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伝染性単核球症の治療法執筆者:聖路加国際病院院長 福井 次矢

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伝染性単核球症とは、どんな病気でしょうか?

おもな症状と経過

 伝染性単核球症は、ヒトヘルペスウイルス群に属するエプスタイン・バー(EB)ウイルスの感染によるもので、発熱を伴い、異常な形をしたリンパ球が増殖する病気です。

 潜伏期は6~8週間で、おもに発熱、咽頭痛、頭痛、倦怠感などの症状から始まります。その後、頸部リンパ節が腫れ、脾臓の腫大、肝機能異常がおこります。発熱をはじめとする症状は1~2週間持続します。軟口蓋粘膜(のどぼとけ付近の粘膜)に出血を伴う小皮疹ができたり、まぶたがむくんだりすることもしばしばあります。

 血液検査では、大型の異型リンパ球が増殖するために白血球数が1~2万/マイクロリットルと多くなります。EBウイルスに対する抗体を確認して診断を下します。通常は自然に軽快するため、特別な治療法はなく、基本は安静と対症療法になります。

病気の原因や症状がおこってくるしくみ

 EBウイルスに感染すると、Bリンパ球が活性化され増殖するためリンパ系組織(リンパ節、脾臓、肝臓)が肥大します。この増殖したBリンパ球を抑制するために、細胞障害性のTリンパ球も増殖を始めることにより、さまざまな症状がおこってきます。

病気の特徴

 わが国では乳幼児期に80~90パーセントが初感染を受けますが、感染しても症状が現れない(不顕性感染)か、もしくは軽い症状ですむことがほとんどです。定型的な症状が現れるのは思春期以降にはじめて感染した場合です。ただし、ほとんどの場合、リンパ球の異常な増加や肝機能の異常などは1カ月以内で軽快します。

 感染は唾液を介して人から人へ広がっていくことから、アメリカではキス病と呼ばれています。

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治療法とケアの科学的根拠を比べる

治療とケア 評価 評価のポイント
発熱や咽頭痛に対して解熱鎮痛薬を用いる ★2 伝染性単核球症での発熱や咽頭痛に対して、対症的に解熱鎮痛薬が一般的に用いられます。信頼性の高い臨床研究は見あたりませんが、専門家の意見や経験から支持されています。
抗菌薬を用いる ★1 伝染性単核球症の場合、ペニシリン系の抗菌薬を用いると発疹などのアレルギー症状がでやすいことが知られています。病気の成り立ちから考えて、抗菌薬の効果はほとんど期待できませんので、伝染性単核球症と診断がついた患者さんには用いるべきではありません。 根拠(1)~(3)
重症なら副腎皮質ステロイド薬を用いる ★2 伝染性単核球症の患者さんのほとんどは軽症であり、副腎皮質ステロイド薬を用いることはありません。しかし、扁桃が腫れている(扁桃腫大)ために気道閉塞の可能性がある場合や重症の肝障害がある場合、また中枢神経系や血液系などの合併症がある場合に限って用いることがあります。しかし、副腎皮質ステロイド薬の使用の是非については一定の見解は得られていません。一般的な伝染性単核球症の症状の場合、抗ウイルス薬であるアシクロビルと副腎皮質ステロイド薬を組み合わせて使用した場合、咽頭炎症状の軽減はみられたものの回復にかかる期間を短縮しなかったとの結果が出ています。また、別の報告では、副腎皮質ステロイド薬は症状の軽減に役立たなかっただけでなく合併症を発症した例もあるとされています。 根拠(4)(5)

よく使われる薬の科学的根拠を比べる

解熱鎮痛薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
ブルフェン(イブプロフェン) ★2 伝染性単核球症での発熱や咽頭痛に対して、解熱鎮痛薬が一般的に用いられます。信頼性の高い臨床研究は見あたりませんが、専門家の意見や経験から支持されています。

抗菌薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
クラリス/クラリシッド(クラリスロマイシン) ★1 病気の成り立ちから考えると、抗菌薬を用いることは好ましくありません。 根拠(1)~(3)

副腎皮質ステロイド薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
プレドニン(プレドニゾロン) ★2 軽症には用いませんが、扁桃腫大による気道閉塞の可能性がある場合や重症の肝障害、中枢神経系の合併症(脳炎、髄膜炎、ギランバレー症候群など)、溶血性貧血や血小板減少症などの血液系の合併症がある場合などには用いられることがあります。ただし、効果があるとする臨床研究もあれば、そうでないものもあり、一定の見解を得られていません。 根拠(4)(5)

総合的に見て現在もっとも確かな治療法

EBウイルス感染が原因

 伝染性単核球症は、ヒトヘルペスウイルス群に属するエプスタイン・バー(EB)ウイルスの感染によるもので、発熱を伴い、異常なリンパ球が増殖する病気です。6~8週間の潜伏期間を経て、発熱、咽頭痛、頭痛、倦怠感などの症状が現れます。その後、頸部リンパ節の腫れ、脾臓の腫大、肝機能異常などが引きおこされます。

思春期以降に初感染すると症状がでる

 わが国では乳幼児期に80~90パーセントの人が感染して抗体をもっているので、あまり心配する必要はありません。ほとんどの場合、自然に軽快します。これといった症状が現れないため、感染したことに気づかないこともあります。はっきりとした症状がみられるのは、思春期以降にはじめて感染した場合です。

高熱には解熱鎮痛薬で対処

 残念ながら、伝染性単核球症の患者さんでの自覚症状持続期間を短縮したり、重い合併症を予防したりできることが臨床研究によって実証されている治療方法はありません。したがって、基本的には、自然経過で治るのを待つことになりますが、高熱やそれに伴う苦痛に対しては対症療法として解熱鎮痛薬を用います。特別な治療をしなくても、症状はおおむね1カ月以内でなくなります。

重症では副腎皮質ステロイド薬を使用することも

 気道閉塞の可能性がある場合や重い肝障害、中枢神経系や血液系の合併症がある場合など、ごく少数の患者さんでは副腎皮質ステロイド薬を用いることがあります。ただし、副腎皮質ステロイド薬の使用の是非については一定の見解が得られていません。

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根拠(参考文献)

  • (1)Renn CN, Straff W, Dorfmuller A, et al. Amoxicillin-induced exanthema in young adults with infectious mononucleosis: demonstration of drug-specific lymphocyte reactivity. Br J Dermatol. 2002;147:1166-1170.
  • (2)Gever LN. Letter: Ampicillin rash in infectious mononucleosis. N Engl J Med. 1974;291:736-737.
  • (3)Mulroy R. Amoxycillin rash in infectious mononucleosis. Br Med J. 1973;1:554.
  • (4)Tynell E, Aurelius E, Brandell A, et al. Acyclovir and prednisolone treatment of acute infectious mononucleosis: a multicenter, double-blind, placebo-controlled study.J Infect Dis. 1996;174:324.
  • (5)Candy B, Hotopf M.Steroids for symptom control in infectious mononucleosis. Cochrane Database Syst Rev. 2006;19:CD004402.
出典:EBM 正しい治療がわかる本 2003年10月26日初版発行(データ改訂 2016年1月)