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じんましんの治療法執筆者:聖路加国際病院院長 福井 次矢

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じんましんとは、どんな病気でしょうか?

おもな症状と経過

 かゆみを伴って局部的に突然現れる膨疹、紅斑をじんましんといいます。皮膚上に赤い盛り上がりが地図のように広がるのが特徴です。

 最初にできた皮疹は短時間で消えますが、体のいろいろな場所の皮膚にくり返しおこります。

 急性じんましんは1カ月以内におさまるもの、慢性じんましんは1カ月以上続くもののことです。かきむしると拡大して全身に広がることもあります。

 原因別にアレルギー性のものと非アレルギー性のものに分けられます。

 じんましんが現れるのは、皮膚だけとは限りません。口唇こうしん、気道、胃腸などの粘膜に病変が現れることもあります。この場合、呼吸困難、声のかすれ、腹痛、下痢といった症状がみられます。

病気の原因や症状がおこってくるしくみ

 アレルギー性、非アレルギー性を問わず、なんらかの原因で皮膚にある肥満細胞という細胞からヒスタミンなどの化学物質が放出されると、じんましんがでます。

 ヒスタミンが放出されると血管が拡張して紅斑ができ、また、血漿成分が血管外にでてくると、むくんで盛り上がる膨疹をつくります。かゆみを感じるのもヒスタミンの作用によるものです。

 一般に急性のじんましんはアレルギー性が多く、慢性のじんましんは非アレルギー性が多いとされています。原因には食物、薬剤、細菌感染などのほかに、日光、寒冷、温熱といった物理的な刺激によるものや心因性のものがあります。一方、一つの皮疹の持続が1日以上であれば膠原病などの全身の病気が疑われます。

 このほか、まぶたや唇が腫れるクインケ浮腫もじんましんの一種です。かゆみはほとんどありませんが、腫れが完全に引くまでに2、3日かかります。

病気の特徴

 5人に一人は経験しているとされる、非常に身近な病気です。20歳代、30歳代に比較的多く、10歳以下や60歳以上にはあまりみられません。

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治療法とケアの科学的根拠を比べる

治療とケア 評価 評価のポイント
抗ヒスタミン薬の内服を行う ★5 抗ヒスタミン薬の内服については非常に信頼性の高い臨床研究によって効果が認められています。プラセボ(偽薬)と比較して、かゆみや腫れなどによる夜間の睡眠障害や日常生活への支障という点で効果がまさっていたとする報告があります。 根拠(1)~(3)
重症例では副腎皮質ステロイド薬の静脈注射を行う ★2 副腎皮質ステロイド薬の静脈注射がじんましんに対して有効であったとする臨床研究は見あたりませんが、重症の場合は専門家の経験や意見から支持されています。
明らかな感染巣がある場合は抗菌薬を用いる ★2 感染巣がある場合の抗菌薬の使用に関する臨床研究は見あたりませんが、専門家の経験や意見から支持されている治療法です。
物理刺激によって発症する場合は刺激を避けるようにする ★2 物理刺激を避けることの予防効果に関する臨床研究は見あたりませんが、専門家の経験や意見から寒冷刺激や温熱刺激などを避けたほうがよいと考えられています。
非ステロイド性抗炎症薬を避けるようにする ★3 慢性じんましんの成人患者さんの20~40%で、非ステロイド抗炎症薬を内服後に症状の悪化がみられたという報告があります。 根拠(4)
お酒や刺激の強い香辛料は控える ★2 お酒や刺激の強い香辛料を控えることの予防効果に関する研究は見あたりませんが、専門家の経験や意見から支持されています。
食品添加物のとりすぎに注意する ★2 食品添加物をとりすぎないことの予防効果に関する研究は見あたりませんが、専門家の経験や意見から支持されています。

