専門医より推薦を受けた診療科目・診療領域

京都大学医学部附属病院は、複数の有名専門医(※)の間で「自分や家族がかかりたい」と推薦されています。
このページでは、専門医より推薦を受けた分野(科目、領域)の特色や症例数、所属している医師について取材・調査回答書より記載しています。 ※推薦、選定して頂いた有名専門医の一覧表

消化器内科

分野

消化器・一般内科

特色

96年に国立大学の中で最初に設立された消化器内科で、移植医療、炎症性腸疾患診療、消化器癌治療をはじめとして国内外でも最先端の医療を行っている。当院は、07年に全国の国立大学に先駆けて大学病院内にがんセンターを設置しているが、10年には新棟に癌診療にかかわる診療科を集約させ、当科も京都大学がんセンターの診療の中心を担っている。また、消化管悪性腫瘍の早期発見にも力を入れ、内視鏡治療を中心とした低侵襲治療を積極的に行うとともに、外科、放射線科、外来化学療法部とも緊密に連携して集学的がん診療を実践している。炎症性腸疾患治療では、肝移植で用いられる免疫抑制剤を国内に先駆けて治療に応用し、他の治療法を併用して良好な寛解導入成績をあげている。また、生体肝移植の世界的リーダーシップを担い、年間100例前後の本邦随一の肝移植手術数を誇る当院において移植治療の一端を担っており、移植の適応決定、術前管理や移植後の原疾患再発予防に努めている。当院の内視鏡部は、10年までに内視鏡および透視の機器、そして検査室を最新のものに一新させるとともに、リカバリー室も充実させ、消化器内科と連携して最新の診断・治療を行う体制を整えている。

症例数

09年の年間外来患者数延べ38,686人、入院患者数延べ17,880人である。入院病床は消化器内科44床、癌専門病棟10症を合わせて常時55人前後の入院患者がある。09年は、年間約8,500件の消化管内視鏡検査、約2,000例の内視鏡治療、約2,500件の腹部超音波検査を行っている

食道疾患=全検査室にNBI拡大内視鏡を導入し、咽喉頭癌・食道癌の早期発見に努力している。また、表在性食道癌に対して、積極的にESDを導入しているが、内視鏡治療を中心とした新しい治療戦略を臨床試験で検証している。進行食道癌に対しては、消化管外科、放射線科と協力して進行度に応じて放射線療法、化学療法、外科手術を組み合わせた集学的治療を行っている。肝疾患に合併した食道静脈瘤に対しては、内視鏡的に静脈瘤硬化療法や結紮療法を行い出血予防に努めている

胃・十二指腸疾患=胃十二指腸潰瘍では、潰瘍治療と併行してヘリコバクター・ピロリ菌感染診断を行い、除菌治療により潰瘍再発防止に努めている。早期胃癌では、ESDを積極的に行っている。手術不能の進行胃癌に対しては外来および入院で化学療法を積極的に行っている。胃原発MALTリンパ腫は、遺伝子転座検索を含めて病態を検討した上で、除菌療法、放射線療法、化学療法の治療法の選択を行っている

小腸・大腸疾患=診断困難な小腸疾患に対し、カプセル内視鏡と小腸内視鏡を組み合わせた検査を行い、診断・治療に成果をあげている。大腸腺腫・早期大腸癌に対しては、NBI拡大内視鏡による診断とポリペクトミー・粘膜切除による内視鏡治療を行っている。潰瘍性大腸炎、クローン病の炎症性腸疾患に対し、白血球除去療法、分子標的薬(インフリキシマブ)、免疫抑制剤(特にタクロリムス)などを組み合わせて治療を行うとともに、京都大学独自の多くの治験を行っている。さらに、患者の会や地域保健所と連携して外来患者のケアも行っている

肝疾患=ウイルス性慢性肝炎に対して、抗ウイルス薬やインターフェロンを用いた治療を行い、良好な成績をあげている。肝癌に対しては、ラジオ波焼灼術を中心とした局所療法、血管塞栓療法、抗癌剤治療を組み合わせた集学的治療に積極的に取り組んでいる。生体肝移植については、移植の適応決定や術前管理だけでなく、生体肝移植後の原疾患再発予防に努めている。なかでも、移植後C型慢性肝炎再発に対して抗ウイルス治療を行い、良好な成績を得ている

胆膵疾患=胆膵の悪性腫瘍に対して画像診断と並行してERCPを行い、ドレナージチューブ留置による細胞診で術前の癌診断率を向上させている。手術適応外の進行癌は、外来化学療法と協力して化学療法に力を入れている。生体肝移植後吻合部狭窄に対しては、インサイドステントにより良好な成績を得ている。

医療設備

ハイビジョンNBI・FICE消化管電子内視鏡(上部、下部)、胆膵内視鏡、超音波内視鏡(電子含む)、カプセル内視鏡、小腸内視鏡、腹部超音波/カラードプラ超音波装置、CT、MRI、PETなど。

「医者がすすめる専門病院 兵庫・京都・滋賀」(ライフ企画 2011年5月)

消化管外科

分野

消化器・一般外科

特色

当科は、05年6月に坂井教授の着任により再編成された新しい科であり、消化器外科の中で、食道、胃、大腸の悪性疾患、炎症性腸疾患および食道良性疾患を対象とした消化管に特化した科である。その特色は悪性疾患領域にも積極的に内視鏡下手術を導入し、体にやさしくかつクオリティの高い正確な手術を目指している点と、他科との連携による最先端の集学的治療に力を入れている点にある。手術に関しては食道・胃・大腸の3領域の「内視鏡外科技術認定医」を擁し、内視鏡外科領域におけるリーダー的役割を果たしている。高度に進行した難治性癌に対しては腫瘍内科医、放射線科治療医との連携による集学的治療を行っているが、10年6月の「京大病院がんセンター」の完成に伴って「集学的がん診療病棟」が開設され、より一層緊密な連携体制が整い、さらなる最先端治療の導入による成績向上を目指している。

症例数

08年1月から12月までの1年間に緊急手術も含めて419件の手術例があり、内訳は、食道手術38例、胃手術113例、大腸手術136例であった

食道癌=年間手術例数30前後。原則全例に内視鏡下(胸腔鏡と腹腔鏡)手術を導入し、特に胸部は腹臥位手術を導入することにより手術侵襲・術後肺障害を最小限にとどめる工夫を行っている。食道癌の治療方針は、「食道癌ユニット外来」で消化器内科医、放射線科医とともに治療前データの検討を行うことにより決定している。進行癌に対しては術前化学療法後に手術を施行し、高度進行症例は放射線化学療法による治療を行っている。5年生存率はStageI:88.8%、IIa:57.4%、IIb:60.1%、III:34.3%、IVa:38.1、IVb:27.4%

胃癌=年間平均手術例数100前後。早期癌のみならず進行癌に対しても臨床試験として腹腔鏡手術を導入しており、09年度は97例中86例を腹腔鏡手術で施行している。高度進行症例には術前化学療法を導入後に手術を施行することにより成績の向上を目指している。腹腔鏡下手術ではクリニカルパスを導入、術後3日目から経口摂取開始、術後10日頃の退院を目標としている。5年生存率はStageIA:99.1%、IB:93.2%、II:80.2%、IIIA:59.0%、IIIB:30.6、IV:9.5%

大腸癌=年間平均手術例数120前後。結腸癌、直腸癌ともに進行度に関わらず、積極的に腹腔鏡手術を導入し、手術侵襲の軽減と正確な癌の手術を心がけている。直腸癌では肛門に近い部位でも可能であれば、括約筋合併切除、超低位吻合を行い、人工肛門の回避を目指している。進行例に対しては、集学的治療として積極的な術前化学療法を行うとともに、転移性肝腫瘍に対しては肝胆膵移植外科と協力して積極的な外科切除を行っている。腹腔鏡下手術ではクリニカルパスを導入し、術後2日目から経口摂取を開始し、術後7~10日での退院を目標としている。5年生存率は、Stage 0:98.2%、I:90.6%、II:87.9%、IIIa:69.7%、IIIb:66.7%、IV:11.6%

潰瘍性大腸炎=年間平均手術例数10例前後。内科治療抵抗性や癌化例に対して、内視鏡下大腸全摘術を行い、低侵襲性とともに傷の小さな整容性も考慮した手術を行っている。手術は小腸嚢を作製し、1期あるいは2期分割手術を施行している

化学療法=大腸癌では、標準治療としてFOLFOX/FOLFIRIなどに加え、アバスチン、アービタックスなどの分子標的薬剤を早期から導入している。安全かつ確実な外来治療継続のために上腕ポートの埋め込みを行い、現在まで多くの患者さん治療を外来化学療法部と共同で行い近畿圏で有数を誇っている

