肺挫傷
はいざしょう
肺挫傷とは?
どんな外傷か
肺挫傷は、胸部の鈍的外傷のなかで最も発生頻度が高いものです。肺組織に鈍的外力が直接作用し、または急激な肺胞内圧の上昇により、肺胞や毛細血管が断裂して引き起こされます。
通常は、外傷後数時間で症状が現れ、軽症のものでは3~5日で自然に治りますが、広範囲の肺挫傷では急性呼吸不全から死に至る場合もあります。
原因は何か
ほかの胸部外傷同様、交通事故や高所からの墜落、胸部挟圧(はさまれる)、暴行などにより発生します。
症状の現れ方
軽症の肺挫傷では無症状のことが多く、その存在に気づかないこともあります。一般的な症状は、胸部外傷に続発する呼吸困難、頻呼吸、血痰、チアノーゼ(皮膚などが紫色になる)などです。広範囲の肺挫傷では、低酸素血症に基づく意識障害や血圧低下を合併します。
検査と診断
診断は、前述の症状に加え、胸部の聴診、動脈血ガス分析(低酸素血症)、胸部X線、胸部CTなどから容易です。
治療の方法
治療の主なものは、安静臥床、酸素吸入、肺理学療法です。吸入療法により気道内の血液や気管支分泌物の喀出(咳とともに体外へ排出すること)を促すことも効果的で、無気肺(肺のなかの空気が著しく減少することから起こる呼吸障害)の予防に役立ちます。
酸素吸入を行っても低酸素血症が改善しない場合には、気管挿管(気管のなかへチューブを挿入して、気道を確保する方法)を行ったうえで人工呼吸管理が行われます。
急性肺傷害に関連する可能性がある薬
医療用医薬品の添付文書の記載をもとに、急性肺傷害に関連する可能性がある薬を紹介しています。
処方は医師によって決定されます。服薬は決して自己判断では行わず、必ず、医師、薬剤師に相談してください。
・掲載している情報は薬剤師が監修して作成したものですが、内容を完全に保証するものではありません。
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気胸、開放性気胸、緊張性気胸、血胸、血気胸などの際に行われる治療法です。胸腔内に胸腔ドレーンと呼ばれるチューブを挿入して、胸腔内に溜まった空気や血液を体外へ排出することで、虚脱(収縮)した肺を再び膨張させ、呼吸障害を軽くすることができます(図39
)。
チューブは通常、第5~6肋間の前~中腋下線から挿入します。胸腔内は、常に陰圧(外界よりも低い)を保っていなければ呼吸障害が現れるので、チューブの端は接続管をへて低圧持続吸引器に接続し、マイナス5~20cmH2Oの陰圧で吸引します。
チューブを挿入したら、空気漏出と血液流出の状態を経時的にチェックし、胸部X線撮影で胸腔内の変化を観察します。その結果、必要があれば、緊急開胸手術を行います。
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