出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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セラモメタルクラウン(陶材焼付け鋳造冠)
せらもめたるくらうん(とうざいやきつけちゅうぞうかん)

  • 歯科
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セラモメタルクラウン(陶材焼付け鋳造冠)とは?

セラモメタルクラウンとは

 セラモメタルクラウンは、陶材焼付け鋳造冠、メタルボンド(ボンド)、ポーセレンフューズドメタルクラウンなどとも呼ばれています。金属の表面に陶材(ポーセレン、セラミックス)を、七宝焼きのように焼き付けて製作される冠(クラウン)です。

 陶材(ポーセレン)は歯の色をしているため審美的に優れ、さらに対磨耗性や耐腐食性をもつ変形・変色しにくい優れた材料ですが、衝撃に弱く割れやすいという欠点をもっています。一方、歯科で用いられる金属、とくに金合金は加工性に優れ機械的強度も十分にもち合わせていますが、金属色であることから審美的には欠点のある材料です。

 この両者の利点をもち併せた冠が、セラモメタルクラウンです。すなわち、外側は陶材で歯の色を再現し、内側が金属で壊れにくい性質をもっています。

必要な処置

 ただし、金属の裏打ちをもつ陶材は透明感を出しにくいので、前歯などの審美的要求が大きい歯に用いることが多いこの冠の製作には、特別な技術が必要です。また、金属と陶材を合わせた厚さが必要なため、その分だけ歯を大きく削り込まなければ歯の色や形の再現が困難になるので、修復される歯も十分な厚みがある必要があります。場合によっては、たとえ生きている歯であっても歯の神経の処置が必要なこともあります。

 セラモメタルクラウンに用いる金属は焼き付け用金属、陶材は焼き付け用陶材と呼ばれ、熱膨張率を合わせた特別の材料を用いています。焼き付け用金属は陶材と強固に溶着される必要があることから、強い溶着力が得られる金と白金の合金が最も多く用いられています。溶着力が低いと、金属と陶材が口のなかではがれてしまいます。

 もしも口のなかで陶材がはがれたり割れた場合にも、最近では優れた修理用の材料があるので、すべてを替える必要は少なくなりました。

(執筆者:日本歯科大学歯学部附属病院長 羽村 章)

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日本歯科大学歯学部附属病院長 羽村章

 歯科用金属は、単体ではなく合金で用いられます。以前は純金を用いることもありましたが、現在ではほとんどなくなりました。そのため、冠やブリッジ、入れ歯を入れている口のなかには、多くの金属が存在することになります。

 アレルギーとは、抗原抗体反応によって起こる生体反応の異常な状態をいいます。金属アレルギーは、金属やその化合物が原因(抗原、アレルゲン)となって起こるアレルギーをいいます。

 歯科で用いられる主な金属は、金・銀・パラジウム・白金・銅・亜鉛・スズ・コバルト・クロム・チタンなどであり、これらのすべてがアレルギーの原因金属になる可能性があります。また、ピアスやイヤリング、ネックレスやブレスレット、時計や指輪などに用いられている金属も同様に、アレルギーの原因となる可能性があるので、体に触れている金属はすべてアレルゲンの可能性があると思ってください。

 歯科用金属アレルギーの症状は、口のなかの粘膜がはれる、赤くなる、水疱ができる、びらんや潰瘍ができて出血があるなどで、味がおかしい、味がしないなどの味覚異常や、口のなかの違和感・掻痒感などの感覚異常を生じることもあります。

 また、ピアスなど口のなか以外で歯科用金属と同じ金属を使っている場合は、症状は口だけでなく他の部位にも現れます。

 歯科治療の前に金属アレルギーがわかっていれば、原因金属を用いないで歯科治療を行います。処置後に判明した時には、アレルゲンとなっている金属の除去・撤去が必要です。歯科と皮膚科の連携による治療が必要な時もあります。