臨床試験=多施設共同研究として「切除可能大腸癌肝転移症例に対する術前mFOLFOX6療法 Feasibility Study」「Lap RC: Clinical Stage0-I期直腸癌に対する腹腔鏡下手術の妥当性に関する第II相試験」「StageIII胃癌に対する術前TS1-CDDP併用療法の第II相試験」、JCOG試験として「臨床病期I(clinical-T1N0M0)食道癌に対する食道切除術と化学放射線療法同時併用療法(CDDP+5FU+RT)のランダム化比較試験」など。

医療設備

内視鏡下手術、MDCT、MRI、FDG-PET、PET-CT、NBI。

「医者がすすめる専門病院 兵庫・京都・滋賀」(ライフ企画 2011年5月)

外科(肝胆膵・移植外科)

分野

消化器・一般外科

特色

世界をリードする生体肝移植術をはじめ、肝切除術、膵切除術など肝胆膵外科領域における難易度の高い手術を日常的に多数行い、高い安全性を確保している。胆嚢摘出術、脾臓摘出術や肝部分切除術などにおいては、低侵襲手術として腹腔鏡手術にも積極的に取り組んでいる。また、診断治療過程において、消化器内科、放射線科、化学療法部、消化管外科など他科と連携し、内視鏡的診断治療、画像診断、IVR(Interventional Radiology)、化学療法、放射線治療を組み合わせ、個々の患者を多角的に評価し治療法を提示している。患者や家族に対して十分に説明し、理解(インフォームド・コンセント)を得た上で最適な治療法を選択している。肝胆膵・移植外科領域における医療看護の安全性をさらに向上させるべく、各種クリニカルパスが導入されている。消化器内科、放射線科、集中治療部、病理部、呼吸器内科、感染対策チームなど院内の各専門家と協力して周術期管理にあたっている。

症例数

09年の年間全身麻酔手術症例数は527例。疾患別内訳は、肝細胞癌98例、肝内胆管癌8例、胆道癌28例、転移性肝癌13例、膵癌55例、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)14例などであった。手術術式別内訳は、肝切除術125例、膵切除術82例、生体肝移植術は69例などであり、腹腔鏡手術は34例であった

肝細胞癌=肝切除、肝移植、ラジオ波焼灼療法、肝動脈塞栓化学療法、肝動脈注入化学療法など様々な治療選択肢があり、患者の肝機能、腫瘍の進展度に応じてこれらの治療を組み合わせている。具体的には、肝切除や局所療法困難症例における生体肝移植術、高度脈管侵襲を伴う高度進行肝癌に対する肝切除と肝動注の組み合わせによる集学的治療、肝癌の局在や大きさに応じて腹腔鏡下肝部分切除術をはじめとする低侵襲手術を行い、また肝切除後の再発予防治療を内科、外科、放射線科が密接な連携のもと行っている。96年から05年の肝細胞癌切除術後5年生存率は、StageI:66.4%、II:65.2%、III:49.2%、IVa:18%である

胆道癌=その複雑な解剖的位置などから専門的な知識、技術を必要とする疾患である。閉塞性黄疸を伴う症例が多く胆道ドレナージと感染のコントロールを行い、症例によっては術前に門脈枝塞栓術(PTPE)を行い、肝切除術後の肝不全を防止している。胆道癌の根治性を求めて肝切除+膵頭十二指腸切除も行っている。胆道癌の術後5年生存率は、それぞれ上中部胆管癌30.8%、下部胆管癌26.5%、乳頭部癌62.2%、胆嚢癌38.6%である

膵癌=難治性癌の代表であるが、血管合併切除を伴った拡大膵切除と補助化学療法により生存期間の延長効果が得られている。切除不能局所進行膵癌に対しても塩酸ゲムシタビンとS-1を主体とした術前補助化学療法により腫瘍縮小を図り、積極的切除を試みている。年間80例という日本有数の膵切除症例数であり、手術の安全性は確立し、過去5年以上、手術関連死亡は皆無である

生体肝移植術=90年以来1,250例を超える世界一の症例数を経験している。対象疾患は、末期肝疾患である肝硬変、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、胆道閉鎖症、代謝性肝疾患、劇症肝炎や肝細胞癌などである。いわゆる「ミラノ基準」範囲内の肝細胞癌患者にも保険適用が認められ、肝移植症例が増加している。「ミラノ基準」を超えた肝細胞癌に対しても、①他臓器転移がない、②主要脈管浸潤がない、③最大径5cm以下、④個数10個以内、⑤PIVKA-II 400mAU/ml以下の条件を満たせば肝移植を行っている。肝の一部を提供するドナーの安全性を最優先に考え、まず厳密な適格性評価を行い、術前MD-CTの3次元血管構築画像によるシミュレーションによりドナーの部分肝採取術式を決定している。血液型不適合症例においても、術前治療や免疫抑制剤投与法の改良により成績の向上が得られている。生体肝移植術後5年生存率は74.3%、このうち肝細胞癌症例の5年生存率は66.9%である。

医療設備

MDCT、MRI、FDG-PET、血管造影装置、電子内視鏡、超音波内視鏡、腹腔鏡手術装置、CUSA、顕微鏡手術装置など。

「医者がすすめる専門病院 兵庫・京都・滋賀」(ライフ企画 2011年5月)

呼吸器外科

分野

呼吸器外科

特色

原発性肺癌、転移性肺腫瘍、良性肺腫瘤などの肺腫瘍性疾患、膿胸、肺真菌症、肺結核・非定型抗酸菌症などの感染性疾患、縦隔腫瘍や重症筋無力症などの縦隔疾患、胸膜中皮腫、自然気胸などの胸膜疾患、巨大肺嚢胞症などの気腫性疾患など、呼吸器外科全般の手術を施行している。また重度呼吸不全に対する脳死肺移植実施施設の一つであり、生体肺移植の実施数は直近2年間では日本最多である。「自らが受けたい治療」の実践を目指し、手術を含めた侵襲的治療の実施にあたっては、治療選択肢についての十分な説明に基づく本人の承諾を大前提とし、書面によるインフォームド・コンセントを得ている。特に腫瘍性疾患については、積極的に外科的切除を考慮するが、手術適応外の紹介症例も多く、呼吸器内科、放射線科、外来化学療法部等とのカンファレンス(tumor board)を通して連携を密に取り、診断、集学的治療、手術、再発時の治療を最適の方法で時期を逸せず行えるよう努めている。また、終末期医療についても長期療養型ないしはホスピスを有する関連病院との連携を取って対応している。

症例数

最近の年間手術数は、全身麻酔症例で400例を超える。主な疾病の内訳は、おおよそ、原発性肺癌200例、転移性肺腫瘍50例、縦隔腫瘍30例、気胸30例などである

原発性肺癌=臨床病期I・II期は手術を原則とし、胸腔鏡(併用)下肺葉切除+リンパ節郭清を標準とする。完全鏡視下手術も行っている。早期だが手術に耐えられない症例は定位放射線療法等の手術以外の方法も勧めている。最大径20mm以下で腫瘍マーカー陰性の末梢型のIA期症例では呼吸機能温存を目的とした積極的縮小手術としての区域切除を行っている。5年生存率は腫瘍径10mm以下で99%、11~20mmで89%である。cN2のIIIA期については、超音波気管支鏡(EBUS)などで確定の後、術前放射線・化学療法を施行し手術を行っている。また隣接臓器浸潤のある症例でも耐術と判断すれば術前術後の化学療法・放射線療法+拡大手術による集学的治療を行っている。術後の補助化学療法は病理病期やADL(日常生活活動度)に基づき薬剤を選択し、積極的に施行している。I期ではUFT内服、II期以上ではシスプラチンを含む化学療法を行っている。切除不能III期~IV期については、呼吸器内科、外来化学療法部等と協力し、化学療法(+放射線療法)を施行している。同意を得られればEGFRなどの分子マーカーを測定し薬剤選択の一助としている

切除成績=2000年~2010年の根治的肺切除術約900例の解析では5年生存率は、病理病期IA期86%、IB期66%、IIA期46%、IIB期64%、IIIA期40%であった

転移性肺腫瘍=原発巣の大きさ、占拠部位、リンパ節転移の有無により、大半は胸腔鏡併用下の肺葉切除、区域切除ないしは部分切除を行っている。結腸・直腸癌の肺転移に対する手術が多く、5年生存率は60%である。その他食道癌、乳癌、頭頸部癌、肝臓癌、骨・軟部悪性腫瘍などの肺転移切除を行っている