よく使われる薬の科学的根拠を比べる

抗ヒスタミン薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
ジルテック(塩酸セチリジン) ★5 いずれの薬剤も非常に信頼性の高い臨床研究で有効性が確かめられています。わが国では、第一世代、第二世代で各々10以上の抗ヒスタミン薬が市販されていますが、経口投与では、効果と副作用の両面で中枢組織を抑制する作用が少なく、眠気をおこさせない(鎮静性の低い)第二世代の抗ヒスタミン薬が第一選択薬として推奨されています。 根拠(11)(12)(13)(14)(5)(6)(7)(8)
ザイザル(レボセチリジン塩酸塩) ★5
アレグラ(フェキソフェナジン塩酸塩) ★5
クラリチン(ロラタジン) ★5
ポララミン(d-クロルフェニラミンマレイン酸塩) ★5
アレジオン(エピナスチン塩酸塩) ★5
エバステル(エバスチン) ★5
セルテクト(オキサトミド) ★5
ペリアクチン(塩酸シプロヘプタジン) ★5
レミカット/ダレン(フマル酸エメダスチン) ★5

副腎皮質ステロイド薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
リンデロン(ベタメタゾン) ★2 症状が重篤な場合、または一剤以上の抗ヒスタミン薬を併用しても強い症状が続く場合に、副腎皮質ステロイド薬の内服(プレドニゾロン換算量15m/日まで)により症状を制御できることが多いという報告があります。しかし、慢性じんましんの長期的な経過に対する副腎皮質ステロイド薬内服による治療効果に関する信頼できる臨床研究の報告はなく、皮疹を抑制できるというだけで漫然とステロイド内服を続けるべきではないとされています。(1)(9)(10)
プレドニン(プレドニゾロン) ★2

抗アレルギー薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
ザジテン(フマル酸ケトチフェン) ★5 抗アレルギー薬にはたくさんの種類があり、臨床研究が見あたるものと、見あたらないものがあります。フマル酸ケトチフェンについては、信頼性の高い臨床研究によって、効果が確かめられています。そのほかの薬剤は臨床研究が見あたりませんが、専門家の意見や経験から用いることがあります。 根拠(15)
アイピーディ(スプラタストトシル酸塩) ★2
オノン(プランルカスト水和物) ★2
強力ネオミノファーゲンシー(グリチルリチン製剤) ★2

総合的に見て現在もっとも確かな治療法

基本は、抗ヒスタミン薬

 じんましんがでたら、抗ヒスタミン薬の内服による治療が基本となります。現在、さまざまな薬が開発されていて、その効果はいくつかの臨床研究で確かめられています。また、最近では眠気を引きおこさないものもでていますが、副作用には十分な注意が必要です。ショック症状や喉頭浮腫など生命にかかわる異常が疑われた場合には、ただちにアドレナリンを筋肉注射し、血管確保(点滴静脈注射)したうえで副腎皮質ステロイド薬を投与します。

 抗ヒスタミン薬による治療でも回復がみられない場合は、副腎皮質ステロイド薬が使用されます。これは実際に臨床研究で治療効果が確かめられているわけではありませんが、専門家からは支持されている治療です。

急性じんましんは抗菌薬を用いることも

 急性じんましんは、急性感染症(扁桃炎、感冒様症状、関節炎など)をきっかけにして発症することもあります。このように、明らかな細菌感染巣がわかっているときは、抗菌薬が用いられます。

薬物によるものはまずは診断で原因を突き止める

 薬物によるじんましんは、数分以内におこるものから、10日以上もたってからでてくるものもありますので、まずは診断で原因を突きとめることが大切です。

 一方、じんましんをくり返す慢性じんましんでは、生活上のどのような場面でおこりやすいのかを明らかにして、誘引と考えられる要因を避けるよう生活パターンの調整を行っていきます。

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根拠(参考文献)

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  • (12)Belsito DV. Second-generation antihistamines for the treatment of chronic idiopathic urticaria. J Drugs Dermatol. 2010 May;9(5):503-12.
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  • (14)Sharma M, Bennett C, Cohen SN, Carter B. H1-antihistamines for chronic spontaneous urticaria. Cochrane Database Syst Rev. 2014 Nov 14;11:CD006137. doi: 10.1002/14651858.CD006137.pub2. Review.
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出典:EBM 正しい治療がわかる本 2003年10月26日初版発行(データ改訂 2016年1月)