出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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水晶体脱臼、亜脱臼
すいしょうたいだっきゅう、あだっきゅう

  • 眼科
  • 診療に適した科

もしかして... 打撲  白内障

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水晶体脱臼、亜脱臼とは?

どんな病気か

 水晶体は、チン氏帯と呼ばれる細い糸によって眼球壁に固定されています。眼球を打撲したり、チン氏帯に細かい粉が蓄積する性質の人や、全身の病気と関係してチン氏帯が弱い人などでは、チン氏帯の一部が切れてしまうことがあります(亜脱臼)。すると、その部分で水晶体の支えがなくなるので、固定が不安定になります。この場合、白内障手術は難易度が高くなります。

 手術中に水晶体が眼底に落下することもあります。また、最初から全周のチン氏帯が切れていることもあります(脱臼)。どちらの場合も、完全に落下した水晶体とその周囲にある硝子体を取り除く必要が生じ、大掛かりな手術になります。眼内レンズも通常の入れ方ができないので、眼球壁に縫いつける方法で固定します。

(執筆者:大津赤十字病院眼科副部長 松本 美保)

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大津赤十字病院眼科副部長 松本美保

 人工水晶体ともいわれ、現在、ほとんどの白内障手術でこの眼内レンズが挿入されています。手術で水晶体という凸レンズを取ってしまうので、代わりの凸レンズが必要になり、眼内レンズができる前は、手術後は分厚い眼鏡やコンタクトレンズで視力矯正をしていました。

 眼内レンズは体のなかに長期間入れておくので、体が異物と認識しない材質で、かつ前房水という眼内の水の比重に近いものが考えられてきました。いろいろな段階をへて、ハードコンタクトレンズと同じ素材のポリメチルメタクリレートや、最近ではアクリルなどの材質で、折りたたんで入れて眼内で開くフォールダブルレンズが主流となっています。折りたたむことによって、手術の傷口を約半分に縮小できました。最近は適応範囲も広がり、赤ちゃんの白内障手術時にも挿入しています。いったん入れた眼内レンズは、普通取り出すことはありません。

 眼内レンズは視力を改善し、出し入れの必要がなく便利なものですが、老眼をなくすことはできません。ヒトの眼は若いころはいろいろな距離のものが、どれもはっきり見えます。これは、水晶体が軟らかくて厚みや直径を自由に変えられるため、見たいと思う距離に水晶体の焦点距離を合わせられるからです。加齢に伴い、水晶体の中央に徐々に芯ができてきます。その芯の部分は硬く、芯が大きくなるにつれ、水晶体はふくらまなくなっていきます。ふくらむと近くが見えるので、近くにピントが合いにくくなります。これが老眼です。

 眼内レンズは固体なので、厚さは変わりません。このため老眼と同じ状態になります。いくつかの距離でピントが合うように工夫された眼内レンズもつくられており、今後の進化が期待されています。