縦隔疾患=胸腺腫では完全切除を基本とし、周囲臓器浸潤例では合併切除や周術期化学・放射線療法等の集学的治療を行っている。周囲臓器浸潤のあるIII期胸腺腫でも5年生存率86%、10年生存率71%、15年生存率67%の成績である。胚細胞性腫瘍に対しては泌尿器科・血液内科と協力し、集学的治療を行っている。重症筋無力症に対する拡大胸腺切除も積極的に胸腔鏡下で施行している

気胸=再発例・難治例に対して胸腔鏡下手術を行っている

肺移植=本院は全国で7カ所の脳死肺移植指定施設の一つであり、現在までに脳死肺移植8例、生体肺移植16例を施行している

その他=診断的縦隔鏡・胸腔鏡、気管支鏡(EBUSを含む)、気管支鏡下の治療(ステントを含む)、抗癌剤投与用静脈ポート挿入など適宜行っている。

医療設備

MDCT、MRI、血管造影、FDG-PET、各種シンチグラフィー、放射線治療、定位放射線治療、気管支鏡、超音波気管支鏡(EBUS)、各種レーザー焼灼装置、気道ステント、胸腔鏡、縦隔鏡など。

「医者がすすめる専門病院 兵庫・京都・滋賀」(ライフ企画 2011年5月)

心臓血管外科

分野

心臓血管外科

特色

成人心臓手術では定型的な手術に加えて、心不全外科手術を積極的に行っている。特に虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対する外科手術に力を入れている。

症例数

年間の成人開心術は成人心臓約120例、小児心臓約70例、血管約60例、ステントグラフト約50例。虚血性心疾患に対する冠動脈バイパスにおいては動脈グラフトを積極的に用いた多枝バイパスを基本としている。ハイリスク症例においてはOPCABも積極的に行っている。大動脈弁置換術では、近年増加している高齢者の重症大動脈弁狭窄症に対して生体弁を用いた弁置換術を行っている。僧帽弁閉鎖不全症に対しては90%以上の症例で僧帽弁形成術を行い、機能性(虚血性)僧帽弁閉鎖不全症に対しては乳頭筋間縫縮をともなう左室形成を組み合わせて良好な成績をあげている。また重症心不全治療に関しては補助人工心臓の導入、循環器内科との連携など総合的な治療を行い、現在心臓移植施設申請を準備中である。小児心臓疾患では、新生児に対する手術も含めて広く対応しており良好な成績をあげている。血管手術では従来の開腹手術や末梢血管手術に加えて、ステントグラフト治療にも積極的に取り組んでいる。下肢重症虚血に対する血管新生療法の臨床研究も行っている。

医療設備

エコー、CAG、MRI、CTなど各種画像診断装置を用いて専門スタッフが診断。人工心肺装置、補助人工心臓、PCPS、IABP、CHDFなど、心臓外科手術関連装備も充実。ICU、CCUに加えてハイケアユニットが2010秋稼働予定。

「医者がすすめる専門病院 兵庫・京都・滋賀」(ライフ企画 2011年5月)

腎臓内科

分野

腎臓内科

特色

当科では尿検査異常を指摘された方の精密検査から、腎炎・ネフローゼ症候群、二次性腎疾患(糖尿病・膠原病・薬剤などによる)の診断・治療や保存期腎不全の治療、末期腎不全に至った場合の的確な血液浄化療法の導入に至るまで、初期から末期腎不全まで一貫した診療を行っている。また腎疾患の病期に応じた患者さんへの指導も行っている。その一端としての腎不全教室は奇数月の第2・3・4火曜日に約2時間開催され、腎臓の働きから腎疾患の病態・検査・薬剤・透析を含む各種治療法・食事療法・医療福祉まで病気の進行度に合わせて、AV機器を積極的に利用して時間をかけて具体的に解説される他、質疑応答にも時間を割いている

★京大病院における当科の位置づけは、あらゆる種類の血液浄化療法を担当しているだけでなく、糖尿病科・膠原病科と協力して二次性腎疾患の診断治療を積極的に行っており、また腎疾患を有する患者さんの各種検査・手術・輸液・投薬に関する他科からの相談にも対応している。人工腎臓部は国立大学病院の中で最大規模を誇る。05年10月からオリジナルプログラムによる透析部門のコンピューター化がなされ、病棟主治医との連携を円滑に行い、かつ業務の効率化も図っている。また医師、看護師、臨床工学技士が協力して、末期腎不全患者に対する、血液透析と腹膜透析に関する説明、教育、内シャント作製(血管形成術)、透析の導入と導入後の生活指導まで一貫した腎代償療法導入期のチーム医療を行っている。透析導入後は通院可能な近隣の施設に紹介している

★また京大病院の特徴は生体肝移植が数多く行われていることである。当科は肝胆膵外科をサポートするかたちで生体肝移植に当初から関与してきた。血液型不適合例での術前の血漿交換療法をはじめとして、血液浄化の面で術後のサポートも行っている。このように生体肝移植をはじめ高度先進治療が安全かつ積極的に実施できるよう各診療科と緊密に連携して全身管理の一環としての血液浄化法を行っている

★対外的にも当科は地域における中核施設として、近隣の透析施設や他大学を含む医療施設との連携を重視している。透析患者の合併疾患(心血管疾患、悪性腫瘍など)の専門各科の先進医療に伴う透析療法や長期維持透析合併症(糖尿病合併症、二次性副甲状腺機能亢進症、透析アミロイド関連合併症、シャントトラブルなど)の患者を積極的に受け入れ、関連各科との連携の上で治療を行っている。近隣の施設との交流も盛んで、多くの研究会や分科会を主催および共同で運営している。

症例数

当科の年間入院症例数は09年が188人であるが、当科は13床しかないため、ほぼ満床に近いことが多い。過去数年の腎生検数は、腎炎および腎移植関連を合わせて年間約30~50例である。毎週木曜日に当院病理部と、移植腎では泌尿器科医師も加わって、共同で腎生検組織検討会を開いて組織診断と治療方針を決定している。IgA腎症に対する治療では扁桃腺摘出+ステロイドパルス療法については有効性の確立が証明されていない現時点では扁桃腺と腎炎の関係がある例以外は積極的には行っていない。主に投与量を少なくできるPozziらの方法にもとづいたステロイド療法を取り入れている

★09年の血液浄化療法では、血液透析が3,465回、血液濾過透析が624回、血漿交換が89回、二重濾過血漿交換療法が10回、LDLアフェレーシスが16回、腹水濃縮や白血球除去などが287回。また当部は認定施設として医師・専門ナース・医療工学技士への技術講習を定期的に行っている。約20数人のCAPD患者さんは専門外来において専門医師・専任看護師に原則月2回の診察・指導を受ける体制になっている。なお外来での血液透析は原則行っていない。

医療設備

人工腎臓部には血液透析装置12台、血液濾過透析装置10台、血漿交換装置2台、多周波数方式体脂肪計1台など。

「医者がすすめる専門病院 兵庫・京都・滋賀」(ライフ企画 2011年5月)

泌尿器科

分野

泌尿器科

特色

当科の特徴は、泌尿器腫瘍に対する集学的治療と21世紀の医療とされる生殖・再生・移植医療である。また、最先端の高度医療の推進も大きな特色といえる。特に泌尿器科腫瘍の集学的治療は、当科の長い歴史の中で最も得意とする分野でもあり、高度な先端治療技術と生活の質(QOL)重視の治療マインドをもって患者中心の医療を実践している。また、専門外来として前立腺癌高度先進外来、排尿障害・頻尿・尿失禁外来、前立腺生検外来、膀胱腫瘍外来、ストーマ外来、腎移植外来、男性不妊外来を開設して患者サイドの多様な要望に応えている。さらに、デイサージャリー部門において、積極的に日帰り手術(短期入院手術)を行い、患者の負担軽減と入院期間の短縮を図っている。

症例数

1日平均外来患者数は約100人。年間延べ約1,570人の入院患者を診療し、約600症例の手術を行っている

腎細胞癌=手術による早期癌症例の5年生存率は80%を超えている。09年度の時点で腎および副腎に対する体腔鏡手術は累積症例数460例を超えており、腎温存手術にも体腔鏡手術を応用している。また、遠隔転移を有する患者には免疫療法、分子標的薬を中心とする集学的治療を行い、予後の改善に努めている

膀胱癌=表在性膀胱癌に対しては経尿道的手術に加え、種々の膀胱内注入療法を併用し、膀胱温存を図っている。一方、浸潤性膀胱癌に対しては原則として膀胱全摘術を行っており、各病期において良好な5年生存率を得ている。膀胱全摘にも体腔鏡手術の手技を導入し、手術侵襲の軽減を目指している。当科は全種類の尿路再建術の経験と手技を有し、現在では腸管を用いた自然排尿型代用膀胱の造設術を積極的に行っている

