肝臓がん執筆者:昭和大学病院医学部医学教育推進室教授 高木 康/昭和大学横浜市北部病院病院長 田口 進

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 原発性肝臓がん(他からの転移によっておこるのではない肝臓がん)のほとんどを占める肝細胞がんは、慢性肝炎(B型、C型)や肝硬変を基礎疾患としてもっている患者に多く発生します(肝臓がん患者の約70%はC型、残りの約30%はB型)。これらの肝疾患のある人は、肝臓がんの高リスクグループと考え、継続的に検査を受けることが大切です。

おもな症状

 初発症状としては、食欲不振、全身倦怠(けんたい)感、発熱、腹部膨満(ぼうまん)感、肝機能障害など。無症状でも、各種の画像診断や腫瘍マーカーの結果から発見されることも少なくありません。

手順

①血液検査(肝機能検査)/腫瘍マーカー

②腹部超音波

③CT/MR/腹部(肝臓)血管造影/PET-CT

 検査項目はおもなものを示してあります。また手順は、症状やがんの状態などによっては順序がかわることがあります。

種々の血液検査と画像診断を活用

 何らかの症状があった場合には、まずスクリーニング(ふるい分け)のために肝機能検査(AST、ALT、γ-GT、ALPなど)やB・C型肝炎ウイルスの検査(HB関連抗原・抗体、HCV抗体)などを行います。

 腫瘍マーカーはAFPが80%程度、PIVKA-IIが50%程度で陽性になり、AFPは再発の指標として治療(手術)後にも定期的に測定されます。また、AFPは慢性肝変、肝硬変でも陽性になることが多く、近年ではAFPの分画を調べます。L3分画(レクチン3分画)は肝臓がんで特徴的に陽性となります。

 次に、腹部超音波、腹部CT、MRなどによって画像診断を行い、腫瘍の有無、良性か悪性か、大きさ、個数などを総合的に検討していきます。良性か悪性かの判定のためには、病変の一部を採取する生検(せいけん)を行うこともあります。そして、必要に応じて腹部血管造影を行い、腫瘍に栄養を与えている肝血管を確定します。

 腹部超音波は微小肝細胞がんの検出に有効で、1㎝程度でも発見が可能です。また、腹部血管造影(選択的腹腔動脈造影)は肝細胞がんと転移性肝がんの鑑別に有効です。

残された肝機能を損なわないように治療

 肝臓がんの場合は、慢性肝炎や肝硬変、閉塞性黄疸(おうだん)などの肝障害を伴っていることが多く、残された肝機能がどれだけあるかによって治療方法の選択がかわってきます。

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出典:四訂版 病院で受ける検査がわかる本 2014年7月更新版