出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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症候性てんかん
しょうこうせいてんかん

症候性てんかんとは?

どんな病気か

 症候性てんかんは、その原因となる基礎疾患が脳にあり、そのために脳内の特定の部位に電気的な異常・過剰放電が起こる病気です。症候性てんかんには部分てんかんに属するものと、全般てんかんに属するものがありますが、ほとんどは部分てんかんに属するもので、その発作は脳の部分的な病変による部分的な電気的異常から起こると考えられます。

原因は何か

 小児期に発症する症候性てんかんの原因としては、先天性奇形、出産時およびその前後の異常による脳損傷、新生児・乳児期の頭部外傷や脳の感染症(髄膜炎、脳炎)、遺伝性代謝異常症があります。

 成人になってみられる症候性てんかんの原因としては、脳血管障害脳腫瘍、頭部外傷やアルツハイマー病のような神経変性疾患があります。

症状の現れ方

 脳の限られた部位に生じる異常な電気的放電は、脳のどの部位にでも起こる可能性があります。そのため異常な電気放電が始まる部位により、前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉てんかんの4つに分けられます。

 頻度が高いのは前頭葉の運動を司る部位から始まる運動発作、頭頂葉の感覚を司る部位から始まる感覚発作、それに感情・行動のはたらきが集まっている側頭葉内側底面から始まる自律神経発作と精神発作です。これらにはしばしば意識障害が合併します。

 とくに精神発作では意識混濁、夢遊状態、認知障害、恐怖・驚愕を示す感情障害が発作中にみられることがあり、これらの発作は複雑部分発作と呼ばれます。この発作は治療に反応しにくく、難治性てんかんの大部分を占める発作型です。

 これらの部分発作でもあまりに過剰な異常放電が脳中心部に到達すると、そこから大脳の全般に電気変化が広がり、二次的に全身のけいれんを起こすこともしばしばあります。

検査と診断

 診断は、詳しい神経学的診察で脳異常が脳の特定部位に限られることを診断し、さらに脳波を記録してその電気的異常の発生する場所を確認します。場所がわかれば、そこを目標にしてCTやMRIなどの画像診断を行い、病変の部位だけでなく、その性質(脳の傷か腫瘍か奇形かなど)をも診断して正しい治療を行います。症候性てんかんの画像診断にはMRIのほうがCTに比べ優れていることを示す証拠があります。

 ほかの疾患と区別するには脳波検査が不可欠で、特異な脳波変化があることにより、一過性脳虚血発作や失神と簡単に区別されます。

治療の方法

 腫瘍などの脳病変を除去すべき場合には、外科的に腫瘍の摘除を行いますが、それ以外は一般に薬物治療を行います。

 発作の開始が左右いずれかに限られた部分発作からなる症候性てんかんには、カルバマゼピン(テグレトール)が第一選択薬としてすすめられ、もし副作用で服用できない時には、第二選択薬としてフェニトイン(アレビアチン)が、さらにそれも服用できないときにはバルプロ酸ナトリウム(デパケン)が使われます。

 難治のてんかんでは、外科的治療を考える前に、新規の抗てんかん薬であるトピラマート(トピナ)やラモトリジン(ラミクタール)、さらにゾニサミドやクロバザムといった薬を試みるべきですが、これらの薬を十分量用いて5年以上治療してもなお、てんかん発作が週1回以上起こる難治性てんかん(側頭葉てんかん)には、薬物療法より外科的治療が推奨されるので、てんかん専門医に相談してみてください。

病気に気づいたらどうする

 てんかん発作に気づいた場合にはできるだけ早く専門医の診察を受けます。症候性てんかんの場合には、その原因となる疾患についても検査をしてもらい、病気の予後に関して十分に医師から聞いたうえで、最も適切な治療を受けてください。

(執筆者:浅ノ川総合病院脳神経センター顧問 廣瀨 源二郎)

てんかんに関連する可能性がある薬

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浅ノ川総合病院脳神経センター顧問 廣瀬源二郎

 部分てんかんのなかでも側頭葉てんかんによる複雑部分発作は、薬物治療に対し抵抗性を示すことがよくあります。とくに側頭葉の内側にてんかん起源となる病巣のある場合、発作の始まりに胸やけのような不快感や吐き気を催し、一点を見つめて意識が遠のく発作が起こります。そして治療に抵抗性を示すため2~3剤の抗てんかん薬を必要とすることが多いです。このような難治例は、てんかん専門医が工夫を凝らしていろいろな薬の組み合わせを考えて治療し、約5年経過をフォローしても、1週間に1回以上の発作が起こる場合を難治性てんかんと呼んでいます。

 難治性てんかんを詳しく検査して、てんかん発作の起源が側頭葉内側に限定される場合には、外科的に片側の側頭葉を切除すると発作が6~7割の患者さんで完全に消失することが、多くの症例を集めて行われた外国の研究で明らかになりました。日本でもこの外科的治療がてんかん専門病院で行われ、外国と同様の好成績を得ています。難治性てんかんの患者さんは、一度外科的治療の可能性も主治医と相談するとよいでしょう。

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