臓が十分に拡張できない状態です。

原因は何か

 原因不明であることが最も多く、結核性心膜炎が病因として重要ですが、最近は放射線照射後や開心術後など各種の治療に関連したものも増加してきています。

症状の現れ方

 全身倦怠感、息切れ、腹部膨満感、下腿浮腫などが現れます。

 重症の場合は、うっ血肝による肝機能障害や吸収障害による低栄養状態が起こります。

検査と診断

 身体所見では、頸静脈怒張(ふくれる)、肝腫大、下腿浮腫などが認められます。胸部X線やCT検査で、心膜の石灰化と広がりを診断します(図12図12 心膜の石灰化と広がり)。心臓カテーテル検査で右心室と左心室の圧を同時に記録すると、特徴的な圧波形が記録されます。

図12 心膜の石灰化と広がり

治療の方法

 薬物で対症的に経過をみる場合は、安静にし、塩分制限を行い、状態に応じて利尿薬などを投与します。十分にコントロールできない場合は、原則として手術が必要です。

 手術のタイミングに関しては、早期のほうが術後の成績がよいといわれ、進行すると著しい拡張障害により心筋の変性や萎縮を引き起こすばかりでなく、心房細動や肝機能障害、低栄養などが術後の成績を不良にする可能性があります。

 手術では、肥厚あるいは石灰化した心膜を外科的に切除しますが、心臓を止めて人工心肺を用いて循環補助を行ったほうがよいかどうかは、患者さんごとに検討されます。

 手術前の状態が悪い場合は、十分に心膜を切除しても心不全症状が長引く場合があります。十分に心膜を切除できない場合もあり、手術による死亡は5~10%程度あります。手術をした場合の5年生存率は80%と比較的良好です。

病気に気づいたらどうする

 循環器内科医、心臓外科医に相談してください。とくに、手術前の状態、手術適応、どの程度完全に心膜を剥離できるかなどの説明を十分受けることが大切です。

(執筆者:国立病院機構まつもと医療センター松本病院循環器科医長 矢崎 善一)

心膜炎に関連する可能性がある薬

医療用医薬品の添付文書の記載をもとに、心膜炎に関連する可能性がある薬を紹介しています。

処方は医師によって決定されます。服薬は決して自己判断では行わず、必ず、医師、薬剤師に相談してください。

・掲載している情報は薬剤師が監修して作成したものですが、内容を完全に保証するものではありません。

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コラム心タンポナーデ

国立病院機構まつもと医療センター松本病院循環器科医長 矢崎善一

 心膜は、心臓表面を直接おおう臓側心膜と、心臓を縦隔や胸腔からへだてる壁側胸膜によって構成されています。通常、この2つの膜の間の心膜腔には、生理的に15~20mlの心嚢液が存在し、潤滑油の役割をしています。

 心タンポナーデは、過剰の液体がたまることにより心臓の拡張が極度に制限され、心拍出量が低下し、血圧低下やショックに進展する病態のことを指します。

 心膜液がたまる速さによって、数百ml程度で心タンポナーデに陥る場合もありますが、緩徐な場合は1Lたまっても心タンポナーデを起こさないこともあります。

 心タンポナーデを起こしている場合は、すみやかに貯留液をドレナージする(チューブを挿入して排液する)必要があります。

収縮性心膜炎に関する医師Q&A