出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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完全大血管転位症
かんぜんだいけっかんてんいしょう

もしかして... 先天性心疾患

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完全大血管転位症とは?

どんな病気か

 心臓から出る大動脈と肺動脈が入れ替わって、左心室から肺動脈、右心室から大動脈が出ている状態です(図14図14 完全大血管転位症の1例)。全身からもどってきた血液がまた全身へ、肺からもどってきた血液がまた肺へと流れてしまうので、心房間か心室間、あるいは動脈管を介して血液が混ざる必要があります。頻度は全先天性心疾患の約8%です。

図14 完全大血管転位症の1例

原因は何か

 原因は不明です。胎児期の動脈幹という動脈の元になる血管の中に壁ができて大動脈と肺動脈に分かれますが、その壁の形成異常でこの病気になるとの説があります。

症状の現れ方

 出生後すぐにチアノーゼ(皮膚や粘膜が紫色になること)が出現します。静脈血と動脈血の混ざり具合によって、チアノーゼの程度が決まります。

検査と診断

 心エコー(超音波)で診断がつきます。動静脈の血液がどこで、どの程度混ざっているかを評価することも大切です。

治療の方法

 一般的には、大血管を本来あるべき位置関係(左心室-大動脈、右心室-肺動脈)に付け替える手術(ジャテン手術)をします。同時に動静脈血が混ざる経路であった穴を閉鎖します。手術の時期は生後2~3週以内が適当です。

 肺動脈の弁が小さいなどで大血管を入れ替える手術ができない場合は、人工血管を使ったり、心房のなかで血液を入れ替えたりして、静脈血を肺へ、動脈血を全身へ導くようにします。

病気に気づいたらどうする

 出生後のチアノーゼで大血管転位に気づいたら、すぐに小児循環器医と小児心臓外科医のいる病院で治療を受ける必要があります。

(執筆者:新潟大学医学部小児科学教室助教 長谷川 聡)

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