出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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外陰ジストロフィー
がいいんじすとろふぃー

もしかして... 外陰がん  苔癬

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外陰ジストロフィーとは?

どんな病気か

 外陰ジストロフィーは、外陰部にかゆみを伴う白色の病変の原因疾患として代表的なもので、以前は白斑症や外陰萎縮症とも呼ばれていました。ただし、細胞の異型を伴うものと伴わないものとがあるため、前者を外陰上皮内腫瘍、後者を非腫瘍性上皮性疾患という範疇に入れ、外陰ジストロフィーという用語はあまり使われなくなってきています。

 外陰がん症例のなかには、細胞異型を伴わない白斑病変を有することも多いため、細胞の異型がなくても、白色病変には注意が必要です。

原因は何か

 外陰部の表層の細胞で角化の異常・ケラチンの増加が起こる、あるいはメラニンの脱出により脱色素が起こる、などの現象が原因になります。

症状の現れ方

 小陰唇、陰核(クリトリス)とその包皮、会陰部、肛門周辺に左右対称に平坦な萎縮性の白斑がみられたり(硬化性苔癬)、大陰唇に左右非対称に肥厚性でやや隆起した灰白色の白斑が生じたり(増殖性ジストロフィー)します。これらはかゆみを伴います。

検査と診断

 症状や肉眼所見のほか、組織の一部を採取する病理組織学的検査が行われます。異型の有無は、顕微鏡下で診断されます。

治療の方法

 病変が小さければすべて切除できることもありますが、CO2レーザーを用いて蒸散(照射した部分の細胞が瞬間的に煙を上げて蒸気になる)する治療や、副腎皮質ステロイド軟膏の塗布などが行われます。通常6週間以内で症状は消失し、再発もまれとされています。

(執筆者:東京大学医学部附属病院女性診療科・産科助教 織田 克利)

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東京大学医学部附属病院女性診療科・産科助教 織田克利

 外陰炎の治療で最も大切なのは、原因・誘引を除去することです。以前に同様の症状はなかったか、生理用品などの使用状況、薬剤の使用状況、全身的な症状の有無や精神的な不安・ストレスなど、なるべく自分なりに経過や症状を把握しておくようにします。

 一度かかってしまうといったん軽快しても、再燃・再発してくる疾患が含まれていることも忘れてはなりません。また、原因が異なっても症状としては、かゆみ、発赤、帯下異常など共通している疾患が多いため、時に診断が難しく、また、治療のための薬剤によりかえって病状が悪化してしまい、難治性になることもあります。外陰炎は外陰皮膚の疾患でもあります。難治性の時など、婦人科だけでなく皮膚科で診察を受けるのもひとつの方法です。

 外陰部に明らかな病変が認められないのに痛みを感じる場合が少なくないことから、近年、こうした痛みを、特発性外陰部痛(Vulvodynia)というひとつの疾患としてとらえる考え方が定着してきました。この疾患は、20~50歳の女性に多く、外陰部の不快感や焼け付くような痛みとして自覚されます。性交時に痛みを伴うことも多くあります。痛みの部位は外陰部全体に及ぶ場合と一部に限局している場合があります。

 治療法としては、特発性外陰部痛のすべてに有効なわけではありませんが、石鹸・香水など刺激のあるものを外陰部につけない、綿100%の下着を用いる、といった一般的なケアのほか、局所麻酔薬の塗布や性行為の際に潤滑剤を用いることなどがあげられます。

 また、ストレスなど心理的な側面も関係するため、十分なカウンセリングや精神安定薬の内服が有効な場合もあります。

 原因・病態がわからないことでさらに不安が増すことは好ましくありません。特発性外陰部痛はめずらしくないということを知っておくことが、精神的にも重要と思われます。

外陰ジストロフィーに関する医師Q&A