出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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統合失調症圏障害
とうごうしっちょうしょうけんしょうがい

もしかして... 統合失調症  双極性障害  うつ病

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統合失調症圏障害とは?

 統合失調症という病を考える時、これは単一の原因により生じる輪郭の明確な病気というよりも、多様な因子の重なりから生じるある種の脳の機能障害である、という立場があります。このような立場に立つと、統合失調症の周辺には、「明らかな統合失調症は発病していないものの、似たような症状を呈する病気の一群がある」という考え方が成り立ちます。

 実際、統合失調症の診断基準は満たさないものの、妄想や幻聴などの一部の症状があったり、人とのコミュニケーションのあり方が統合失調症に罹患した場合と似ていたり、といった特徴をもつ状態があり、何らかの共通性が脳の神経ネットワークの機能の問題などであるのではないかと推測されています。

 このような状態を示す病気と統合失調症をひとくくりにして「統合失調症圏障害」と呼びます。具体的には以下のような病名と状態がこの圏内に含まれます。

●妄想性障害

 明確な幻聴や「させられ体験(自分以外のものに支配・コントロールされている体験)」などの陽性症状、あるいは陰性症状はないものの、「自分の体が醜く、周囲の人々から疎んじられている」とか「自分が臭いと周囲の人から思われて、常に避けられている」と、不合理に確信した妄想状態が持続的に続きます。

●急性一過性精神障害

 2週間以内という大変短い期間のうちに、健常な状態から変化して、統合失調症にみられる陽性症状をいくつも生じるようになります。しばしば誰にでも理解可能な急性のストレス状況が、このような変化の前に先行しており、ストレスにさらされた脳の不適応状態として理解できます。2~3カ月以内に急速に回復し、障害を残さないことが一般的です。

●統合失調感情障害

 感情障害(双極性障害うつ病)と統合失調症の両方の症状が、病期のなかで同時に認められるものです。たとえば誇大的、過活動的になった躁状態のなかで、自分の考えが周囲に伝わるようになったなどの陽性症状を体験していたり、うつ状態に加えて「スパイに狙われている、テレパシーが聞こえてくる」などの不合理な体験を訴えます。いずれも一過性で、安定してくるとこのような症状はなくなります。

(執筆者:国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所社会復帰研究部長 伊藤 順一郎)

統合失調症に関連する可能性がある薬

医療用医薬品の添付文書の記載をもとに、統合失調症に関連する可能性がある薬を紹介しています。

処方は医師によって決定されます。服薬は決して自己判断では行わず、必ず、医師、薬剤師に相談してください。

・掲載している情報は薬剤師が監修して作成したものですが、内容を完全に保証するものではありません。

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国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所社会復帰研究部長 伊藤順一郎

 悪性症候群は、突然に高熱を発して筋肉が硬直し、意識障害を起こすこともある、時に生命の危機にさらされる抗精神病薬の副作用です。熱は40℃以上に達し、解熱薬が効きません。体全体をこわばらせ、発汗がひどく、意識障害のために口から栄養が摂れなくなります。腎臓や肝臓の障害を引き起こすこともあります。

 治療は、いったん精神科治療を中断しても、内科や集中治療室の力を借りながら、全身管理を行いつつ実施されます。

 本症のリスクファクター(危険因子)としては、①患者さんが精神症状のために、たいへん緊張し興奮した状態か、昏迷状態という緊張しながらほとんど動かない状態にある。②興奮・緊張や昏迷のために、水分が摂れず脱水気味である。また、運動量の割に食事も摂れていないため体が消耗している。③注射を用いて大量に投与されるなど、かなり急速に高濃度の抗精神病薬が体内に投与されている、などがあげられます。

 予防にあたっては、とくに急性期に脱水や栄養障害に配慮することが欠かせません。加えて、緊張がなるべくほぐれるような環境づくり、接し方の工夫にも意味があります。精神疾患といえども体を巻き込んでの病態であり、体の状態をみることの大切さを、この副作用は教えています。

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