出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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呼吸器系執筆者:浜松大学健康プロデュース学部心身マネジメント学科教授 竹内修二

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 呼吸器系とは外呼吸を行うための器官系をいい、これには鼻から気管支までの空気の出入りと発声に関する気道と、空気と血液との間のガス交換の場である肺とがあります。

気道の仕組み

咽頭…鼻腔、口腔、喉頭の後ろにあり、頭蓋底から始まり食道に続きます。鼻部、口部、喉頭部の3部に区別されます。咽頭は口腔から食道への食物の通路で消化管の一部であり、また鼻腔から喉頭への空気の通り道で、気道の一部でもあります。

喉頭…喉頭口に始まり、気管に移行するまでの内腔を喉頭腔といい、空気の通路であると同時に発声器でもあります。その壁は喉頭軟骨、靭帯、喉頭筋、粘膜からなります。

咽頭・喉頭の正中断面

声帯…喉頭腔の真中ごろの両側壁に声帯ヒダ(声帯)があり、左右の声帯ヒダの間を声門裂といいます。声帯ヒダと声門裂を合わせたものが声門です。声門を調節し声帯を振動させて、いろいろの声を出します。 

気管および気管支…気管は喉頭に続き、左右の気管支に分かれるまでの約10cmの細長い管です。気管支は肺門より肺に入り、樹枝状に分岐し肺胞となります。気管支には左右差があり、右気管支は左気管支に比べて、短く、太く、分岐より肺門に至る傾斜が急で、飲み込まれた異物は、右気管支に行くことが多いのです。

気管・気管支・肺

肺の構造

 肺は、心臓をはさんで左右に1個ずつあります。心臓がやや左に片寄っているため左肺は右肺より小さくなっています。肺の内側面中央は肺門といい、気管支、肺動脈、肺静脈、気管支動静脈、リンパ管、神経などが出入りしています。

肺の全景

 肺は、右が上葉、中葉、下葉の3つに、左は上葉、下葉の2つに分かれています。肺葉は多角形小葉の集まりからなり、その中を葉気管支が枝に分かれ、一定の肺区域に広がり、さらに分岐し肺胞となります。

肺の内側面

 胸膜は肺を直接包み、肺門部で折れ返り、胸腔内壁に密着する2枚の漿膜で、この2枚の膜の間に少量の漿液を分泌し、肺の拡張・収縮による肺と胸壁との摩擦を防いでいます。

 左右の肺にはさまれた胸腔の正中部を縦隔といい、心臓、胸腺、気管、気管支、食道、大動脈、大静脈、胸管、神経などの器官が存在します。

肺のはたらきと肺動脈・肺静脈

 肺のはたらきは呼吸に関連しています。鼻から始まった空気の通り道、気道が左右の気管支に分かれ、それぞれ左右の肺に入っていきます。

 肺門から肺の内部に入った気管支はどんどん枝分かれして細くなり、最終的には肺胞となります。

 肺胞の周りには毛細血管が網の目のように取り巻いており、呼吸によって取り入れた肺胞内の空気から、酸素を血液中に取り入れ、血液中の二酸化炭素は肺胞内に押し出し、"ガス交換"が行われます。

肺の構造(肺小葉)

 肺門には、気管支、肺動脈、肺静脈が出入りしています。肺動脈とは心臓から出て肺門から肺に向かって血液を流す血管で、肺静脈は肺から出る血液を心臓にもどす血管です。

 肺動脈と肺静脈とは、その管の中を通る血液の性状が異なっています。心臓にもどる血管、肺静脈中を流れるのは肺胞から酸素をもらったきれいな血液で、二酸化炭素を肺胞に出してしまう前の汚れた血液が流れているのは、心臓から肺に向かい、肺内に入ってきている肺動脈ということになります。

呼吸

 呼吸運動は、吸息と呼息の運動で肺胞内の換気を行う行為です。吸息は、外肋間筋や横隔膜の収縮により、胸腔を拡大して行われ、呼息は、内肋間筋の収縮、横隔膜の弛緩により、胸腔を縮小して行われます。

呼吸運動(胸腔の拡大と縮小)

胸式呼吸…主に肋間筋のはたらきによります。

腹式呼吸…主に横隔膜のはたらきによります。

胸腹式呼吸…胸式呼吸と腹式呼吸を併用した呼吸型。普通はこの型で呼吸しています。

呼吸数…健康な成人では、普通15~17回/分で、睡眠時には少なく、運動時には増加します。安静時に1回の呼吸で出入りする空気の量を1回換気量といい、約500mlです。

肺活量…最大に息を吸い、ついで最大に息を吐いたときの呼吸量をいい、成人男性では3000~4000ml、女性で2000~3000mlです。そのうち右肺は約55%、左肺は約45%を占めます。

肺容量の区分

呼吸の調節…一般には延髄の呼吸中枢により、反射的に規則正しいリズムで行われます。

 

*胸郭…胸腔を取り囲む、脊柱(胸椎)と肋骨と胸骨で形づくられた骨格。