出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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消化器系執筆者:浜松大学健康プロデュース学部心身マネジメント学科教授 竹内修二

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口腔・歯・食道

口腔…口は上唇、下唇(口唇)と頬に囲まれ、その内腔を口腔といいます。口腔内には、耳下腺、顎下腺、舌下腺の大唾液腺と、口唇や頬、舌などの粘膜組織に分布するたくさんの小唾液腺の導管が開口しています。

口腔

 口腔内に取り込まれた食物は、上下の歯と下顎の運動によって細かく噛み砕かれ(咀嚼)、唾液とよく混ぜ合わされて飲み下されやすい形になり、咽頭、食道を通過し、胃へ達します。

歯…歯は、上顎骨と下顎骨の歯槽突起に生えますが、歯槽突起は粘膜におおわれています。

 歯冠、歯頸、歯根の部位からなり、中心部には歯髄腔があります。歯の構成は、特殊な骨組織であるエナメル質、ゾウゲ質、セメント質からなっていますが、エナメル質は体内で最も硬い部分です。

歯の断面

食道…食道は、咽頭に続き、背柱の前面で気管と心臓の後ろを下行し、胃の噴門までの約25cmほどの管状の器官です。途中に3カ所の狭窄部があり、誤飲された異物が停留しやすくなっています。食道壁は粘膜、筋層、外膜よりなっています。

食道

 胃は、食道に続く噴門に始まり、幽門で終わります。容積は約1200mlで、消化器官中最も膨大したフクロ状の器官です。

 胃壁は内側から粘膜、筋層、漿膜の3層からなり、粘膜には多数のヒダと小さなくぼみがあり、胃液を分泌する胃腺を構成しています。

 胃内に入った食物(食塊)は、胃の蠕動運動によって、噴門部から幽門部へ送られます。蠕動は迷走神経によって盛んになり、交感神経によって抑制されます。

胃のつくり

 胃の内容物は、通常食後3~6時間で十二指腸へ移送されますが、炭水化物食が最も速く、次いで蛋白質食、脂肪食の順で長くなります。胃液は無色透明で、塩酸および消化酵素(蛋白質を分解するペプシン)を含んでいます。

小腸・十二指腸

小腸の運動…小腸は胃の幽門に続き、腹腔内を蛇行し、右下腹部で大腸に移行する6~7mの管状の器官。十二指腸、空腸、回腸に区分されます。消化と吸収に関して最も重要な部分です。

 胃から送られてきた食物(食塊)は、小腸の壁を形成する輪状の筋肉と縦に走る筋肉(平滑筋)の運動により、胆汁、膵液、腸液などの消化液と混和され移送されます。

 小腸の運動には、蠕動運動、分節運動、振子運動の3種がありますが、蠕動運動は主に内容物を口側から肛門側へ移送する役目、分節運動、振子運動は内容物と消化液を混ぜ合わせる役目を持ちます。

小腸の粘膜

十二指腸…十二指腸は胃の幽門に続く小腸の始まりの部で、C字型に湾曲し空腸に移行します。長さ25~30cmで、およそ指12本の幅があることから十二指腸と呼ばれています。内側の壁には総胆管と膵管の開口部である大十二指腸乳頭(ファーター乳頭)がみられます。

十二指腸

大腸・直腸と排便

大腸…大腸は小腸に続く消化管の終末部で、腹腔の周りを取り囲んで走っており、全長約1・5mあります。盲腸、結腸、直腸に区分されます。

大腸

盲腸…盲腸は回腸との連結部より下方の部分で、後ろ内側の壁から虫垂が出ています。

回盲部

結腸…盲腸の上端から始まり、右の脇腹に沿って上行結腸、肝臓と胃の下付近を行く横行結腸、左の脇腹に沿う下行結腸、左下腹部を蛇行するS状結腸に区分されます。

直腸…消化管の最終部で長さ約20cmあり、骨盤内の後面を下がり、肛門として終わります。肛門の後ろで触れるのが尾骨です。

大腸の消化吸収と排便…大腸は、小腸で吸収された残りのものから、前半分で水分および電解質を吸収して糞便を形成し、後半部で蓄積、排便します。大腸の運動は、蠕動運動と分節運動がみられますが、とくに分節運動が顕著です。

 糞便は下行結腸からS状結腸にたまり、これが直腸に入ると便意をもよおし、排便反射がおこって排便します。

膵臓のはたらき

 膵臓は腹膜腔の後ろにあり、後腹壁に接しています。膵臓は消化液を分泌する外分泌腺であり、またホルモンを分泌する内分泌腺でもあります。膵臓の大きな役割は膵液の生成・分泌で、膵液がないと円滑な消化は行われません。

 膵臓の外分泌腺から分泌された膵液は、中央を走っている膵管に集まり、総胆管と合流し、大十二指腸乳頭(ファーター乳頭)から十二指腸に分泌されます。

膵臓のつくり・総胆管と膵管の開口部

 膵臓の外分泌腺からは、1日に約500~1000mlの膵液が分泌されます。膵液は3大栄養素の消化酵素を含んでおり、弱アルカリ性で胃液にて酸性になった食物を中和し、消化酵素をはたらかせます。

 内分泌腺は、ランゲルハンス島(膵島)といい、その数は100万といわれています。ランゲルハンス島のβ細胞からは欠乏すると糖尿病となるインスリン、α細胞からは血糖を上昇させるはたらきのあるグルカゴンというホルモンが分泌されます。

肝臓のはたらき

 肝臓は横隔膜のすぐ下、腹腔内の右上部を占める、重さ約1200gの器官です。大部分が肋骨の下に隠れています。

 肝臓は胆汁を分泌して消化を助けるはたらきをしますが、そのほか胃や腸から戻ってくる血液中に含まれている栄養の処理、貯蔵、中毒性物質の解毒、分解、排泄、血液性状の調節、身体防衛作用などのはたらきをしています。

肝臓の前面

肝臓の下面

肝臓の構造

胆嚢…肝臓の下面につき、胆汁を貯えるナスの形をしたフクロです。肝臓で1日に500~1000ml分泌される胆汁は、胆嚢に貯えられ、十二指腸へ分泌されます。胆汁はアルカリ性で黄色を呈し、主な成分は胆汁酸、胆汁色素(ビリルビン)、コレステロールで、消化酵素は含まれていません。胆汁の役割は脂肪の消化吸収を間接的に促すことです。