前立腺癌=診断効率の向上により、外来レベルでの負担の少ない生検を実施している。早期前立腺癌に対しては、通常根治手術または放射線療法が選択され、体腔鏡下前立腺全摘術を積極的に行っている。また、放射線治療部門に高線量照射が可能な原体照射装置が導入されており、放射線科との共同で根治を目指した放射線治療も積極的に行っている。多岐にわたる前立腺癌の治療法を有効に組み合わせることによって、患者さんのQOLを落とさない治療方針を患者さんとの対話の中から選択している

体腔鏡下手術=当科では、90年代初めから他施設に先駆けて体腔鏡下手術を取り入れ、症例数としては本邦でのトップレベルにある。高度先進医療として実施してきた体腔鏡下前立腺全摘除術が06年4月より保険適用となった。また、膀胱全摘や尿路全摘にも応用を開始しており、近年単孔式手術にも取り組み始めた

男性不妊症に対する外科的治療=精索静脈瘤症例や閉塞性無精子症症例に対しては、外科的治療を積極的に行っている。また、閉塞性無精子症例に対して精路再建術では、国内外を通しトップクラスの成績を収めている

腎移植=88年以降の新しい免疫抑制剤の導入以降、移植成績は飛躍的に向上した。本院は、生体肝移植に代表される移植医療機関として高い評価を受けており、99年度には臓器移植診療部が設置され、心、肺、肝、膵、腎を含めた総合的移植施設としての充実が図られつつある。

医療設備

MRI、CT、PET、パワードプラ超音波診断装置、原体照射用放射線治療装置(前立腺癌治療用)。

「医者がすすめる専門病院 兵庫・京都・滋賀」(ライフ企画 2011年5月)

泌尿器科

分野

腎移植

特色

低侵襲手術と移植医療関連科との綿密な連携が特色。低侵襲手術として、体腔鏡(腹腔鏡)手術をあらゆるところで取り入れ、手術の前後には人工腎臓部(透析部)や腎臓内科、薬剤部と常に綿密に連絡をとり、移植前の全身管理や移植後の腎機能保持に極めて細やかなケアを行っている。

症例数

現在まで61例の生体腎移植を施行しているが、当院における他疾患治療必要性とのバランスから、最近では年間4例ほどの腎移植を行っている。最近の30例では、怠薬や他因死以外は2例を除き、全例移植腎が生着している。1例1例を大切に移植させていただくことにより、高い水準の移植腎生着率を得ている。04年から糖尿病性腎症に対する腎移植も内科と連携のもと開始した。総合病院の当院ならではの合併症のある患者からの腎移植なども積極的に行っている。ドナーからの腎採取は、03年より小さな傷から腎を取り出す体腔鏡手術によって行っているが、移植腎の機能は良好である。血液型不適合移植に必要な場合の脾臓摘除や、もともとの腎臓を摘除する必要がある時にも、体腔鏡下に行っている(のう胞腎3例)。当院にて新たに考案された灌流液(ET-Kyoto液)の使用、脾臓摘除を伴わない血液型不適合腎移植などの先進的医療も実践している。

医療設備

MRI、CT、パワードプラ超音波診断装置、IMRT放射線治療装置、PET、血漿交換、血液透析など。

「医者がすすめる専門病院 兵庫・京都・滋賀」(ライフ企画 2011年5月)

形成外科

分野

形成外科

特色

当科は77年4月に開設され、国立大学病院の形成外科としては2番目に古い。患者さんのQOLを重視し、治療に伴う犠牲を最小限に抑えることが、当科の一貫した治療方針である。唇顎口蓋裂、小耳症に代表される頭蓋顎顔面領域の先天異常と、熱傷や瘢痕・ケロイド・皮膚腫瘍・母斑などの皮膚外科が、開設以来の伝統的専門領域になっている。さらに近年は、手足の外科やマイクロサージャリー技術を用いた癌切除後の再建手術が急増している。また、高齢化社会に伴い、眼瞼下垂や難治性潰瘍の治療が増加している。難治性潰瘍の治療では、当科で開発した再生医療技術を用いた治療も行っている。デイサージャリーでの全身麻酔手術も行っており、完全な日帰りの場合と術後1~数日入院する場合を状況に合わせて対応している。レーザー治療は、血管腫や母斑など保険診療のみ行っている。

症例数

年間初診外来患者数は約1,200人、年間手術件数は約1,200件(うち、全身麻酔手術は約600件、局所麻酔手術は約600件)。また、中央手術室での手術件数は約500件/年、デイサージャリーは約700件/年である

★唇裂・口蓋裂手術は130件/年と多く、乳児期から成人するまで一貫した方針のもとに系統立てた治療を行っている。唇裂手術は筋層再建を重視した方法を工夫し好結果を得ている。また、口蓋裂による発音の障害(構音障害)に対しては言語聴覚士による専門の言語外来を設けている。さらに、耳鼻咽喉科、歯科口腔外科、また矯正歯科医との連携したチーム医療を行っている

★小耳症手術は約30件/年(初回手術は3分の1)あり、肋軟骨移植による再建手術を行っている。小耳症以外の耳介治療(先天異常)にも力を入れている

★瘢痕・瘢痕拘縮、ケロイドの手術は約150件/年あるが、瘢痕・瘢痕拘縮に関しては、なるべく植皮による採皮部の犠牲をさける治療を行なっている。そのため、手術デザインの工夫の他、当科で開発した『人工真皮』の応用やティッシュエキスパンダーの応用を積極的に取り入れている。また、ケロイドに関しては、当科の主要な研究テーマの1つでもあり、精力的に治療を行っている。放射線治療を併用した切除手術を標準にしているが、手術の代わりにステロイドの局所注射などの保存的治療も行っている

★顔面骨骨折は約40件/年であるが増加傾向にある

★新鮮熱傷は減少傾向にあるが「救急部」との連携による受け入れ態勢が整っている

★母斑、血管腫、皮膚腫瘍手術は約250件/年と非常に多い

★悪性腫瘍手術後の再建(皮膚癌・眼瞼悪性腫瘍・乳癌、頭頚部癌・その他)手術は約100件/年あり、その半数以上はマイクロサージャリー手術である。皮膚癌、眼瞼悪性腫瘍は主に当科で切除手術を行っているが、乳癌、頭頚部癌などは他科での手術後の再建手術を担っている。皮膚・皮下組織の再建にとどまらず、骨、筋肉、神経など幅広い再建手術を行っている。07年に乳腺外科が新設されて以降、乳癌切除後の乳房再建手術が急増している

★手足の手術は約50件/年あり、半数以上は先天性疾患である。機能的かつ整容的改善を目指している

★下腿潰瘍など難治性潰瘍手術は約50件/年となっている

★眼瞼下垂の手術は近年特に増加傾向にある。

医療設備

色素レーザー、Qスイッチルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、3次元デジタイザー、カラードプラなど。

「医者がすすめる専門病院 兵庫・京都・滋賀」(ライフ企画 2011年5月)

産婦人科

分野

産婦人科

特色

産婦人科のすべての診療分野の専門医により、高度医療のみならず、女性の生涯にわたるあらゆる悩みに対応し、中核病院として最善の治療を提供する。同じ疾患であっても、その症状や程度は患者さん一人ひとりで異なることを重視し、正確な病態診断と徹底した治療前カンファレンスを行い、個別化された治療を提案する。さらに患者さんの要望や社会的背景を最大限に考慮し、十分なインフォームド・コンセントを得て治療を行う。

症例数

病棟は婦人科53床、産科27床を有し、多数の悪性・良性腫瘍患者、ハイリスク妊娠妊産婦、不妊症患者が入院している

産科=分娩数は年間約360例。正常分娩は“自然に”をモットーにしている。重症妊娠高血圧症の他、糖尿病、自己免疫疾患、血液疾患などの内科合併症妊娠が多い。また4D超音波断層検査等を駆使して、胎児疾患や胎児の状態を詳細に評価している。関係診療科との連携も緊密で円滑。NICUとの緊密な連携のもとにハイリスク胎児・新生児を厳重に管理している。また母体搬送を積極的に受け入れている

