アルカリホスファターゼ(ALP)執筆者:昭和大学病院医学部医学教育推進室教授 高木 康/昭和大学横浜市北部病院病院長 田口 進

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肝臓や胆道系の異常、骨肉腫などを調べる検査です。黄疸がおこると高値となり、かなり肝臓や胆道系が弱っています。

アルカリホスファターゼ(ALP)とは

 エネルギー代謝にかかわる酵素のひとつで、ほとんどすべての臓器や組織に含まれている。

医師が使う呼び方:「エイエルピー」=alkali-phosphatase(アルカリホスファターゼ)の略ALPから。その他、「アルカリピー」「アルホス」

アルカリホスファターゼ(ALP)の基準値

100~350U/l(JSCC 勧告法)

肝臓・胆道系の病気で黄疸がおこると高値に

 アルカリホスファターゼ(ALP)は、胆道系(胆嚢(のう)・胆管)の上皮細胞(毛細胆管)の細胞膜に多く含まれています。

 この上皮細胞が炎症や胆汁の流出低下などで破壊されると、血液中にたくさん出てきて高値になるため、肝臓や胆道の変化(結石や腫瘍)を調べる検査のひとつとして利用されています。

 胆汁うっ滞性肝炎や総胆管結石や腫瘍で黄疸(おうだん)がおこると、アルカリホスファターゼは基準値の数倍に上昇します。抗菌薬などの薬剤を飲んでおこる薬剤性肝炎でも、黄疸とともに数倍に上昇します。これは、胆汁うっ滞により胆管内圧が上昇することで、アルカリホスファターゼの合成が亢進するためです。逆流と合成亢進のために、異常に高値となるのです。

骨折、骨肉腫などでも高値に

 アルカリホスファターゼは、骨の病気でも高値になります。骨の成長にかかわる骨芽(こつが)細胞にも多く含まれているため、骨折や骨肉腫などで骨が破壊されたときや骨が新生されるとき(成長期)には2~3倍に上昇します。骨の病気では、黄疸がなく、肝障害を示す酵素(AST、ALT、LDHなど)の上昇もないことなどから、肝臓・胆道系の病気との区別ができます。

 悪性腫瘍が骨に転移した場合、転移したところの骨の持続性の強い痛みと、アルカリホスファターゼの上昇を認めます。成人の胃の切除などでおこる吸収不良症候群による骨軟化症でも、2~3倍の上昇になるため、悪性腫瘍や肝障害がないときは骨のX線撮影などのチェックも参考になります。

小児、妊娠時は2~3倍の高値に

 血清を用いて、自動分析器で測定します。基準値は、測定法により異なります。アルカリホスファターゼは、骨の成長でも上昇するため、小児では成人の2~4倍の値になります。また、胎盤でもつくられるので、妊娠時には2~3倍の高値になることがあります。検査当日の飲食は普通にとってかまいません。

高値のときはアイソザイムを測定

 基準値を超えていたら、血液検査、腹部超音波、腹部CTなどを行って原因を追究し、またアイソザイムも測定します。

 アイソザイムとは、同じ働きをするが分子構造が異なる酵素群のことで、アルカリホスファターゼはさらに分析するとALP1~ALP6の6つに分けられます。1と2は肝機能障害、3は骨疾患、4は妊娠によって増加し、5は小腸に多く含まれているため、アイソザイムを調べると、その上昇が骨によるものか肝臓、胆道によるものかなどが区別できます。

おすすめの記事

疑われるおもな病気などは

  • 高値

    肝疾患:急性肝炎、胆汁うっ滞性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝臓がんなど
  • 胆道疾患:結石、腫瘍など

  • 骨疾患:骨折、骨肉腫、転移性骨腫瘍、骨軟化症など

  • その他:小児期、妊娠末期、甲状腺機能亢進症など

出典:四訂版 病院で受ける検査がわかる本 2014年7月更新版