2016年改訂版 2003年初版を見る

アトピー性皮膚炎の治療法執筆者:聖路加国際病院院長 福井 次矢

つぶやく いいね! はてなブックマーク GooglePlus

アトピー性皮膚炎とは、どんな病気でしょうか?

おもな症状と経過

 遺伝的な要因がもとになって、慢性的に湿疹がみられる病気です。かゆみを伴うため、かきむしって症状を悪化させることが少なくありません。気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎といったほかのアレルギーの病気を合併することもあります。

 アトピー性皮膚炎は年齢によって症状が少し異なります。乳幼児ではあごやほおなど顔面に小さなぶつぶつ(丘疹)ができます。この丘疹はじくじくすることもあります。頭部に黄白色のフケのようなかさぶた(痂皮)ができることもあります。多くは乳幼児期で自然に治りますが、一部は幼小児期に移行します。

 幼小児期ではひじや膝ひざの裏、手、足などの皮膚がごわごわした状態(苔癬化)になったり、耳たぶが切れたりします。皮膚は乾燥しているのが特徴です。多くは自然に治りますが、やはり一部は思春期および成人での成人型に移行します。顔、首、前胸部などが赤く、あるいは赤黒くなります。

 アトピー性皮膚炎になりやすい要因は遺伝的なもので、なくすことはできません。症状もよくなったり悪くなったりをくり返すので、成人型の場合、治療の目標は症状を抑えることとなります。

病気の原因や症状がおこってくるしくみ

 病気の原因はくわしくわかっていませんが、遺伝的にアレルギー体質の人が、家の中のホコリやダニ、体の汗やフケ、アカなどの外的な刺激を受けると皮膚に発症すると考えられています。また、皮膚のバリア機能が低く、皮膚が乾燥した状態にあることも引きがねになっています。

 皮膚の一番表面にある角質層には、セラミドという脂質があります。アトピー性皮膚炎の症状に悩む人は、このセラミドが減っていることがわかってきました。一方、食物アレルギーによって症状がでるとの考え方もあります。しかし、食物アレルギーとアトピー性皮膚炎は別物だとする考え方もあり、結論を得ていません。また、心理的なストレスが症状を悪化させているとの指摘があります。

病気の特徴

 患者数は約40万人です。男女の差はあまりありません。幼小児期が多く、年齢が上がるにつれて患者さんは少なくなります。

続きを読む

治療法とケアの科学的根拠を比べる

治療とケア 評価 評価のポイント
ハウスダストやダニを除去する ★5 非常に信頼性の高い臨床研究で、その効果は確認されています。ただし、その効果はそれほど大きくないようです。 根拠(1)
皮膚の清潔を保ち、保湿剤を使用する ★5 洗顔や入浴によって皮膚を清潔に保つことや皮膚保湿剤の使用よって乾燥を防ぐことはいくつかの臨床研究によって効果が確認されています。 根拠(2)(3)
入浴時、石けんの使用を制限する(皮膚を乾燥させないタイプに限定する) ★2 臨床研究でその効果は確認されていないようですが、専門家の意見や経験から支持されています。
かゆみを抑えるために目の周りを叩いてはいけない ★2 目の周りを叩くことの危険性については、臨床研究などは見あたりませんが、症状の悪化、網膜剥離や白内障を招くので、やはりこの行為はやめたほうがいいでしょう。
副腎皮質ステロイド薬の外用薬で皮膚炎を抑える ★5 副腎皮質ステロイド薬を塗ることで皮膚の炎症が抑えられることが、非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。 根拠(4)
皮膚炎鎮静後は保湿剤を使用して皮膚のバリア機能を保つ ★5 保湿剤を使うことで症状が軽減し、副腎皮質ステロイド薬の効果が強まることや副腎皮質ステロイド薬を減量できることが非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。 根拠(2)~(5)
副腎皮質ステロイド薬で十分な効果が得られない場合は、外用の免疫抑制薬を用いる ★5 外用の免疫抑制薬は比較的安全で、効果があることが非常に信頼性の高い臨床研究で確認されています。ただし、副腎皮質ステロイド薬との優劣は比較されておらず、どちらのほうがより高い効果が得られるのかは、いまのところわかっていません。 根拠(6)(7)

よく使われる薬の科学的根拠を比べる

副腎皮質ステロイド薬の外用薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
- ★4 外用ステロイド薬には効果の程度によって弱い(ウイーク)から最強(ストロンゲスト)までのランクがあります(副腎皮質ステロイド外用薬の強弱については()を参照)。ステロイド外用薬の効果の高さと局所性の副作用の起こりやすさは一般的には平行することから、必要以上に強いステロイド外用薬を選択することなく個々の皮疹の重症度に見合ったランクの薬剤を適切に選択することが重要とされています。軟膏、クリーム、ローション、テープ剤などの剤型の選択は、病変の性状、部位などを考慮して選択することになります。(根拠(8)

保湿剤

主に使われる薬 評価 評価のポイント
グリセリンカリ液(グリセリンカリ液) ★5 尿素はグリセリンカリ液よりも保湿効果は強い反面、皮膚刺激作用がやや強いとの非常に信頼性の高い臨床研究があります。 根拠(10)~(11)(13)
ウレパール/ケラチナミン(尿素) ★5
ヒルドイド(ヘパリン類似物質) ★5 1日2回の外用が炎症の再燃を抑制するという効果について信頼性の高い臨床研究があります。(14)