婦人科=婦人科腫瘍は症例ごとに正確な病理組織診断を行い、病態に合わせた治療の個別化を図っている。症例によっては免疫組織染色法による検討を加えるため診断精度は極めて高い。またMRI、CT、PET-CTなどの画像診断を活用し詳細に術前評価するとともに、腫瘍病期診断や治療効果判定を高い精度で行っている。子宮頸癌は年間約80例。各病期において良好な5年生存率(Ia期100%、Ib期91%、II期79%、II期69%、IV期36%)を得ている。初期病変にはリープ円錐切除による低浸襲の保存療法を行っている。進行癌や特殊な組織型の頸癌には術前化学療法を行って予後の改善を図っている。広汎子宮全摘術には膀胱・直腸麻痺などの合併症の回避を目指して改良を加えており、現在ではほとんどの症例で回避できるようになっている。また自己血輸血を併用して通常の輸血を回避している。子宮体癌は年間約50例。細胞診、経腟超音波断層法、子宮鏡検査で早期発見に努めている。前癌病変である内膜増殖症も数多く、その場合特に正確な病理診断が重要である。若年女性の異型増殖症や初期体癌にはホルモン療法で子宮を温存し、妊娠例も認める。子宮体癌には、骨盤・傍大動脈リンパ節郭清も施行して予後の改善に努めている。卵巣癌は年間約90例。MRI、CT、PETなどの画像診断と腫瘍マーカーで正確に診断。徹底したサイトリダクション手術に骨盤・傍大動脈リンパ節郭清も施行している。術後は化学療法と適切な時期の二次手術も行っている。また若年女性の初期卵巣癌には妊孕性温存を考慮。子宮内膜症性嚢胞からの卵巣癌発生をカラードプラと造影MRIで早期診断を図っている。その他の悪性腫瘍(外陰癌、腟癌、卵管癌、腹膜癌など)も豊富な治療経験を有している。子宮内膜症や良性卵巣腫瘍に対しては低浸襲の腹腔鏡下手術を積極的に行っている。子宮筋腫はMRIなどの術前画像診断と術後の詳細な病理診断により子宮肉腫との正確な鑑別診断を行っている。治療は子宮全摘術だけでなく症例に応じて筋腫核出術や腹腔鏡下手術、子宮鏡下手術を選択している。また薬物療法や子宮動脈塞栓術なども個別に対応している

不妊症=効率的な外来スクリーニング検査と必要に応じて腹腔鏡検査などの特殊検査により、個々の患者の不妊原因を検索し治療の個別化を図っている。体外受精胚移植法はわが国において早い時期(86年)に導入したが、現在は重症不妊症例を中心に年間約75例施行し妊娠率は約20%と良好である

女性健康管理外来=多様な愁訴にじっくりと耳を傾け、思春期や更年期をはじめ女性生涯にわたる健康管理を行っている

外来手術室(Day Surgery Unit)=外来手術専用の施設を完備し、円錐切除術などの小手術を麻酔科管理のもとでより安全に行えるようになっている。日帰りまたは1泊入院での手術が可能である。

医療設備

4D超音波断層装置、カラードプラ、リープ円錐切除装置、腹腔鏡、子宮鏡、卵管鏡、体外受精・顕微授精・胚培養/凍結機器。

「医者がすすめる専門病院 兵庫・京都・滋賀」(ライフ企画 2011年5月)

眼科

分野

眼科

特色

①最高水準の眼科医療を提供=特に黄斑疾患・糖尿病網膜症などの網膜硝子体疾患や緑内障では、最新機器を積極的に導入し、正確な診断と効果的な治療の実践に力を入れている。加えて、神経眼科・ぶどう膜炎・網膜変性などの専門外来を設置し、専門性の高い眼科医療を行っている。②高度先進医療の積極的導入・開発=加齢黄斑変性に対する新規治療法を積極的に導入するとともに、新しい眼科診断機器の開発・評価、神経変性疾患に対する治療開発の取り組みなど、大学病院としての機能を果たすべく、高度な先進的医療の開発、その成果の世界に向けての発信に取り組んでいる。

症例数

外来総受診数約43,000人、眼科病棟ベッド数58床、年間入院手術件数約1,400件。手術では網膜硝子体疾患手術が半数近くを占めるのが特徴である

白内障手術=最新の手術装置を用いて、点眼麻酔下での小切開・無縫合超音波白内障乳化吸引術、インジェクター使用眼内レンズ挿入術を基本術式としている

緑内障=早期発見、早期治療により視神経障害を最小限にとどめるべく、種々の最新画像診断機器を駆使して、視神経乳頭、網膜を多角的に評価するようにしている。病型、病期、年齢などに応じて薬物療法、手術療法を選択する。濾過手術であるトラベクレクトミーではより合併症の少ない方向へ、また房水流出路再建術であるトラベクロトミーでは、より眼圧を下降させる方向へ術式の改良を試みている

当科の最も得意とする分野である網膜・硝子体疾患=網膜剥離の手術はもちろん、糖尿病網膜症・増殖性硝子体網膜症・加齢黄斑変性・黄斑円孔・ぶどう膜炎・眼内炎・眼内異物・眼球破裂などの難治性疾患の手術を数多く手がけている。低侵襲手術にも取り組んでおり、23G、25G経結膜小切開硝子体手術を早期から導入し、術後早期からの視機能の改善を獲得している

黄斑疾患=加齢黄斑変性・中心性漿液性網脈絡膜症・網膜上膜・黄斑円孔などの黄斑疾患にも、開発段階からかかわってきたフーリエドメイン光干渉断層計などの最新の機器を駆使し、得られた検査結果に基づく詳細な検討を行うことにより、症例ごとに、より安全で効果的な治療を行っている。手術療法、レーザー光凝固、光線力学療法(PDT)、抗血管新生薬などの最新治療はもちろん治験も積極的に行っている。疾患発症、進行の素因検索を進めており、新たな治療法への足がかりとなる結果が得られている。05年より、黄斑変性疾患を集約的に治療、研究するため、「黄斑疾患治療センター」が設立された

糖尿病網膜症・網膜静脈閉塞症=当院内科と連携し、全身的な管理を含めた診療を行っている。HRA2を用いた蛍光眼底造影、MP1、フーリエドメイン光干渉断層計など、最新の検査機器の導入で質の高い診断を行っている。これをもとに、症例ごとの視力予後を予測・判定することで、各症例に最適な治療方法の選択を行っている。主たる治療方法であるレーザー網膜光凝固、硝子体手術に加え、ステロイドのテノン嚢下注射、抗VEGF抗体・tPA硝子体注射など薬物療法も行っている。また黄斑浮腫に対して効果的な薬物治療の開発・臨床治験にも積極的にかかわっている

ぶどう膜炎=他科との連携による全身管理、各種特殊検査を併用しながら病型病状に応じたきめ細かな診療を行っている。硝子体混濁や黄斑浮腫に対してステロイドのテノン嚢下注射や硝子体注射、さらに硝子体内ステロイドのインプラントの臨床試験を実施している。当院ぶどう膜外来の最大の特徴は、薬物療法に加え、診断的のみならず治療的な硝子体手術を積極的に施行し、治療成果をあげていることである

神経眼科=障害を起こす脳神経麻痺を的確に診断し、その原因を画像診断を含め迅速に精査するとともに、原因疾患に応じて脳神経外科や神経内科と連携・協力してその治療に当たっている。詳細な眼科所見の評価と画像診断、全身検索などを迅速に行い、症例ごとに最もふさわしい治療を施している

網膜変性外来=最新の画像検査機器を駆使して、正確な診断はもとより、網膜変性疾患の新知見を得ている。定期的に検査を繰り返し行うことにより、疾患進行の把握を行い、現状の把握と将来の予後、また、進行中の治療開発研究も並行して、治療の実現を目論む。患者の精神面や背景も含めた診療のため、ロービジョンケアや福祉相談を充実させて生活のアドバイスを行っている

★その他、角膜、斜視、外眼疾患、未熟児網膜症、ERG、眼外傷など眼科全般を手がけている

★各スタッフが各分野において常に最新の知識を吸収し、これを日々の患者診察に還元するよう、週2回の症例検討会および抄読会・研究発表を行っている。国内外の学会での発表、国内外の雑誌での成果発表など、大学としての学術活動でも、国内外の眼科の先駆的役割を担っている

★紹介いただいた症例の経過などについての情報交換、術後の経過観察の相互協力、逆紹介など、地域の診療所との連携を重視し、定期的に教室主催の勉強会を催している。

医療設備

手術用顕微鏡、超音波白内障手術装置、硝子体手術装置、20G・23G・25G眼内内視鏡、眼内レーザー、手術用冷凍凝固装置、OCT(光干渉断層計)、3D-OCT、スペクトラルドメインOCT、フルオレセイン蛍光眼底撮影装置、ICG蛍光眼底撮影装置、HRA2蛍光眼底撮影装置、角膜内皮検査装置、角膜形状解析装置、多局所網膜電図、視覚誘発電位測定装置、超音波診断装置、ハンフリー自動視野計、ゴールドマン視野計、マイクロペリメトリー(MP1)、レーザー走査顕微鏡(SLO)、視神経乳頭解析装置、前眼部撮影装置、眼底カメラ、ヤグレーザー、ダイレーザー等、世界レベルでの最新機器、開発段階より参画している最新機器が揃っている。

