[ADPKD(多発性のう胞腎)とは] 2014/11/28[金]

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患者と家族と医師が二人三脚で

 ADPKD(常染色体優性多発性のう胞腎)の患者さんは、日本では31,000人いるといわれており、約4,000人に1人が患っていると推定される希少疾患です。

 ADPKDは腎臓にのう胞が多数でき、腎臓が肥大するとともにその働きが徐々に低下していきます。原因はPKD遺伝子の異常であり、これらの遺伝子が作るタンパクに異常があると発症します。両親のどちらかから変異を持つPKD遺伝子を受け継いでいると、性別に関係なく遺伝します。のう胞腎になるPKD遺伝子を受け継ぐ確率は50%です。

 個人差はありますが、多くは30~40代まで症状が無く、加齢に伴い腎臓ののう胞が増加するにつれて腹部が張り、増大した臓器の重みによる腰痛や背部痛、血尿などが出現することがあります。また、次第に腎機能が低下し、慢性腎臓病(CKD)の一つの原因となり、70歳までに約半数が末期腎不全に至り、透析や腎移植が必要になるといわれています。

 のう胞は腎臓だけでなく肝臓にできることもあり、また全身の血管にも異常が起こり、脳出血やくも膜下出血の頻度が高くなることがわかっています。腎臓での合併症としては、のう胞出血、のう胞感染症、尿路結石などがあり、腎臓以外では高血圧や肝のう胞、脳動脈瘤がみられます。特に高血圧は、ADPKD患者の50~80%が合併しており、腎機能の低下がみられない時期から出現するとされています。

 ストレスをためず、塩分を控えた食事、規則正しい生活を心がけるなど健康的なライフスタイルを基本として、医師のアドバイスに従い状況に応じたベストな治療が行われてきましたが、これまで根本的な治療法は確立されていませんでした。しかし2014年に新しい治療が世界に先駆け日本で承認され、ADPKDの新しい治療法として期待されています。

 難病法が42年ぶりに改正され、対象疾患が増えました(2015年7月1日より306疾病)。ADPKDも費用助成が受けられる特定疾患に指定(2015年1月1日より)されたことで、みなさんの負担も軽減されます。治療をあきらめた方、中断している方は、専門医に相談してみてはいかがでしょうか。(2015年8月1日更新)

東京女子医科大学第四内科学 臨床教授 血液浄化療法科 兼任教授 土谷 健 先生

専門分野:臨床医学 CKD 水・電解質代謝異常、浮腫、多発性嚢胞腎
1982年 新潟大学医学部卒業、東京女子医科大学第四内科学入局 研修医~医療練士
1989年 米国エール大学分子細胞生理学教室 ポストドクトラルフェロー
腎の尿細管上皮の形態形成、分子生理機能をテーマに研究
1992年 帰国 東京女子医科大学第四内科学 助手
1999年 同 講師
2006年 同 准教授
2010年 同 臨床教授
2011年 血液浄化療法科 兼任教授

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