出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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唾石症
だせきしょう

もしかして... 尿路結石  唾液腺炎  粘液嚢胞

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唾石症とは?

どんな病気か

 尿路結石や胆石と同様、唾液腺にも結石が生じます。ほとんどの例は、顎下腺に起こりますが、少数例は、耳下腺にも生じます。舌下腺に生じることはまれで、小唾液腺に発生することはほとんどありません。

原因は何か

 原因は不明ですが、唾液の排出管に入り込んだ異物や細菌などを核として、そのまわりに唾液に含まれるカルシウムが沈着してできると考えられます。治療のため摘出した結石を割ってみると、沈着したカルシウムが年輪のようにみえます。結石のできはじめは当然小さいのですが、自然に排出されないと次第に大きくなっていきます。

症状の現れ方

 唾液は唾液腺を構成する無数の腺房というところで作られます。腺房で作られた唾液は管を通じて集まり、最終的には1本の管(排出管)に集まり、口のなかに出てきます。多くの場合、結石はこの排出管のなかにできます。

 1本しかない排出管に結石があると、唾液の通過障害が起こります。食事をすると、唾液腺は唾液を作って口のなかに出そうとしますが、途中の結石のために唾液が口のなかに出ることができず、唾液腺内にたまり、腺そのものが痛みを伴ってはれてきます。酸味の強いものを食べた時などはとくに症状が強く出ます。

 ほとんどの唾石は顎下腺に生じますが、顎下腺の唾石では左右どちらかの(一度に両側にできることはほとんどない)あごの下がはれます。耳下腺では耳の前から下のほうが痛みを伴ってはれます。はれは、食事後しばらくするとだんだん取れてきますが、次の食事をするとまたはれるということを繰り返します。

 この症状は結石の大きさに比例しないことが多く、ごく小さなものでも管の出口をふさぐと強い症状が出ます。また食事ごとの症状はある時期にひどく出ても、一時的に出なくなることもあります。

 結石が次第に大きくなると、腺そのものの機能が低下し、唾液の分泌が少なくなってしまいます。このようになると、口のなかから細菌が管を通じて入っていき、急性の唾液腺炎を生じることがあります。唾液腺が痛みを伴ってはれ、排出管の存在部位の粘膜が赤くはれて、開口部からはうみが出ます。

検査と診断

 典型的な症状があれば、口のなかの視診や触診により診断が可能です。通常結石は1個ですが、時には多発していることもあります。X線による検査、とくにCTが診断・治療に有用です。

治療の方法

 結石は自然に排出されることもありますが、多くの場合は手術が必要です。排出管でも出口に近い部位にできたものでは、口のなかで排出管を切り開いて石だけを摘出することにより容易に治療できます。この手術では、まれに摘出部に粘液嚢胞ができたり、結石が再発したりすることがあります。腺に近い部位や腺内にできたものでは、腺ごと石を摘出する必要のある場合がありますが、これを行えば再発することはありません。

病気に気づいたらどうする

 前述のような症状がある場合は、耳鼻咽喉科を受診するようにしてください。

(執筆者:谷垣内耳鼻咽喉科理事長 谷垣内 由之)

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谷垣内耳鼻咽喉科理事長 谷垣内由之

 耳下腺、顎下腺の急性炎症の多くはウイルスや細菌により生じます。ウイルス性の急性炎症で最もよく知られていて罹患例数も多いのは、流行性耳下腺炎、すなわちおたふくかぜです。おたふくかぜのウイルスが口や鼻から感染し、増殖したウイルスが血液を介して全身に広がり、唾液腺に達したものが耳下腺炎や顎下腺炎を引き起こします。

 症状が出始めると、全身倦怠感、発熱、頭痛などを伴い、多くは両側の耳下腺腫脹が起こります。腫脹は48時間で最もひどくなり、2~10日続きます。はれが取れるまでは他に感染させる可能性があります。診断には潜伏期間としての2~3週間以前に、感染者との接触があったかどうか、また周囲の流行状況の把握が重要です。唾液管開口部の発赤や、検査では血液アミラーゼ値の上昇などが参考になります。確定診断にはウイルスの抗体価の測定が必要です。

 細菌性の急性唾液腺炎は、抵抗力の落ちた全身状態の悪い人以外では、耳下腺や顎下腺そのものに何らかの異常がある場合に生じるのが普通です。耳下腺では、唾液管末端拡張症といわれる小児の病気や、シェーグレン症候群などの場合に発症することがあります。

 しかし、細菌性の急性炎症の多くは顎下腺に生じ、その原因のほとんどは唾石によるものです。顎下部が発熱、痛みを伴い強くはれ、ひどい場合は膿瘍化し、頸のほうまではれてしまいます。皮膚が赤くなることもあります。舌と下顎骨の間が赤くはれ、下顎正中内側にある唾液管の開口部からはうみが出ます。膿瘍化した場合は、切開してうみを出す必要があります。口のなかのはれた部分が破れて自然に石が出ることもあります。

 いずれにしても細菌性の急性炎症の場合は、抗生剤の投与が必要です。唾石では消炎後、唾石に対する手術治療が必要です。唾液が唾液管内にたまることが細菌感染の原因と考えられる唾液管末端拡張症などでは、細菌感染を予防する治療法として、唾液の排出を促すための1日1回の耳下腺マッサージがすすめられます。

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