「医者がすすめる専門病院 兵庫・京都・滋賀」(ライフ企画 2011年5月)

歯科口腔外科

分野

歯科口腔外科

特色

口腔顎顔面領域の疾患に対して診断と治療を行っている。また医学部附属病院であるため、他科との連携も密に取ることができ、全身を把握した上での治療が行える。また、他施設から多くの非常勤講師も招き医学教育を行い、診療に反映できる臨床研究・基礎研究にも重点を置いている。診療では一般外来と専門外来を設けて、各専門医が集学的治療を行っている。一般外来は、外来に診療チェア17台を設置し、主に重篤な他科疾患を有する患者に対する歯科治療を行い、歯科衛生士・看護師によるこれらの外来患者や他科も含めた入院患者の専門的口腔ケアを行っている。専門外来は顎矯正外科、顎関節症、組織再生インプラント、口腔腫瘍、口腔難治性疾患、睡眠呼吸障害、唇顎口蓋裂補綴、顎顔面補綴、顎顔面骨折を設けている。外来手術は、主にデイサージャリー(日帰り手術)診療部で全身・局所麻酔下に行っている。

症例数

年間の初診患者数は3,294人、疾患別症例数は埋伏歯・智歯618例、顎関節疾患424例、炎症355例、口腔粘膜疾患201例、良性腫瘍145例、嚢胞145例、神経疾患139例、外傷109例、顎変形症90例、悪性腫瘍58例、唾液腺疾患52例、先天奇形21例、その他2,402例であった。デイサージャリー1,082件、外来小手術件数は675件、入院患者数は280人、中央手術件数は280件であった

★顎矯正外科では、顎変形症疾患に対して、顎矯正専門外来スタッフによる術前矯正治療から外科矯正術まで一貫して治療を行っている他、地域の矯正歯科医院と連携して共同治療も積極的に行っている。上顎骨および下顎骨の単独あるいは同時移動術を行っている。主な手術法は、上顎骨に対してはLe Fort I型骨切り術、下顎に対しては下顎枝矢状分割術、下顎枝垂直骨切り術、下顎枝垂直矢状骨切り術を行っているが、顎関節症状を有する場合は、積極的に症状の改善を目的とした手術法を適用している。また重篤な顎骨劣成長を有する症例や広範囲の骨と軟組織欠損の場合は、仮骨延長術を積極的に適用し、口腔機能の改善を行っている。長時間の手術で多量出血が予測される場合は、計画的に自己血貯血で対応している。手術件数は39件

★顎関節症では、難治症例を主に扱っている。診断は一般臨床検査に加え、顎関節MRIおよび筋電図検査などを含めて総合的に行っている。最近では4次元MRI撮影を導入し、より詳細な顎関節機能障害の評価を行っている。治療法は保存的治療と外科的治療があり、保存的治療では、薬物療法、スプリント療法および理学的療法を行っている。効果が得られない場合は、外科的治療として、徒手整復術と関節洗浄療法の併用を行い、顎関節鏡視下手術、関節開放手術を順次選択している。当科での治療成績は、保存療法で約60%、残りの効果がなかった症例のうちで、関節洗浄療法で効果を得たものが約72%であった

★組織再生歯科インプラントでは、一般開業医では治療が困難な著しい歯槽堤萎縮症などの症例を扱っている。全症例中央手術室あるいはデイサージャリーにて手術を行い、口腔前提形成術や歯槽骨増量術も同時に行っている。また、当科と地域の病院や開業歯科医院と治療分野を分担して共同で最先端歯科医療を行うインプラント・リファーシステムを導入している。対象症例は、組織再生治療(骨増生・再生治療、粘膜再生治療、歯槽骨再生を目的とする歯周外科)、歯科インプラント埋入およびアバットメント連結、骨移植例や高圧酸素治療、歯科矯正治療用アンカーや仮骨延長インプラントの埋入などを行い、その他の治療は院外の連携施設での専門的治療を行っている。デイサージャリー手術件数は96件であった

★口腔腫瘍では、エナメル上皮腫や歯牙腫などの良性腫瘍、口腔前癌病変(白板症、紅板症など)、口腔前癌状態(扁平苔癬など)などを専門的に治療している。また、耳鼻咽喉科、形成外科、外来化学療法部との連携による難治性口腔腫瘍の専門的治療も行っている。デイサージャリー40件、中央手術件数は29件であった

★口腔難治性疾患外来では、舌痛症、非定形顔面痛(非定形歯痛)、味覚異常を伴う口腔異常感症、口腔乾燥症などを扱っている。治療は、専門医のカウンセリングに加え、苦痛を早期に取り除くことを目的として、薬物療法、東洋医学的アプローチ、レーザー治療など、個々の症状に専門医が対応している

★睡眠呼吸障害では、主に睡眠時無呼吸症候群による呼吸障害を対象としている。マウスピース(別名:無呼吸スプリントあるいは口腔内装置)を睡眠中に口腔内に装着して、息を通りやすくして治療を行っている。呼吸器内科や耳鼻咽喉科との連携をとり、睡眠検査による診断の後、この口腔内装置による治療を04年度より保険適用として治療している

★唇顎口蓋裂補綴では、形成外科との連携をとりながら、鼻咽腔閉鎖困難により哺乳障害を来している口蓋裂患児に、哺乳の改善や哺乳瓶ゴム乳首による粘膜潰瘍形成の防止目的でホッツ床等を作製している

★顎顔面補綴では、腫瘍の手術後や外傷などにより、顎顔面の骨・皮膚組織が欠損した症例の口腔機能と審美性を回復することを目的としている。特に歯科用インプラントによる精密補綴物の固定を行っており、精密補綴物は専門技工士が作製にあたっている

★顎顔面外傷では、交通事故、転倒・転落、作業事故、スポーツ事故などの当院救急部からの依頼での重症の外傷を数多く扱っている。上顎骨、下顎骨、頬骨の骨折で咀嚼機能障害を来しているものには積極的な外科的治療を行い、早期の咀嚼機能の回復を行っている。

医療設備

ヘリカルCT、MRI、超音波診断装置、パノラマX線装置、デンタルX線、脳磁図、筋電計、顎関節鏡視下システム、インプラントシステム、レーザーメス、熱メス、電気メス、顎骨形成術システム、リニアック、密封小線源治療室等、最新のものを備えている。

「医者がすすめる専門病院 兵庫・京都・滋賀」(ライフ企画 2011年5月)

血液腫瘍内科

分野

血液内科

特色

血液疾患全般において世界に通じる診療水準を維持しつつ、試験的治療法も積極的に行い、先進医療にも取り組んでいる。化学療法・放射線療法に同種造血幹細胞移植を積極的に組み込み、難治性疾患に対しても治癒を目指し、治療成績の向上を図る。また、診断や病態解析にも取り組み、分子レベルでの解析に基づき、各患者に最適の治療法を選択し、実施する。

症例数

09年の年間入院患者総数は380人で、90%以上は急性白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫等の血液悪性腫瘍である。09年の年間造血幹細胞移植実施数は、同種造血幹細胞移植32件、自家造血幹細胞移植3件。血液腫瘍患者に対して、年齢、各種予後因子を含めた病態を検討し、治癒を目指した最適な治療法を選択し、高齢者では骨髄非破壊的前処置によるミニ移植を積極的に組み込んでいる。悪性リンパ腫に対する化学療法は骨髄抑制が高度でない限り外来で施行しており、入院治療が必要な疾患患者でも治療期間の短縮に努めている。一方、化学療法、造血幹細胞移植での治癒が困難と判断される患者に対しては、QOLを重視した支持療法を主体としている

★急性骨髄性白血病の治療は化学療法が中心で、5年生存率は49%、寛解例の5年無病生存率は54%。急性リンパ性白血病は化学療法単独では治療成績に限界があり、多くは造血幹細胞移植を施行している。5年生存率は52%、寛解例の5年無病生存率は54%。慢性骨髄性白血病は外来にてグリベック療法を実施しており、グリベック抵抗性、不耐用例では新規薬剤を使用している

★骨髄異形成症候群は低リスク群では主に対症療法・支持療法を、高リスク群では造血幹細胞移植を含む積極的治療を実施している

★悪性リンパ腫は組織型、病期ごとに自家造血幹細胞移植を含む至適な治療法を設定しており、難治例には同種造血幹細胞移植を施行している。低悪性度リンパ腫の5年生存率は92%、中悪性度リンパ腫の5年生存率は69%、ホジキン病の5年生存率は89%である

