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脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患)の治療法執筆者:聖路加国際病院院長 福井 次矢

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脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患)とは、どんな病気でしょうか?

おもな症状と経過

 この項では非アルコール性脂肪性肝疾患を中心に扱います。アルコールが原因の脂肪肝についてはアルコール性肝障害をご覧ください。

 肝臓の細胞に異常な量の脂肪が沈着した状態をいいます。肝臓は正常であっても4~5パーセントの脂質(リン脂質)を含んでいますが、脂肪肝の状態では中性脂肪が多量に蓄積されています。自覚症状はあまりないため、健康診断などの血液検査で肝機能の異常を指摘され、そのために行った精密検査(超音波検査)で見つかることが少なくありません。高度な脂肪肝では腹部の張り、食欲不振、吐き気、全身倦怠感、疲れやすいといった自覚症状もみられます。

 アルコールや薬物が原因ではない脂肪肝を、非アルコール性脂肪性肝疾患(Non Alcoholic Fatty Liver Disease:NAFLD)と呼びます。NAFLDには①ほとんど病状が進行しない非アルコール性脂肪肝(Non Alcoholic Fatty Liver: NAFL)と②肝臓の破壊が進行し肝硬変、肝細胞がんを引き起こす非アルコール性脂肪性肝炎(Non Alcoholic Steatohepatitis: NASH)の2つの病態が含まれていることが明らかになってきました。NASHによる肝硬変から生じる肝細胞がんの割合は年間約2パーセント程度で、C型肝炎・肝硬変から発生するがんよりは低率でありますが、線維化などの病状が進んだ肝臓からはより高率にがんが発生するといわれています。

病気の原因や症状がおこってくるしくみ

 NAFLDのおもな原因は、肥満、糖尿病などです。脂肪や糖質の多い食事をとりすぎたりしていると、肝臓での脂質代謝に異常をきたし、中性脂肪が必要以上につくられて肝臓に蓄積されます。メタボリックシンドロームとの関連も指摘されており、NAFLDはメタボリックシンドロームの肝臓における表現型と呼ばれています。

 NAFLDでは肝機能が低下し、AST(GOT)、ALT(GPT)、血糖値、中性脂肪などの検査値が上昇する場合があります。肝硬変・肝細胞がんに至るNASHの原因については炎症が病状の進展に関与しているとの説がありますが、明らかな原因は特定されていません。

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治療法とケアの科学的根拠を比べる

治療とケア 評価 評価のポイント
食事療法を行う ★5 高エネルギーの偏った食生活がNAFLDの原因のひとつですので、エネルギー量を適正に制限し、栄養素の摂取比率としては脂質を制限する食事療法を行います。これらのことは非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。 根拠(1)(2)
全身運動による運動療法を行う ★5 ウオーキング(速歩き)、ランニング、水泳など、呼吸をしながら持続的に全身の筋肉を使うような運動(有酸素運動)が、脂肪を燃やすためには効果的です。また腕立て伏せ・ダンベル体操など筋肉に抵抗(レジスタンス)をかけるレジスタンス運動も有効といわれています。これらのことは非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。 根拠(3)(4)
薬物療法を行う ★5 NAFLDは、食事療法や運動療法が中心となりますがそれらの生活改善ができない場合、また、NAFLDの原因として2型糖尿病の関与がある場合などに、ビタミンEやチアゾリジン誘導体といった薬を投与することがあります。これらの投与により肝障害を示す血液データや脂肪肝が改善したという非常に信頼性の高い臨床研究があります。脂質異常症も合併しているときは、薬で脂質異常症の治療を行うこともあります。 根拠(5)(6)
原因となる病気があればその治療を行う ★5 肥満が原因のNAFLDであれば肥満の解消を目指して減量し、糖尿病なら食事と運動で病気のコントロールを良好にすれば、NAFLDは改善する可能性が高くなります。これらのことは非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。 根拠(2)(7)

