出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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頭蓋骨線状骨折
ずがいこつせんじょうこっせつ

もしかして... 打撲

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頭蓋骨線状骨折とは?

どんな外傷か

 頭蓋骨に線状のひびが入った状態です。頭蓋骨は簡単にいえば脳を守るヘルメットの役割しかありませんので、問題はそのヘルメットにひびが入ったほどの外力が加わったことによる、脳に対する影響、すなわち頭蓋内(頭蓋骨よりも内側)の損傷の有無です。

原因は何か

 骨折部位への直接の衝撃により、硬い頭蓋骨が割れて線状の骨折になります。

症状の現れ方

 骨折部位に、打撲による疼痛、腫脹(こぶ)がみられます。

検査と診断

 頭蓋骨単純X線で骨折線は黒い糸状、あるいはすじ状に認められます。X線で頭蓋骨骨折と診断された場合は、頭蓋内損傷の有無を検査する必要があるので、頭部CTを行います。

治療の方法

 頭蓋内損傷を伴う場合は、それに対する治療が行われます。頭蓋内損傷を伴わなければ、骨折に対する特別の治療は必要なく、通常は自然に治ります。数カ月間は再度の頭部打撲がないように注意しますが、そのほかの日常生活にとくに制限はありません。

 ただし、一般的には受傷当日は経過観察のために入院が必要です。これは、受傷直後の頭部CTで異常がなくても、まれに頭蓋内出血が遅れて現れることがあるからです。

 最近の統計によると、意識障害が遅れて現れた場合でも、その83%は6時間以内とされているので、とくに問題がなければ1泊2日の入院が一般的です。高齢者や血液を固まりにくくする薬を医師から処方されている人では、さらに1~2日の経過観察入院が望ましい場合もあります。

(執筆者:慶應義塾大学医学部救急医学専任講師 並木 淳)

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慶應義塾大学医学部救急医学専任講師 並木淳

 頭部の基本的な構造は、脳が頭蓋骨という入れ物に入っている状態といえます(図2図2 頭部の解剖図)。頭蓋骨よりも外側を頭蓋外といい、頭部軟部組織がおおっています。頭蓋骨よりも内側を頭蓋内といい、脳が髄膜に包まれた状態で存在します。脳に対して影響を及ぼす頭蓋内の損傷の有無が、頭部外傷では問題になります。

図2 頭部の解剖図

 髄膜は外側から硬膜、くも膜、軟膜の3層構造になっています。硬膜は頭蓋骨の内側にぴったりと張りついている、厚紙のようなしっかりした膜です。くも膜は薄く弱い膜で、ピンセットでつまむと破れてしまいます。軟膜は脳の表面そのもので、はがすことはできません。くも膜よりも内側を、無色透明の脳脊髄液が満たしています。

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