★多発性骨髄腫にも積極的に自家造血幹細胞移植を取り入れ、サリドマイドやベルケードなどの新規薬剤を導入し、5年生存率は63%である

★中等症以上の再生不良性貧血には抗胸腺グロブリン・シクロスポリン療法を第一選択としているが、難反応性には同種造血幹細胞移植を施行している

★特発性血小板減少症、血友病などの出血性素因や血栓傾向を有する患者は外来治療中心であり、血栓止血の専門外来も設置している

★エイズ拠点病院であり、HIV患者の治療を実施

★診療にあたっては、すべての患者に十分な時間をかけて病名告知を行うことを原則としている。治療方針は、緊急時を除き、毎週開催される当科の全体会議での討議において決定し、患者本人および家族との話し合いの後に施行する

★輸血部、薬剤部とは十分な連携をとり、輸血や抗癌剤治療の副作用防止に努めている。プロトコールシートを用いた抗癌剤や薬剤部での無菌調剤は、複数の医師、薬剤師、看護師によるチェックがなされることから、医療事故防止の点からも有効である。末梢血幹細胞採取にあたって、体外循環に熟練した人工腎臓部、輸血部の協力を得て行っている

★関係各科との合同会議も随時施行され、診療水準の向上に役立っており、外来治療は外来化学療法部にて血液腫瘍に精通した専任医師により施行している。院内の各専門診療科とのタイムリーかつ綿密な連携により、全人的診療体制の構築を心がけている

★高度先進医療としての臨床試験にも積極的に取り組み、樹状細胞を用いた免疫療法を高齢者の急性骨髄性白血病7例に行い、全例に安全性を確認し、4例で腫瘍抗原に対する免疫反応および病勢の抑制が得られた。

医療設備

無菌室13床を含む血液病床43床。10年5月に新病棟積貞棟3階(無菌フロア)に移転。

「医者がすすめる専門病院 兵庫・京都・滋賀」(ライフ企画 2011年5月)

免疫・膠原病内科

分野

リウマチ・膠原病内科

特色

当科は関西圏の大学病院では数少ない膠原病を専門とする内科系診療科であり、近畿一円における膠原病・リウマチ性疾患についての診療および患者教育を行っている。膠原病は多臓器を障害する全身疾患であるため、大学病院の特色を生かし、他科と積極的に連携を取り、総合的な診療を行っている。当科では多くの基礎研究の成果を診療に還元することを目標としているが、その中でも特異的かつ感度の高い自己抗体検出法(RNA免疫沈降法)をルーチンに用いて、診断・治療法の選択・予後の推定に役立てている。この検査は、他科、他施設からも多くの依頼を受けている。

症例数

病床数30床、月間外来患者数約1,900例、うち新患患者約80例。外来通院中の全身性エリテマトーデス(SLE)約380例、関節リウマチ(RA)約680例、全身性強皮症(SSc)約190例、多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)約120例、混合性結合組織病(MCTD)約90例、ほか血管炎症候群(結節性多発動脈炎、大動脈炎症候群、ウェゲナー肉芽腫、MPO-ANCA関連血管炎など)、抗リン脂質抗体症候群(APS)、シェーグレン症候群、ベーチェット病、リウマチ性多発筋痛症、成人発症スティル病などのリウマチ性疾患・膠原病を診療。不明熱・多関節炎などで他院にて診断がつかない紹介患者にも対応

★RAは外来での薬物治療が中心で、新しい抗リウマチ薬(メトトレキサート、レフルノミド、タクロリムス)や抗サイトカイン療法である生物学的製剤(インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、トシリズマブ)の導入により、ここ数年でRAの寛解率が格段に改善している。ステロイドはできる限り使用しない方針だが、全身症状が強い場合や、他の薬剤が無効の場合に、適切な量で投与している。整形外科との連携やリハビリ指導も行っている

★SLEは入院の上ステロイド療法が基本となる。臓器病変と重症度に応じて、きめ細かいステロイド投与量を決めている。重症ループス腎炎や中枢神経ループスなど難治性の病態には免疫抑制薬(シクロホスファミドやアザチオプリン)を併用し、効果をあげている。さらに、ステロイド+免疫抑制薬に抵抗性のSLEに対し、抗CD20モノクローナル抗体製剤(リツキシマブ)を当院倫理委員会の承認のもと使用し、寛解導入に成功している。患者は若い女性が多く、日常生活の注意、治療方針、予後、合併症などを十分に説明している

★PM/DMは入院の上、悪性腫瘍の有無を確認後、重症度に応じて中等量~大量ステロイド療法を投与する。ステロイド抵抗例、再燃を繰り返す例では免疫抑制薬を積極的に併用し、長期にわたり病勢コントロールが可能である

★SScは限局型かびまん型かを見極めたうえで逆流性食道炎、難治性皮膚潰瘍、強皮症腎、肺高血圧症などに治療を行う。びまん型SScで進行性の間質性肺炎を認める場合は、免疫抑制薬を使用

★MCTDはSLE同様、入院でのステロイド療法が中心となる。障害臓器とその重症度により、免疫抑制薬の追加を行う。肺高血圧症に対し、エポプロステノール、ボセンタン、シルデナフィルを使用している

★シューグレン症候群は、眼科、口腔外科と連携し、他の膠原病の合併にも注意しながら治療を行う

★血管炎症候群では、障害臓器(肺や腎臓、皮膚など)、組織所見、検査所見により治療方針を決定する。ステロイド治療が原則であるが、免疫抑制薬の併用も多い

★APSでは、SLEや妊娠などの合併症がなければ、原則としてステロイドを使用せず血栓症の治療と予防を行う

★不明熱については、紹介患者も含め多数の患者を診療。膠原病のみでなく血液疾患や感染症も念頭におき、全身的な精査による確定診断を心がけている。

医療設備

特定機能病院であり、診断と治療に関するほぼすべての設備が整っている。

「医者がすすめる専門病院 兵庫・京都・滋賀」(ライフ企画 2011年5月)

精神科神経科

分野

精神科

特色

1904年に開設。精神病や神経症、さらに児童から老年期まで、精神医学とその近接領域にある疾患を幅広く対象とし、また、急性期から慢性期までの一貫した視点から、それらの診断・治療・研究を行っている。なかでも、神経心理学、児童精神医学、リエゾン・コンサルテーション精神医学、精神科リハビリテーション、司法精神医学の各分野においてそれぞれの専門医師が診療に携わっている。さらに、臨床心理士、作業療法士、精神保健福祉士と密な連携を取り、生物学的・心理学的・社会的な観点から総合的な診療を行っていることも特徴である。

症例数

09年度の当科の治療実績を示す

外来=年間外来初診患者数は1,219人、1日あたりの初診患者数は平均4.6人、全外来患者数は1日平均160.8人である。初診患者の内訳は、うつ病・躁うつ病などの気分障害(22%)とパニック障害や強迫性障害などの神経症性障害(26%)が多く、統合失調症(13%)、摂食障害(5%)、発達障害(4%)がそれに続く。専門外来には、児童外来、チック外来、摂食障害外来、てんかん外来、うつ病認知行動療法外来があり、最近では専門外来での診療を求めて、他の医療機関から紹介される患者さんが多い

入院=精神科病棟は一病棟60床のマーク式閉鎖病棟であり、8床の保護室と4床のハイケア・ユニットがある。年間の新入院患者数は277人、平均在院日数は68.8日であり、主な疾患は、統合失調症(68%)、器質性精神障害(14%)、気分障害(10%)、摂食障害(1%)などである

デイケア部門=精神科には大規模デイケアが併設されており、料理、音楽、スポーツなどのグループ活動、集団精神療法、ソーシャルスキルトレーニング、心理教育、社会復帰施設見学、就労支援、個人活動などのプログラムがあり、多様な年齢層と疾患に応じた治療型の精神科リハビリテーションを行っている。デイケアの登録者は常時60~70人あり、その内訳は、統合失調症57%、気分障害14%などとなっている。また,作業療法室を併設し、主に入院患者を対象として、ガーデニング、スポーツ、革細工、陶芸、料理、手芸などの個人活動を行っている。急性期の精神科リハビリテーションに重点を置いている

専門治療=18歳以下の児童・青年の広汎性発達障害、注意欠陥/他動性障害、チック障害などの疾患に対して、精神療法(プレイセラピーや箱庭療法を含む)、行動療法、薬物療法、親ガイダンス、地域関係機関との連携など、専門的な多面的治療を施行している。修正型通電療法は、遷延型うつ病や難治性精神病が対象。パルス波通電治療器を用いて、精神科医・麻酔科医・看護スタッフとの合同チームによりデイサージャリー室で施行、入院および通院で月に30~40件行っている。摂食障害は、外来での精神療法が中心、必要に応じて神経性食欲不振症では入院での行動療法、神経性過食症では4週間の食事療法を目的とした教育入院を行う。頭部外傷後遺症などの高次脳機能障害に対して、神経心理学的症状評価ならびに認知機能回復のためのリハビリテーションを施行している。

