出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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腹痛から考えられる主な病気

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腹痛から考えられる主な病気

◆ ①心窩部(みぞおちあたり)

◆ ②右上腹部(右季肋部)

症状 疑われる病気
・肝臓 A型急性肝炎
肝硬変
肝がん
アルコール性肝障害
うっ血肝
肝膿瘍
肝囊胞
・胆道 胆石症
胆道感染症
胆囊がん・胆管がん
・その他 胃・十二指腸、右腎臓、膵臓の病気など

◆ ③左上腹部(左季肋部)

症状 疑われる病気
・膵臓 急性膵炎
慢性膵炎
膵石症
膵がん
・その他 胃、脾臓、左腎臓などの病気

◆ ④へそ部

症状 疑われる病気
・腸 感染性腸炎
虫垂炎の初期
腸閉塞
・血管 腹部大動脈瘤
・その他 胃の病気など

◆ ⑤⑥右・左側腹部

症状 疑われる病気
・腎臓 腎梗塞
腎膿瘍
遊走腎
水腎症
腎がん
腎臓結石
・その他 尿管の病気など

◆ ⑦⑧右・左下腹部

◆ ⑨下腹部

◆ ⑩腹部全体

腹痛とは?

腹痛は、消化器、泌尿器、婦人科領域、血管、筋肉、腹膜など腹腔内にあるあらゆる器官の変化で起こります。それだけでなく心臓などの病気でも起こり、おそらく病気のなかで腹痛を主症状とするものが最も多いのではないかと思われます。
にもかかわらず、痛みの程度や部位、性質、随伴症状などで原因となる病気がある程度推測できるのが腹痛でもあります。

どこが痛いか?

痛みのほとんどは、異常のある臓器が存在する部位に現れてきます。
もちろん病気によっては、たとえば急性膵炎などのように、痛みがみぞおちあたりを中心に左上腹部や左背部、さらに左腰部にも現れることがあるものもありますが、多くは痛みの部位で推測することができます。
痛みの程度は激痛から鈍痛までさまざまですが、痛みが軽いからといって軽視しないようにしましょう。たとえば、胃がんで最も多い症状といえば、みぞおちあたりの鈍痛です。がんのほとんどは早期では症状に乏しいことが多いため、見逃しがちになります。しばらく鈍痛が続くなら、一度検査を受けるようにしてください。

緊急を要する腹痛

突然、激しい痛みを起こし、緊急に外科的処置が必要になる可能性をもった病気を総称して、急性腹症といいます。腹腔内臓器の閉塞や狭窄、破裂や穿孔(穴があく)、炎症、出血などにより発症します。
主な急性腹症を示します。以下に示すような症状が現れたら、すみやかに救急車を呼んで、救命手当を行ってください。救急車が来る間、全身状態に留意し、腹痛の部位や強さ、発症時期、随伴症状などをチェックし、医師に伝えられるようにしましょう。

虫垂炎

原因はまだ完全にわかっていませんが、虫垂のなかに便や粘液などがたまり、そこに細菌が感染して急性の炎症を起こす病気と考えられています。急性腹症のなかで最も頻度の高い病気です。
一般に、初めはおへその周囲の急激な腹痛で始まります。炎症が悪化するにつれて、痛みは右の下腹部へ移動していきます。
右下腹部をしばらく押さえてから急に手を離すと痛みがいっそう強くなります。また、飛び跳ねた時などにも痛みが強くなります。痛みを和らげるため、おなかを抱えて丸くなる姿勢をとることも特徴のひとつです。
痛みとともに発熱や吐き気、嘔吐なども現れます。腹部が全体に板のように硬くなってくるようなら、腹膜炎を合併して状態が悪くなっています。

腸閉塞(イレウス)

小腸や大腸に通過障害が起こり、食物などの腸の内容物が滞って肛門側に進まない状態です。
突然の激しい腹痛、吐き気、嘔吐が起こります。痛みは、強い痛みがきりきりと起こり、しばらくすると少し和らぐということを繰り返します。これを疝痛発作といいます。病状が進行すると、吐いたものが下痢便のような色になり、便のようなにおいがしてきます。
おなかが張り、やせた人では、おなかの外から腸がむくむくと動くのがわかることがあります。

急性胆管炎

多くは胆管が胆石によって塞がれて、そこに細菌が感染して発症します。
痛みは右上腹部に起こり、寒気を伴う発熱、黄疸が現れます。急性閉塞性化膿性胆管炎を引き起こすと、細菌の毒素が全身に広がり、意識障害や呼吸、脈が速くなるなどのショック症状が起こり、死に至ることもまれではありません。
そのほか、急性膵炎、急性腹膜炎、胆石症、尿路結石、胃がんや大腸がんなどによる出血、女性では卵巣茎捻転、子宮外妊娠などでも急を要する状態になります。