よく使われる薬の科学的根拠を比べる

糖尿病を合併していない場合

主に使われる薬 評価 評価のポイント
ユベラ(ビタミンE) ★5 ビタミンEは非常に信頼性の高い臨床研究によって効果が確認されています。 根拠(5)

糖尿病を合併している場合

主に使われる薬 評価 評価のポイント
アクトス(チアゾリジン誘導体:ピオグリタゾン塩酸塩) ★5 チアゾリジン誘導体は非常に信頼性の高い臨床研究によって効果が確認されています。 根拠(6)

総合的に見て現在もっとも確かな治療法

食事療法、運動療法を組み合わせた減量が有効

 NAFLDの原因にはさまざまなものがありますが、もっとも多いのは、肥満、糖尿病などによるものです。また、糖尿病はNAFLDの増悪・肝臓からの発がんに密接に関連することが知られており、その良好なコントロールはNAFLDの増悪抑制のためにも重要です。

 したがって、肥満や糖尿病によるNAFLDの場合には、肥満や糖尿病に対する治療と同様に食事のエネルギーを制限し、脂肪分の摂取を減らして積極的に適度な運動を行うことで減量することが有効です。減量は急激な減量は避け、週0.5~1キログラム程度、当初の体重より5~10パーセント程度が目標です。

 食事療法、運動療法などに取り組んで適正な体重に戻せば、最終的には肝臓の細胞に沈着した異常な脂肪が消失し、炎症も改善すると考えられています。ただし肝硬変まで進行した肝臓の場合には完全な回復につながるかは疑問です。

薬物療法も効果がある

 病状に応じたビタミンEやチアゾリジン誘導体の投与も行われます。また、NAFLDは心血管疾患のリスクが高いことも知られており、高血圧や脂質異常症に対する治療も考慮する必要があります。

肝硬変に至ったNASHでは病状にあわせた検査、治療を行う

 肝硬変に至った場合にはほかの肝疾患と同様、病状に応じた治療が必要となります。また、肝細胞がんを早期に発見するための定期的な血液検査や、腹部超音波・CTなどの画像検査が必要となります。

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根拠(参考文献)

  • (1) Okita M, Hayashi M, Sasagawa T, et al. Effect of a moderately energy-restricted diet on obese patients with fatty liver. Nutrition. 2001;17:542-547.
  • (2) Park HS, Kim MW, Shin ES. Effect of weight control on hepatic abnormalities in obese patients with fatty liver. J Korean Med Sci. 1995;10:414-421.
  • (3) Ueno T, Sugawara H, Sujaku K, et al. Therapeutic effects of restricted diet and exercise in obese patients with fatty liver. J Hepatol. 1997;27:103-107.
  • (4) Lavine JE. Vitamin E treatment of nonalcoholic steatohepatitis in children: A pilot study. J Pediatr. 2000;136:734-738.
  • (5) Saibara T, Onishi S, Ogawa Y, et al. Bezafibrate for tamoxifen-induced non-alcoholic steatohepatitis. Lancet. 1999;353:1802.
  • (6) 石岡達司, 難波次郎, 三浦寛人, 他. ベザフィブレート(ベザトール(R)SR錠)の過栄養性脂肪に対する臨床的検討. 新薬と臨床. 1995;44:59-63.
  • (7) 古賀俊逸, 入佐俊武, 宮田康司, 他. 肝機能検査成績と超音波所見により検討した脂肪肝51症例の臨床経過, EPL (polyenephosphatidylcholine)投与症例における成績. Progress in Medicine. 1991;11:1891-1899.
  • (8) Pares A, Caballeria J, Bruguera M, et al. Histological course of alcoholic hepatitis. Influence of abstinence, sex and extent of hepatic damage. J Hepatol. 1986;2:33-42.
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  • (10) Hellgren M, Hagnevik K, Robbe H, et al. Severe acquired antithrombin III deficiency in relation to hepatic and renal insufficiency and intrauterine fetal death in late pregnancy. Gynecol Obstet Invest. 1983;16:107-118.
出典:EBM 正しい治療がわかる本 2003年10月26日初版発行(データ改訂 2016年1月)