細胞診検査執筆者:昭和大学病院医学部医学教育推進室教授 高木 康/昭和大学横浜市北部病院病院長 田口 進

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子宮粘膜をこすって細胞を取り、がん細胞がないかを調べる検査です。検査した日は入浴を控え、子宮体部の細胞診をした場合は抗菌薬を内服します。

医師が使う呼び方:「スメアー」=smear〈塗沫(標本)〉から

子宮がんの診断に重要な検査

 不正性器出血がおもな症状である子宮がんは、がんのできる部位によって子宮頸(けい)がんと子宮体(たい)がんに分類され、それぞれ性質が異なっています。

 発生頻度は頸がんの方が多く、およそ7:3の割合です。発生年齢は、頸がんの方が若く、近年は20歳代からの発症が急速に増えています。一方、がん細胞の型も、頸がんは扁平上皮がんが多いのに比べ、体がんはほどんどが腺がんです。

 がんの診断は、がん細胞をみつけることで最終的に診断するため、何らかの方法で細胞を採取しなければなりません。子宮の粘膜は、擦過(さっか)して(こすって)直接細胞をとることができ、この検査を擦過細胞診といいます。

 採取した細胞はただちにプレパラートに塗られ(塗抹(とまつ)という)、アルコールで固定され、染色して顕微鏡で検査し、がん細胞がないか否かを判定します。

頸部の検査は20~30秒、体部の検査は5~10分

 検査のための前処置はとくにありません。上着は脱ぎませんが、下着はすべて脱いで、婦人科用の検査台(内診台という)にあお向けになります。

子宮頸部の細胞診

 まず、触診と視診が行われます。次に腟鏡(ちつきょう)による診察を行い、このときに変化のある部位を綿棒で数回こすって細胞をとります。

 擦過後、消毒します。痛みはなく、20~30秒で終了します。

子宮体部の細胞診

 まず腟鏡を挿入し、子宮頸部を消毒します。次に子宮口に鉗子(かんし)をかけ、子宮の入口を少し広げます。少し痛みがあります。次に、細いブラシを子宮の中に入れ、子宮の内側(内膜)全体をこすって(掻爬(そうは)という)細胞をとります。このときも少し痛みと出血があります。

 掻爬後、腟部を消毒して5~10分で終了です。

出血が多いときはタンポンを

 検査後、出血はほとんどなく、にじむ程度ですが、当日はナプキンをあてておいたほうがよいでしょう。出血が多いときは、半日くらいタンポンを入れておきます。出血が持続している場合は、医師に連絡してください。当日のシャワーはかまいませんが、入浴は止めておきます。子宮体部の細胞診をしたときは、感染予防のために2~3日、抗菌薬を内服します。

がんが疑われたら組織診を

 細胞診でがんが疑われたり、がん細胞がみつかったときは、その組織の一部をとって顕微鏡で調べる組織診が行われます。子宮頸部組織診のときは腟鏡を使い、子宮内膜組織診のときは掻爬器を使います。

■子宮頸がんと子宮体がんのおもな特徴
子宮頸がん子宮体がん
好発年齢40歳代前後(閉経前に多い)50~60歳代(閉経後に多い)
危険因子ヒトパピローマウイルスの感染(多くは性交渉)閉経後、未出産、肥満・高脂肪食など
組織型おもに扁平上皮がんおもに腺がん
症状接触出血(性交時出血)、不正出血、帯下(おりもの)、疼痛など不正出血、帯下(おりもの)など

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疑われるおもな病気の追加検査は

  • 子宮頸がん・体がん

    組織診、超音波、腫瘍マーカー(SCC、CEA、CA125)、骨盤CT、骨盤MR、PET-CTなど
出典:四訂版 病院で受ける検査がわかる本 2014年7月更新版