外用免疫抑制薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
プロトピック(タクロリムス水和物) ★5 タクロリムス水和物の治療効果については、非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。ただし、副腎皮質ステロイド薬との比較では、どちらがより効果的なのかという点は明確になっていませんが、体幹、四肢を対象とした本剤(成人用 0.1%)の有効性はストロングクラスのステロイド外用薬とほぼ同等であるという臨床研究があります。 根拠(6)(7)(9)

おすすめの記事

総合的に見て現在もっとも確かな治療法

基本の治療は3本柱

 まず、患者さん自身ができるケアとして、原因と考えられるハウスダストやダニの除去があります。これは、できる範囲で行ったほうがよいでしょう。

 基本的な治療としては、保湿剤、副腎皮質ステロイド外用薬、それに抗菌薬による二次感染巣の治療などがあります。

保湿剤で皮膚のバリア機能を高める

 もともと、アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚は乾燥しているのが特徴であり、それがさまざまな症状の引きがねともなっています。

 できるだけ皮膚のバリア機能を高め、うるおいを保てるように、入浴時には、石けんの使用を制限します。万が一、用いるときでも皮膚を乾燥させないタイプのもの(ニュートロジーナなど)が勧められます。季節や気候、あるいは冷房といった外的な環境の影響などによって、皮膚の乾燥がとくに強いときにはうるおいをもたせるため、保湿剤のウレパール/ケラチナミン(尿素)あるいはグリセリンカリ液(グリセリンカリ液)などを用います。

副腎皮質ステロイド外用薬は適切な種類を適切な量だけ使う

 副腎皮質ステロイド外用薬の種類は、作用の強弱によって、弱い、中程度、強力、かなり強力、最強の5段階に分かれています。もっとも強力なものは顔には用いないよう注意が必要です。

 副腎皮質ステロイド外用薬を使う場合、不適切な種類のものを用いたり、不適切な量を用いたりすれば、効果がなかったり、あるいは副作用で苦しんだりするということがおこりえます。そうした危険性だけに注目するためか、絶対に用いてはいけないという極端な意見も一部にはありますが、それは誤りです。

 適切な種類の副腎皮質ステロイド外用薬を適切な量だけ用いれば、非常に効果的な薬です。その効果を十分に引きだすためには、皮膚科専門医の指示に従う必要があります。

皮膚感染症がおこった場合は抗菌薬を

 アトピー性皮膚炎では、黄色ブドウ球菌による皮膚感染症がおこりやすくなります。感染症に対しては早期にペニシリン系あるいはセフェム系の抗菌薬を用いて、進行させずに治療するようにします。

根拠(参考文献)

  • (1) Tollefson MM, Bruckner AL, Section On Dermatology. Atopic dermatitis: skin-directed management. Pediatrics 2014; 134:e1735.
  • (2) Langan SM, Williams HC. What causes worsening of eczema? A systematic review. Br J Dermatol 2006; 155:504.
  • (3) Langan SM, Bourke JF, Silcocks P, Williams HC. An exploratory prospective observational study of environmental factors exacerbating atopic eczema in children. Br J Dermatol 2006; 154:979.
  • (4) Eichenfield LF, Tom WL, Berger TG, et al. Guidelines of care for the management of atopic dermatitis: section 2. Management and treatment of atopic dermatitis with topical therapies. J Am Acad Dermatol 2014; 71:116.
  • (5) Lucky AW, Leach AD, Laskarzewski P, et al. Use of an emollient as a steroid-sparing agent in the treatment of mild to moderate atopic dermatitis in children. PediatrDermatol. 1997;14:321-324.
  • (6)Ashcroft DM, Dimmock P, Garside R, et al. Efficacy and tolerability of topical pimecrolimus and tacrolimus in the treatment of atopic dermatitis: meta-analysis of randomised controlled trials. BMJ 2005; 330:516.
  • (7) Rikkers SM, Holland GN, Drayton GE, et al. Topical tacrolimus treatment of atopic eyelid disease. Am J Ophthalmol 2003; 135:297.
  • (8) 古江 増隆ら、アトピー性皮膚炎診療ガイドライン(日本皮膚科学会ガイドライン)日皮会誌:119(8),1515―1534,2009
  • (9) FK506 軟膏研究会:FK506 軟膏第 III 相比較試験―アトピー性皮膚炎(躯幹・四肢)に対する吉草酸べタメタゾン軟膏との群間比較試験,西日皮膚,59 : 870― 879, 1997.
  • (10) Smethurst D, Macfarlane S. Atopic eczema. ClinEvid. 2002;8:1664-1682.
  • (11) Loden M, Andersson AC, Andersson C, et al. Instrumental and dermatologist evaluation of the effect of glycerine and urea on dry skin in atopic dermatitis. Skin Res Technol. 2001;7:209-213.
  • (12) Loden M, Andersson AC, Anderson C, et al. A double-blind study comparing the effect of glycerin and urea on dry, eczematous skin in atopic patients. ActaDermVenereol. 2002;82:45-47.
  • (13) Åkerström U, Reitamo S, Langeland T, et al. Comparison of Moisturizing Creams for the Prevention of Atopic Dermatitis Relapse : a Randomized Double-Blind Controlled Multicentre Clinical Trial.ActaDermVenereol. 2015 Jan 16. doi: 10.2340/00015555-2051. [Epub ahead of print]
  • (14) 川島眞,林伸和,乃木田俊辰,柳澤恭子,水野惇子:アトピー性皮膚炎の寛解維持における保湿剤の有用性の検討,日皮会誌,117 : 1139―1145, 2007.
出典:EBM 正しい治療がわかる本 2003年10月26日初版発行(データ改訂 2016年1月)