[特集] 2022/11/15[火]

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 2023年5月8日から新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが変わり、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行しました。一般生活の制限は緩和されつつありますが、今後も一定の感染が続くと予測されており、厚生労働省は、持続可能な感染対策の検討を呼び掛けています1)

第8波の流行では、死亡者数が過去最多となりました

 新型コロナウイルスのオミクロン株による第8波(2022年11月30日~2023年1月24日)の流行では、死亡者数は過去最多を更新しました。この原因として、おそらくは感染者数自体が増加していること(注1)や、高齢者の感染が増加していること(注2)などが考えられます2)

(注1)2022年の秋に感染者の全数把握が簡略化され、感染者数の正確な把握が困難になった。検査で陽性でも自分で登録しないケースなどもあるため、実際の感染者数は報告された数よりも多いと考えられる。
(注2)感染報告者のうち80歳以上の割合が第7波の約1.3倍に増加している。

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変異株(EG.5.1)が報告されています

 2023年2月、オミクロン株XBB系統から派生したEG.5が初めて報告されました。日本国内では、同年8月7日~8月13日に検出された検体のうち29%をEG.5系統の1つであるEG.5.1が占めており、今後その割合が上昇すると推定されています。ただし、重症度や感染性が上昇したという知見はなく、世界的に2023年9月以降に接種されている新型コロナのオミクロン株(XBB.1.5)に対応した1価ワクチン(以下、XBB.1.5対応ワクチン)の有効性が低下するという報告もありません3)

2023年の秋接種以降、新しい種類のワクチンが接種できます

 これまで3年間、年末年始に新型コロナが流行していることを踏まえ、厚生労働省は65歳以上の高齢者や5歳以上の基礎疾患のある人など、重症化リスクが高い人に対し、2023年秋冬接種のワクチンとしてXBB.1.5対応ワクチンの接種を推奨しており4)、9月20日より、生後6か月以上のすべての人を対象に接種が行われています。重症化リスクの高い人以外については、従来の「努力義務」や「接種推奨」の規定は適用されません5)が、接種機会は従来通り提供されます。

XBB.1.5対応ワクチンは、重症化予防効果のみならず、発症予防効果が期待できます6)

 XBB.1.5対応ワクチンは、非臨床試験(マウスを用いた試験)において、XBB.1.5に対して、これまでの2価ワクチンよりも高い中和抗体価を誘導することが報告されています。また、このワクチン接種で得られる中和抗体は、現在流行の中心であるオミクロンXBB系統の変異株EG.5.1に対してもXBB.1.5と同程度に効果があることが報告されており、現在の流行株であるオミクロンXBB系統に対して、重症化予防効果はもとより、発症予防効果も期待されています。

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日本小児科学会は、生後6ヵ月~17歳の小児へのワクチン接種を推奨しています

 乳幼児においても重症例が確認されており、基礎疾患がない乳幼児でも死亡する例があることから、2022年10月より、乳幼児接種(生後6か月~4歳)が開始されています。
 日本小児科学会では、国内小児に対するCOVID-19の脅威は依然として存在すること、感染および重症化を予防する手段としてのワクチン接種は有効であると考えられることことから、生後6か月~17歳のすべての小児への新型コロナワクチン接種を引き続き推奨しています7)
 現在、生後6か月以上を対象としたファイザー社のXBB.1.5対応ワクチン、6歳以上を対象としたモデルナ社のXBB.1.5対応ワクチンが接種可能となっています8)

後遺症を起こさないためにも、感染の予防が重要です

 新型コロナに感染した後、ほかに原因が明らかでないものの、疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛、咳、喀痰、息切れ、胸痛、脱毛、記憶障害、集中力低下、頭痛、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害などが続くことがあります。これらは感染していない場合にもしばしば訴えられる症状ではありますが、令和4年度に厚生労働省が行った大規模な住民調査で、感染された方がこれらの罹患後症状(いわゆる後遺症)を有した割合は、感染されていない方が何らかの症状を有した割合よりも2~3倍高いこと、成人よりも頻度は低いものの、小児にも後遺症が起きることが報告されています9)
 罹患後症状を予防するには、COVID-19に感染しないことが最も効果的な方法であり、手洗い等の手指衛生、換気、マスクの効果的な場面での着用などの基本的な感染対策をとることが大切です9)。