医療設備

MRI、CTなどの放射線検査、RI等の核医学検査、脳波、探索眼球運動検査、近赤外線分光検査などの生理学的検査、各種心理検査が可能である。

「医者がすすめる専門病院 兵庫・京都・滋賀」(ライフ企画 2011年5月)

放射線治療科

分野

放射線科

特色

当科では関係各科と連携して全身諸臓器の悪性腫瘍に対する放射線治療を行っている。当科の特色は「高精度放射線治療」であり、最先端の治療計画ソフトウェアと高精度の照射装置を駆使した3次元放射線治療〔脳腫瘍、肺癌、肝臓癌に対する定位放射線照射、および前立腺癌、頭頸部癌、脳腫瘍、食道癌、悪性胸膜中皮腫、膵癌等に対するIMRT(強度変調放射線治療)〕を精力的に行っている。使用装置も順次最新鋭機器への更新を行い、07年にはノバリスが、09年よりClinac iX、10年末にはMHI-TM2000といずれも最高水準の治療装置を導入して画像誘導を用いたさらなる高精度治療を目指している。また、食道癌や膵癌などの難治性癌に対する抗癌剤と放射線治療の同時併用療法や、ケロイド、バセドウ病など、一部の良性疾患に対する放射線治療も担当している。http://radiotherapy.kuhp.kyoto-u.ac.jp/を参照。

症例数

09年の新規放射線治療患者数は950例、照射件数は延べ1,142件であった。原発疾患部位別では、脳・脊髄97件(5%)、頭頸部65件(6%)、乳腺236件(21%)、肺・縦隔197件(17%)、食道91件(8%)、肝・胆・膵60件(5%)、胃・小腸・大腸44件(4%)、泌尿器176件(15%) 子宮・卵巣53件(5%)、造血系・リンパ腫94件(8%)、皮膚・骨軟部11件(1%)、その他の悪性腫瘍7件(1%)、良性疾患30件(3%)となっている

肺癌に対する定位放射線照射=当科では98年より本治療を開始しており世界でも先駆的な施設のひとつである。従来、早期肺癌に対する根治的な治療は手術以外に選択肢がなかったが、定位放射線治療の導入により、手術が困難な症例においても根治を目指すことが可能となった。当科の早期肺癌に対する本治療法の成績は3年の局所制御率が87%、全生存率が59%であった。手術不能症例が多く含まれていたにもかかわらず、きわめて良好な治療成績であり、従来の方法とは一線を画すものである。また標準手術が可能な症例については、当科が中心となって行った多施設共同臨床試験(JCOG0403)の結果が間もなく明らかとなる予定であり、今後の早期肺癌治療に大きな影響を与えるものとして国内外より注目を集めている

脳腫瘍に対する定位放射線照射=ガンマナイフと異なり非侵襲的に高精度のピンポイント照射やIMRTが可能であるノバリスを活用し、通常のラジオサージャリーの適応疾患以外に、手術やガンマナイフで加療困難な頭蓋低腫瘍などにも良好な成績が得られている。さらに、脳腫瘍に対しても積極的にIMRTを適応して、脱毛等の有害事象を軽減しつつより十分な腫瘍線量を確保するよう努めている

前立腺癌に対する短期内分泌療法併用根治的放射線治療=PSAスクリーニングの普及に伴い、治癒可能な前立腺癌の頻度は増加している。97年に泌尿器科と共同で根治的外部照射のプロトコール治療を開始し、00年からは強度変調放射線治療(IMRT)を導入、09年12月までの前立腺IMRTの累積治療患者数は509例と国内最大の治療経験を有している。5年の非再発生存率・原病生存率がB期例で80%・100%、C期例で60%・97%と良好な成績であり、IMRTではさらなる成績向上と有害事象の軽減効果が示されつつある

食道癌に対する化学放射線療法=食道癌は最も難治性の癌の一つであるが、我々は消化管外科および消化器内科・外来化学療法部と密接に連携して、この疾患に取り組んでいる。99年から08年の間に112例(StageIII以上が74%)の食道癌に根治的化学放射線療法を施行し、全体の3年・5年生存率は それぞれ30%、22%であった。食道癌のなかでも頸部食道癌は手術により音声を失う可能性があり、機能温存という放射線治療のメリットが大きい疾患である。しかしながら通常の放射線治療では技術的に不十分な放射線治療になることがしばしばあるため、それを克服するため08年より強度変調放射線治療(IMRT)を導入し、初期成績として良好な成績を得つつある

膵癌に対する化学放射線療法=当科では切除不能の局所進行膵癌(IVa期)を対象に術中照射や原体照射法を用いた化学放射線療法などを積極的に行っており、新規抗癌剤であるゲムシタビン塩酸塩が保険適用となった01年には、ゲムシタビン併用化学放射線療法についての臨床試験を開始した。少量ゲムシタビン併用化学放射線療法に対する第II相臨床試験では1年生存率74%、生存率の中央値が16.6カ月と良好な成績を示し、これまでにゲムシタビン併用にて80例を超える治療を行ってきた。現在、副作用を増強させることなく放射線の投与線量を高める方法としてIMRTを導入し、革新的な治療法の開発を行っている。

医療設備

治療計画専用CT、リニアック5台、192Ir小線源治療装置など。

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麻酔科(ペインクリニック)

分野

ペインクリニック

特色

当科は56年(昭和31年)に開設され、ペインクリニック外来の診療は68年(昭和43年7月)に開始された。本院各診療科と連携をはかりながら、さまざまな痛みで苦しんでおられる患者さんに安全で最適な治療を提供すること、難治性疼痛に対する新しい治療法を開発することを目指している。当科は日本ペインクリニック学会指定研修施設に指定されており、ペインクリニック専門医の養成も行っている。

症例数

09年度の新患数は院内、院外からの紹介患者を中心に256人、1日あたりの受診患者数は約50~70人である。治療の一貫性を保つため、原則として初診から再診まで同じ医師が担当している。年間入院患者数は33人(09年度)である

★対象疾患は、帯状疱疹に伴う急性期の激しい痛みや帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛や非定型顔面痛などの顔の痛み、四肢の複合性局所疼痛症候群(反射性交感神経性萎縮症やカウザルギー)、慢性腰下肢痛症、手術後の慢性疼痛症候群(乳房切除後疼痛症候群や開胸術後疼痛症候群等)、癌性疼痛等である

★治療は、神経ブロック(局所麻酔薬・神経破壊薬・高周波熱凝固法によるもの)、理学療法(近赤外線照射療法や低周波刺激療法)、薬物療法(イオントフォレーシスによる経皮的投与法を含む)を組み合わせることにより、個々の患者にあった方法で疼痛緩和をはかるように心掛けている。薬物の選択に際して、ドラッグチャレンジテスト(注射薬による薬剤の効果判定試験)も施行している。帯状疱疹による痛み等でリドカインのイオントフォレーシスによる経皮的投与が有効な症例には、薬剤部の協力により10%リドカインゲルを院内特殊製剤として使用し、良好な成績を収めている。外来で施行する神経ブロックは、星状神経節ブロック、三叉神経末梢枝ブロック、硬膜外ブロック、トリガーポイント注射等である。神経根ブロックや腰部交感神経節ブロック等、X線透視を必要とする神経ブロックは予約制で、月・金曜日の午後に放射線部清潔透視室において施行している(09年度は465件)。神経ブロックの内容によっては、ブロック後の安静保持と経過観察のため、入院していただくこともある。入院患者に対しては、個々の痛みに対応するため、患者自己調節鎮痛法(PCA)による疼痛緩和も導入している。癌性疼痛に対しては、院内の癌サポートチームが対応している。ペインクリニックからも2人のスタッフがチームに参加している。本院は、通常の分娩に対する無痛分娩には対応してないが、分娩によるストレスが母体にリスクとなりうる疾患を合併しているケースでは、産科と協力して持続硬膜外ブロックによる無痛分娩を施行している(09年度は7件)。

医療設備

当科が使用している外来スペースは、診察スペース、処置スペース、器材スペースを合わせると87 m2で、処置スペースには神経ブロック用の電動ベッドが7台、点滴用のベッドが4台(外科と共用)配置されている。麻酔科ペインクリニック患者用の入院ベッドは3床を有する。MRI、CT(以上放射線部)、超音波診断装置(超音波ガイド下神経ブロック用)、サーモグラフィー検査装置、電流知覚閾値検査装置(ニューロメーター)、知覚・痛覚定量分析検査装置(ペインビジョン)、レーザー式皮膚血流計、光線治療器(スーパーライザー)、低周波治療器(以上麻酔科処置室)等を有する。

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