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かぶれ(接触皮膚炎)の治療法執筆者:聖路加国際病院院長 福井 次矢

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かぶれ(接触皮膚炎)とは、どんな病気でしょうか?

おもな症状と経過

 かぶれ(接触皮膚炎)とは、皮膚と接触した物質が原因となって炎症がおき、湿疹が生じたものです。急性期は皮膚が「ぶつぶつ、じゅくじゅく」、慢性期は「がさがさ、ごわごわ」した状態となり、いずれも赤くなってかゆみを伴います。かきむしると表皮が厚くなって治りにくくなります。

病気の原因や症状がおこってくるしくみ

 原因によってアレルギー性と非アレルギー性(刺激性)に分けられます。アレルギー性の場合は、皮膚に付着した物質の情報をTリンパ球という白血球の一種が記憶し、再び同じ物質に出会うと活性化され、皮膚に炎症をおこすものです。皮膚に付着して1~2日後に反応のピークが訪れる遅延型アレルギー反応となります。アレルギー反応は特定の物質に反応を示すようになった人にだけ発症します。

 一方、非アレルギー性(刺激性)のかぶれは、刺激性の物質が一定の濃度で皮膚に付着すれば、だれにでも生じるものです。

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治療法とケアの科学的根拠を比べる

治療とケア 評価 評価のポイント
湿疹が生じている場所に副腎皮質ステロイド薬の外用薬を用いる ★5 軽度~中等度の接触皮膚炎に対して、中程度~強力な作用の副腎皮質ステロイド外用薬を短期間使った場合の有効性は、非常に信頼性の高い臨床研究で確かめられています。ただし、急性刺激性接触皮膚炎では副腎皮質ステロイド外用薬の効果がなかったという臨床研究もありますので、担当医とよく相談して使う必要があります。 根拠(1)~(4)
炎症が激しい場合は抗アレルギー薬を用いる ★5 皮膚の炎症に対して、内服による抗アレルギー薬の効果があることが複数の信頼性の高い臨床研究で確認されています。 根拠(5)(6)
軽症のときは外用の抗ヒスタミン薬を用いる ★2 抗ヒスタミン薬の外用がかぶれに有効であることを示した信頼性の高い臨床研究は見あたりませんが、専門家の意見や経験によって支持されています。
重症の場合では副腎皮質ステロイド薬を用いる ★2 有効性を確認した臨床研究は見あたりませんが、全身に湿疹が生じているような重度の接触皮膚炎に対して副腎皮質ステロイド薬を短期間内服することが、専門家の意見と経験によって支持されています。

よく使われる薬の科学的根拠を比べる

顔面以外に対して使用する副腎皮質ステロイド薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
フルメタ(軟膏)(フランカルボン酸モメタゾン) ★5 顔面以外の湿疹に対する副腎皮質ステロイド薬の外用薬ではフランカルボン酸モメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾンの効果が非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。そのほかの薬剤については専門家の間では支持されています。ただし、使用は短期間に限られます。 根拠(2)(3)
リンデロン-DP(軟膏)(ジプロピオン酸ベタメタゾン) ★5
デルモベート(軟膏)(プロピオン酸クロベタゾール) ★2
マイザー(軟膏)(ジフルプレドナート) ★2

顔面に対して使用する副腎皮質ステロイド薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
パンデル(軟膏)(酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン) ★2 顔面の湿疹に対する副腎皮質ステロイド薬の外用薬の効果は臨床研究によって確認されていませんが、専門家の間では支持されています。
アルメタ(軟膏)(プロピオン酸アルクロメタゾン) ★2

抗アレルギー薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
ジルテック(塩酸セチリジン) ★5 接触皮膚炎に対する抗アレルギー薬の内服効果は非常に信頼性の高い臨床研究で認められているものと、臨床研究は見あたりませんが、同様の効果が期待され、専門家によって支持されているものがあります。塩酸セチリジンや塩酸アゼラスチンは第二世代抗ヒスタミン薬と呼ばれる薬で、抗アレルギー効果が高いために「抗アレルギー薬」と分類されています。 根拠(5)(6)
アゼプチン(塩酸アゼラスチン) ★2

抗ヒスタミン薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
レスタミンコーワ(軟膏)(ジフェンヒドラミン) ★2 軽症の場合には、抗ヒスタミン薬の外用も有効であることが、専門家の意見や経験によって支持されています。

総合的に見て現在もっとも確かな治療法

かぶれをおこすものには触れないこと

 かぶれ(接触皮膚炎)は、ある物質が皮膚に付着することによって生じる皮膚の炎症です。肌のコンディションによっておこるもの、同じ物質に触れると必ずおこるもの、また炎症が実際におこるまで時間がかかるもの、かからないものなどいろいろな状態がありますが、アレルギー性接触皮膚炎の場合も非アレルギー性(刺激性)接触皮膚炎の場合も、もっとも大切なことは、原因となる物質を特定し、それに接触しないようにすることです。

軽度~中等度には副腎皮質ステロイド薬を

 軽度もしくは中等度の接触皮膚炎には、副腎皮質ステロイド薬の外用薬を使用することが推奨されています。また、実際に臨床研究でその効果が認められている薬もいくつかあります。ただし、使用は短期間に限るべきです。

慢性化しないためにも早期治療を

 接触皮膚炎の特徴として、かゆみがあります。ひどいかゆみを抑えきれず、かきこわしたりして慢性化したものは治癒までに時間がかかるため、早期に炎症を抑えることが重要です。かゆみが強い場合は、水や酢酸アルミニウムに浸した圧迫包帯で患部を冷やすと、かなりかゆみがおさまります。

 抗ヒスタミン薬の外用薬もかゆみを抑える効果があります。

 重症の場合は副腎皮質ステロイド薬(短期間)や抗アレルギー薬の内服が推奨されています。外用薬の場合、顔面と顔面以外では強さの違うものを用います。

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根拠(参考文献)

  • (1) Lebwohl M. Efficacy and safety of fluticasone propionate ointment, 0.005%, in the treatment of eczema. Cutis. 1996;57(2 Suppl):62-68.
  • (2) Viglioglia P, Jones ML, Peets EA. Once-daily 0.1% mometasone furoate cream versus twice-daily 0.1% betamethasone valerate cream in the treatment of a variety of dermatoses. J Int Med Res. 1990;18:460-467.
  • (3) Wolf-Jurgensen P. Efficacy of bufexamac cream versus betamethasone valerate cream in contact dermatitis: a double-blind trial. Curr Med Res Opin. 1979;5:779-784.
  • (4) Levin C, Zhai H, Bashir S, et al. Efficacy of corticosteroids in acute experimental irritant contact dermatitis? Skin Res Technol. 2001;7:214-218.
  • (5) Purohit A, Melac M, Pauli G, et al. Comparative activity of cetirizine and mizolastine on histamine-induced skin wheal and flare responses at 24 h. Br J Clin Pharmacol. 2002;53:250-254.
  • (6) Frossard N, Melac M, Benabdesselam O, et al. Consistency of the efficacy of cetirizine and ebastine on skin reactivity. Ann Allergy Asthma Immunol. 1998;80:61-65.
出典:EBM 正しい治療がわかる本 2003年10月26日初版発行