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Q. XBB.1.5対応ワクチンにはどのような副反応がありますか?
A. 安全性は、これまで使用されてきた従来型1価ワクチン(従来株)とオミクロン株対応2価ワクチン(従来株/BA.1またはBA.4-5)と同等であり、主な副反応として、注射した部分の痛み、頭痛、疲労、発熱等がありますが、現時点で重大な懸念は認められないとされています10)
Q. 追加接種では、どのワクチンが使用されますか。これまでの接種とは異なるワクチンを使用(交互接種)しても大丈夫でしょうか?
A. 令和5年(2023年)9月25日現在、追加接種においては、それまでに用いたワクチンの種類に関わらず、12歳以上の方はファイザー社及びモデルナ社のXBB.1.5対応ワクチンまたは武田社(ノババックス)の従来ワクチン(1価)、6~11歳の方はモデルナ社のXBB.1.5対応ワクチン、生後6か月~11歳の方はファイザー社のXBB.1.5対応ワクチンを接種することができます11)
Q. 新型コロナワクチン接種後、生活上で注意することはありますか?
A. ワクチンを接種した後は、接種部位の痛みが出たり、倦怠感、発熱、頭痛や関節痛などが生じることがあります。このような症状が出たときのために、できるだけ接種当日や翌日に無理をしないですむように予定を立てておくとよいでしょう。これらの症状は、たいてい数日以内で軽快することが分かっています。
ワクチンを受けた当日は、激しい運動や過度の飲酒などは控えましょう。接種部位については、清潔に保つよう心がけてください。
また、頻度としてはごく稀ですが、ワクチン接種後に、心筋炎や心膜炎を疑う事例が報告されており、特に若年の男性で、1回目よりも2回目の接種後において多く報告され、3回目接種後は2回目よりも低い傾向がみられています。ワクチン接種後4日程度の間に、胸の痛みや息切れ等の症状がみられた場合には、速やかに医療機関を受診してください12)
Q. 新型コロナワクチンは、後遺症の発症予防に有効ですか?
A. 現時点では明確な知見は得られていませんが、厚生労働省が実施した大規模な住民調査において、罹患後症状(後遺症)を有した割合は、未接種者と比べ、成人・小児とも感染前のワクチン接種者で低いという結果が出ています13)14)
Q. 追加接種は無料で受けられますか。
A. 初回接種と同様、追加接種においても、全額公費で実施するため、必要な接種については、無料で接種いただけます。接種が受けられる期間は令和6年(2024年)3月31日までです15)
  1. 厚生労働省. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る 新型インフルエンザ等感染症から 5 類感染症への移行について
    [https://www.mhlw.go.jp/content/001091810.pdf](2023年10月30日閲覧)
  2. 厚生労働省. オミクロン株による第8波における死亡者数の増加に関する考察[https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001062650.pdf](2023年10月30日閲覧)
  3. 国立感染症研究所.新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株 EG.5.1系統について[https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2551-cepr/12237-sars-cov-2-eg-5-1.html](2023年10月30日閲覧)
  4. 厚生労働省.新型コロナワクチン令和5年秋開始接種のお知らせ[https://www.mhlw.go.jp/content/001145121.pdf](2023年10月30日閲覧)
  5. 厚生労働省.今後の新型コロナワクチン接種について[https://www.mhlw.go.jp/content/001133026.pdf](2023年10月30日閲覧)
  6. 厚生労働省. 新型コロナワクチンQ&A「オミクロン株対応1価ワクチンの接種にはどのような効果がありますか。」
    [https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0176.html](2023年10月30日閲覧)
  7. 日本小児科学会.小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方[https://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=507](2023年10月30日閲覧)
  8. 厚生労働省. 新型コロナワクチンQ&A「令和5年(2023年)秋以降の接種では、ワクチンの種類は変わるのですか」
    [https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0172.html](2023年10月30日閲覧)
  9. 厚生労働省.新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&A[https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kouisyou_qa.htm](2023年10月30日閲覧)
  10. 厚生労働省. 新型コロナワクチンQ&A「オミクロン株対応1価ワクチンにはどのような副反応がありますか。」
    [https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0145.html](2023年10月30日閲覧)
  11. 厚生労働省. 新型コロナワクチンQ&A「追加接種では、どのワクチンが使用されますか。これまでの接種とは異なるワクチンを使用(交互接種)しても大丈夫でしょうか。」
    [https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0100.html](2023年10月30日閲覧)
  12. 厚生労働省. 新型コロナワクチンQ&A「ワクチン接種後、生活上で注意することはありますか。」
    [https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0043.html](2023年10月30日閲覧)
  13. 厚生労働省.「新型コロナウイルス感染症(COVID-1 9)の罹患後症状について (現状、研究報告、今後の厚生労働省の対応)」[https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001146453.pdf](2023年10月30日閲覧)
  14. 厚生労働省.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 罹患後症状のマネジメント 第3.0版[https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001159335.pdf](2023年10月30日閲覧)
  15. 厚生労働省. 新型コロナワクチンQ&A「追加接種は無料で受けられますか。」
    [https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0105.html ](2023年11月7日閲覧)
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