2016年改訂版 2003年初版を見る

マイコプラズマ肺炎の治療法執筆者:聖路加国際病院院長 福井 次矢

つぶやく いいね! はてなブックマーク GooglePlus

マイコプラズマ肺炎とは、どんな病気でしょうか?

おもな症状と経過

 マイコプラズマという微生物によっておこる肺炎です。この病気は、発熱を伴って急激に発病することが多く、6割ほどの人で発熱は38度以上になります。それ以外の人は微熱としつこい空せきで発病します。潜伏期間は10~14日間です。

 発病後は夜間に激しくなる頑固なせきが長期にわたって続きます。痰はねばりがあり、膿が混じっているようなもの(粘液性あるいは粘膿性)で、のどの痛みや鼻水や鼻づまりが20~30パーセントに認められます。また、ある限られた地域のなかで流行することが多く、流行は4~5年の間隔でくり返されます。

 比較的症状が強いため、内科を受診するのが一般的で、自然に治ることはまずありません。

 子どもでは中耳炎、発疹、脳炎の合併に注意が必要です。一般成人では、溶血性貧血、髄膜炎、ギランバレー症候群などの中枢神経障害、発疹、肝機能障害、鼓膜炎、心筋炎などの合併症が認められます。

病気の原因や症状がおこってくるしくみ

 マイコプラズマは、自己増殖能力のある微生物のなかではもっとも小さなもので、細胞壁をもたない生物です。この菌に感染すると細気管支から肺胞にかけて単核球の浸潤がみられ、主として間質性肺炎が生じます。

病気の特徴

 飛沫感染による細菌感染症なので、保育園・幼稚園や学校で流行することが多く、5~30歳に多く発症します。

続きを読む

治療法とケアの科学的根拠を比べる

治療とケア 評価 評価のポイント
対症療法として、鎮咳薬、吸入薬、去痰薬、解熱薬などを用いる ★3 対症療法という観点では、臨床研究によって効果のある治療法(たとえば解熱鎮痛薬の使用など)が確認されています。それらの多くは、古くからの観察研究によるものです。 根拠(1)(2)
副腎皮質ステロイド薬を用いる ★3 急性呼吸促迫症候群(肺が急激に炎症をおこし、肺の組織が傷つく病気で、過呼吸や呼吸困難を伴う)のような症状や髄膜炎を併発する場合には、副腎皮質ステロイド薬が有効です。これは、臨床研究によって確認されています。 根拠(3)
抗菌薬治療としてはマクロライド系かテトラサイクリン系の抗菌薬を用いる ★5 マイコプラズマ肺炎に対する抗菌薬の効果は、非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。市中肺炎(病院に入院しているときに発病したものでない肺炎)のガイドラインから考えると、これらの抗菌薬の使用はとくに外来治療の場において推奨されています。 根拠(4)(5)

よく使われる薬の科学的根拠を比べる

抗菌薬による薬物療法

主に使われる薬 評価 評価のポイント
ジスロマック(アジスロマイシン水和物) ★5 マクロライド系抗菌薬のアジスロマイシン水和物、クラリスロマイシンについては非常に信頼性の高い臨床研究によって、マイコプラズマ肺炎に対しての効果が確認されています。ロキシスロマイシン、ミノサイクリン塩酸塩についても臨床研究によって効果が確認されています。また、ニューキノロン系抗菌薬のレボフロキサシン水和物の効果についても、非常に信頼性の高い研究によって確認されています。 根拠(4)(5)(6)
クラリシッド/クラリス(クラリスロマイシン) ★5
ルリッド(ロキシスロマイシン) ★3
ミノマイシン(ミノサイクリン塩酸塩) ★3
クラビット(レボフロキサシン水和物) ★5

内服ができない場合の注射薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
エリスロシン(エリスロマイシン) ★5 マクロライド系抗菌薬であるエリスロマイシンは、非常に信頼性の高い臨床研究によって、マイコプラズマ肺炎に対する効果が確認されています。ミノサイクリン塩酸塩についても臨床研究があり、効果が確認されています。 根拠(4)(5)
ミノマイシン(ミノサイクリン塩酸塩) ★3

おすすめの記事

総合的に見て現在もっとも確かな治療法

マクロライド系抗菌薬が有効

 マイコプラズマが原因となっておこる肺炎は、発熱や頑固なせきなどの症状が強く現れるため、医師の診察を早めに受けるといいでしょう。

 肺炎のなかでもマイコプラズマによるものとの診断がつけば、マクロライド系あるいはテトラサイクリン系の抗菌薬によって、ほぼ確実に治るものと考えられています。

 ただし、マイコプラズマによる肺炎かもしれないという疑いをもたないでほかの種類の抗菌薬を使い続けると、治癒がかなり遅れることもあります。

 なお、近年マクロライド系抗菌薬に耐性のあるマイコプラズマによる肺炎がとくに小児科領域において問題となることがあります。ただし、大人へのマクロライド系抗菌薬耐性マイコプラズマの感染はまれといわれるため、マクロライド系抗菌薬、テトラサイクリン系抗菌薬が第一選択といえます。

必要に応じて対症療法を

 肺炎に伴う発熱、せき、痰には、それぞれ解熱薬、吸入薬、鎮咳薬、去痰薬などを必要に応じて対症的に用います。これらの対症療法の多くは、古くからの観察研究によって効果のあることが確認されています。

子どもから感染することが多い

 マイコプラズマ肺炎はある特定の地域で流行することが多く、とくに保育園・幼稚園や学校などで流行することが多い病気です。したがって、家族内の感染は子どもから始まるのが一般的です。

 流行していることがわかっているときは、うがい、手洗いなどをよくするようにして感染を予防すべきでしょう。マスクの着用も予防に役立ちます。また、子どもでは中耳炎、発疹、脳炎などの合併症をしばしばおこすこともあるので、症状がみられたときはすぐに医療機関で診察を受けましょう。

根拠(参考文献)

  • (1) Mok JY, Inglis JM, Simpson H. Mycoplasma pneumoniae infection. A retrospective review of 103 hospitalised children. ActaPaediatr Scand. 1979;68:833-839.
  • (2)Trochtenberg S. Nebulized lidocaine in the treatment of refractory cough. Chest. 1994;105:1592-1593.
  • (3)Martin RE, Bates JH. Atypical pneumonia. Infect Dis Clin North Am. 1991;5:585-601.
  • (4)Bartlett JG, Dowell SF, Mandell LA, et al. Practice guidelines for the management of community-acquired pneumonia in adults. Clin Infect Dis. 2000;31:347-382.
  • (5)Niederman MS, Mandell LA, Anzueto A, et al. Guidelines for the Management of Adults with Community-acquired Pneumonia. Diagnosis, assessment of severity, antimicrobial therapy, and prevention. Am J RespirCrit Care Med. 2001;163:1730-1754.(6)File TM Jr, Segreti J, Dunbar L, Player R, et al. A multicenter, randomized study comparing the efficacy and safety of intravenous and/or oral levofloxacin versus ceftriaxone and/or cefuroxime axetil in treatment of adults with community-acquired pneumonia.Antimicrob Agents Chemother. 1997;41:1965.
出典:EBM 正しい治療がわかる本 2003年10月26日初版発行(データ改訂 2016年1月)