出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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アレルギー
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アレルギーとは?

アレルギーとは

 アレルギーとは本来、体の外から入ってきた細菌やウイルスを防いだり、体のなかにできたがん細胞を排除するのに不可欠な免疫反応が、花粉、ダニ、ほこり、食べ物などに対して過剰に起こることをいいます。過剰な免疫反応の原因となる花粉などを、アレルゲンと呼びます。

 アトピー性皮膚炎気管支喘息花粉症を含むアレルギー性鼻炎などが代表的なアレルギー疾患です。理由ははっきりしませんが、日本を含む先進国で患者が急増しています。

アレルギーの原因

 アレルギーも生活習慣病などと同じ多因子遺伝性疾患で、複数の遺伝子が関与するアレルギーになりやすい体質をもつ人が、アレルゲンに暴露することにより発症する疾患と考えられています。遺伝子が短期間に変化することは考えられませんので、先進国でアレルギーが急増している主要な理由が環境要因であることは間違いないでしょう。

 たとえば、日本でスギの植林が盛んに行われたために、最近になってスギ花粉というアレルゲンが環境中に増え、スギ花粉症患者増加につながっています。また、気密性が高まった屋内でダニが増えやすい環境になっています。さらに、乳幼児期に細菌などが少ない清潔な環境にいると将来、アレルギー疾患にかかりやすくなる(衛生仮説と呼びます)ことも報告されています。そのほか、私たちの身のまわりに存在する化学物質の急増が関係しているとの指摘もあります。

 一方、アレルギー体質に関与する遺伝子も明らかになり始めました。

アレルギーに遺伝子が関与する証拠

 アレルギー疾患と診断された人の血縁者には、アレルギー疾患が多いことがわかっています。たとえば、日本人のスギ花粉症を対象にした疫学調査で3親等以内にスギ花粉症のいる人は51・7%、いない人は39・2%でした。また、双生児における気管支喘息の一致率は、一卵性双生児で20・0%、二卵性双生児で4・9%でした。

 一卵性双生児では、その遺伝子は100%一致していますが、二卵性双生児では兄弟姉妹間と同じで50%が一致しています。一卵性双生児の喘息発症の一致率が高いことは、遺伝子が気管支喘息の発症に関与していることを意味する一方、100%遺伝子が一致しているにも関わらず、発症の一致率が20%しかないことは、遺伝要因よりも環境要因が大きいことを示しています。

アレルギーの仕組みと関与する遺伝子

 血液中には白血球があり、そのなかにT細胞と名付けられたリンパ球があります。T細胞はTh1細胞とTh2細胞に分化しますが、ヒトの免疫反応はTh1とTh2のバランスの上に成り立っていると考えられています。

 Th1はインターロイキン2(IL-2)やインターフェロンガンマ、Th2はIL-3、IL-4、IL-5などのサイトカインという物質を作ります。アレルギー疾患の人はTh2がTh1よりも優位で、アレルゲンが入ってくるとTh2由来のサイトカインは、B細胞を活性化させ、そのアレルゲンに対する免疫グロブリンE(IgE)を作ります。

 病院でアレルギーの原因となる物質を調べることがありますが、これは血液中に存在するダニや花粉などに対するIgEの量を測定しているのです。このIgEがアレルゲンと反応すると、血液中の肥満細胞と名付けられた細胞からヒスタミンやロイコトリエンが放出されます。これが鼻の粘膜、皮膚、気管支に起こると、それぞれアレルギー性鼻炎アトピー性皮膚炎気管支喘息を発症するのです。

 現在、これらのアレルギーに関与する遺伝子を見つけだす研究が世界中で行われていて、どの遺伝子がアレルギー体質に関与しているのかが明らかになり始めました。

(執筆者:千葉大学大学院医学研究院公衆衛生学教授 羽田 明)

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千葉大学大学院医学研究院公衆衛生学教授 羽田明

 ひとつの遺伝子異常で発症する単一遺伝子病(メンデル遺伝病)のなかで、頻度の高いものを表にまとめました(表7表7 頻度の高い遺伝性疾患)。

表7 頻度の高い遺伝性疾患

・常染色体優性遺伝

 常染色体優性遺伝を示すアルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)欠損症は日本人では頻度が高く、42%程度の人が片方あるいは両方の染色体に遺伝子異常をもっています。

 この異常があるとアルコール分解産物である有害なアセトアルデヒトをすみやかに分解できないため、少量のアルコールでも顔が赤くなり、お酒に弱い体質になりますが、病気とはいえません。両方の染色体に異常がある人も7%程度いて、お酒をほとんど飲めない体質です。ALDH2欠損症は人種差が大きく、黄色人種だけにあり、白人や黒人ではみられません。

 家族性高コレステロール血症は、いわゆる悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を細胞内に取り込んで分解する効率が正常の人よりも悪いので、血中の悪玉コレステロール値が高くなります。通常、食事に注意するだけでは不十分で、コレステロールを下げる薬をのむ必要があります。治療をしないと動脈硬化が若いころから進み、心筋梗塞などを起こしやすくなります。

 骨形成不全症では、骨の強度を保つために必要なコラーゲン遺伝子に異常があるため、骨折しやすくなります。遺伝子異常がコラーゲン遺伝子のどの部分にあるかで症状は大きく違い、生まれてすぐ亡くなるほど重症な場合から、他の人よりも少し骨折しやすい程度までさまざまです。重症型の場合は、突然変異が原因であることがほとんどです。

 生まれつきの骨の病気のなかでは最も多いのですが、それでも1万人に2・2人程度です。

・常染色体劣性遺伝

 常染色体劣性遺伝病は人種的に日本人には少ないといわれています。たとえば、新生児期に病気の有無を調べるフェニルケトン尿症などは白人の10分の1程度です。

 先天性副腎過形成症は比較的頻度の高い疾患ですが、それでも白人集団の3分の1程度です。これは副腎皮質ホルモン合成に関係する遺伝子の異常で、ホルモン不足のために治療をしなければ命に関わることがあります。そのため、この疾患も新生児期に病気の有無を調べます。

・X連鎖劣性遺伝

 X連鎖劣性遺伝病は、通常、母親が保因者で男の子が生まれた場合、2分の1の確率で伝わり、発症します。

 色覚異常の大部分は青や赤の色の区別がつきにくいという程度で、病気とはいえません。男性の20人に1人に異常があるといわれています。最近では、不便を感じないような色を使うなど、社会を変えていくべきだとの意見が主流になってきました。

 グルコース6リン酸脱水素酵素欠損症は、アフリカ系アメリカ人の男性では10%が異常をもっていますが、日本人でも1000人に1人とかなり高頻度です。

 デュシェンヌ型筋ジストロフィーは進行性の筋力低下が起こる病気です。母親が保因者であることが多いのですが、突然変異で起こる場合もかなりあります。

 血友病では血液凝固因子を体内で作ることができないので、注射などで外部から補給し続けなければなりません。AとBは別の遺伝子ですが、両方ともX染色体上にあります。患者さんの子どもが男の子であれば異常は伝わりませんが、女の子には100%伝わります。しかし、女性の場合は発症しないので保因者になります。

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