網膜芽細胞腫
もうまくがさいぼうしゅ
- 眼科
- 診療に適した科
網膜芽細胞腫とは?
どんな病気か
眼のなかにできる悪性の腫瘍で、ほとんどが5歳以下の乳幼児期に起こります。1万5000~2万人に1人の割合で発症するとされ、両眼性と片眼性があります。悪性の腫瘍ですから、視機能だけでなく命にも関わる病気です。
原因は何か
遺伝性と非遺伝性がありますが、どちらもがん抑制遺伝子であるRB遺伝子の異常です。遺伝性は両眼性が多くて発症年齢は低く、非遺伝性は片眼性が多くて発症年齢は高いという特徴があります。
症状の現れ方
自分で症状を訴えることがない乳幼児の病気なので、たいていは周囲の人によって気づかれます。最も多いのが白色瞳孔で、瞳が白色あるいは黄白色に輝いて見えることで気づかれます(キャッツアイ、ネコの眼と表現される)。次いで多いのが斜視です。斜視は片眼の視力が著しく低下して、両眼視が崩れることによって起こります。
検査と診断
多くの場合、眼底検査で典型的な腫瘍を認めるため、診断は簡単です。しかし、時に網膜剥離、強い眼内炎症、緑内障などを伴って、腫瘍を肉眼では確認できないこともあります。その場合、診断はそれほど簡単ではなく、超音波、X線、CT、MRIなどの画像診断を参考にして判断することになります。
治療の方法
治療にはさまざまな選択肢があり、治療に対する考え方も変遷を重ねてきています。
大きく分けて、眼球摘出術と眼球保存療法があります。眼球保存療法には放射線照射、網膜光凝固術(コラム)、冷凍凝固術、化学療法(抗がん薬の投与)、温熱療法などがあります。
腫瘍の大きさや数、眼外への浸潤の有無、両眼性か片眼性かなどにより治療方法が選択されます。最近の傾向としては、眼球摘出をなるべく避け、可能なかぎり眼球保存療法で治そうという考え方が強まってきています。
病気に気づいたらどうする
網膜芽細胞腫は、めったにある病気ではなく、予後も重大という、眼科のなかでもかなり特殊な病気です。一般の眼科医には手に余る病気ですから、専門的に扱っている眼科医に診断と治療を委ねるべきです。
病気を受け入れることができず、民間療法などに走って命を危うくするようなことだけは避けましょう。
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コラム網膜光凝固術の原理と適応
網膜光凝固術は眼科医がもつ最も強力な治療手段のひとつで、眼科の臨床では広く応用されています。網膜光凝固が広く普及したのは、光源としてレーザー光が実用化されたことが大きな理由です。レーザー光は波長がよく揃っているという特性があり、正確で効率のよい光凝固ができるようになりました。機器も年々改良され、格段に扱いやすくなっています。
網膜光凝固の原理は、照射された光が吸収されると熱が発生し、組織の熱凝固が生じるというものです。簡単にいえばやけどを作り、それが瘢痕化することでさまざまな治療効果を期待するということです。光を吸収するのは、通常、網膜の外側にある網膜色素上皮ですが(図45)、血管や赤血球を標的にすることもあります。治療効果には、網膜新生血管の予防と退縮、網膜出血・浮腫の吸収促進、水もれを塞ぐ、網膜と網膜色素上皮・脈絡膜の癒着を増強、脈絡膜新生血管の退縮などがあります。
網膜光凝固が行われるのは糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、中心性漿液性脈絡網膜症、加齢黄斑変性症、網膜裂孔、網膜剥離、未熟児網膜症、コーツ病、網膜血管腫など実に多種多様です。
なかでも糖尿病網膜症が最も多く、網膜新生血管(増殖網膜症)の予防・治療、網膜浮腫(黄斑症)の吸収促進と2通りの目的があります。網膜新生血管の予防・治療を目的とするのは他に網膜静脈閉塞症、未熟児網膜症などがあります。網膜浮腫・出血の吸収は網膜静脈閉塞症、コーツ病、網膜血管腫などでも目的になります。中心性漿液性脈絡網膜症では水もれ部分をピンポイントで凝固します。網膜裂孔、網膜剥離に対する光凝固は網膜の癒着促進が目的です。加齢黄斑変性症では脈絡膜新生血管の退縮が目的で、新生血管を直接凝固します。
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