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急性化膿性中耳炎の治療法執筆者:聖路加国際病院院長 福井 次矢

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急性化膿性中耳炎とは、どんな病気でしょうか?

おもな症状と経過

 中耳に炎症がおきている状態が中耳炎です。急性化膿性中耳炎をおこしやすい乳幼児では、ほとんどがかぜ症状に引き続いて発病します。のどの痛み、鼻汁や鼻づまりなどの症状があって、その後、耳がつまった感じや、一時的な難聴、頭痛といった症状がみられます。

 炎症が進むと発熱とともに膿みがたまり、鼓膜を 圧迫するので針に刺されたように耳が激しく痛みます。言葉の話せない乳児では、耳の痛みであることを訴えられないために、見逃されることも少なくありません。

 一般的には1週間程度で治りますが、原因菌によっては重症化し、治りにくくなったり、治ってもまたかぜをひくと同じ症状をくり返したりします。

病気の原因や症状がおこってくるしくみ

 鼻やのどなど上気道に感染した肺炎球菌やインフルエンザ菌などが炎症の原因です。これらの細菌やウイルスが耳管を通って中耳に侵入することで発病します。

 乳幼児期はこの細菌の侵入経路となる耳管が太く、直線的であるため容易に侵入しやすく、かぜから移行することが多くなります。

病気の特徴

 とくに2歳以下の子どもに多発します。

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治療法とケアの科学的根拠を比べる

治療とケア 評価 評価のポイント
入浴は控える ★2 入浴を控えることが有効であるかどうかは臨床研究で確認されていないようですが、専門家の意見や経験から支持されています。
膿が充満し、痛みがひどい場合には鼓膜を切開する ★2 急性化膿性中耳炎の治療としての鼓膜切開の効果は、臨床研究によれば疑問視されています。難治性の場合には、鼓膜切開をしたあとに鼓膜チューブを留置すると、再発することが少なくなることが知られており、鼓膜切開を行うこともあります。 根拠(1)(6)
原因となっている菌を特定し、適切な抗菌薬を用いる ★2 急性化膿性中耳炎の原因となる菌は限られているため、必ずしも菌を特定する必要はなく、頻度の高いことがわかっている原因菌を想定して抗菌薬(内服や点耳薬)による治療を行います。ただし、免疫不全状態や抗菌薬が効かない場合などには培養を行い、菌を特定する必要があります。臨床研究は見あたりませんが、専門家の意見や経験から支持されています。
鼻汁を吸い取ったり、鼻の洗浄を行う ★2 鼻汁を吸い取ることや鼻の洗浄が効果的であるかどうかを確認する臨床研究は見あたりません。ただし、鼻やのどからの細菌侵入を防ぐために、このような処置をすることは専門家の意見や経験から支持され、よく行われています。
耳痛に対して鎮痛薬を用いる ★5 耳痛に対して鎮痛薬を用いると効果的であることは、非常に信頼性の高い臨床研究によって認められています。 根拠(2)
抗菌薬(静脈注射)を用いる ★5 静脈注射によって全身的に抗菌薬を用いることにより、急性化膿性中耳炎の治癒率が高くなることが、非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。 根拠(3)(6)
運動は控え、安静にする ★2 運動を控え、安静にすると効果があることを示した臨床研究は見あたりません。ただし、発熱がある場合などは不要な体力の消耗を防ぐために、安静にするのがよいでしょう。

よく使われる薬の科学的根拠を比べる

抗菌薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
内服用 サワシリン/パセトシン(アモキシシリン水和物) ★5 アモキシシリン水和物(内服)の効果は非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。 根拠(4)(5)
点耳用 タリビッド(オフロキサシン) ★5 ニューキノロン系の抗菌薬(点耳薬)は、鼓膜チューブを留置している場合には有効であることが、非常に信頼性の高い臨床研究によって認められています。 根拠(6)
ロメフロン(塩酸ロメフロキサシン) ★5
ホスミシンS(耳科用液)(ホスホマイシンナトリウム) ★2 ホスホマイシンナトリウムは、ほかの抗菌薬が有効ではない場合に用いられることがあります。

難治化した場合の抗菌薬(静脈注射用)

主に使われる薬 評価 評価のポイント
ユナシン‐S(アンピシリンナトリウム:スルバクタムナトリウム=2:1) ★3 難治化した場合の抗菌薬の選択に関して、これらの点滴用の薬剤が用いられることがあります。 根拠(7)(8)
ロセフィン(セフトリアキソンナトリウム水和物) ★2
クラビット(レボフロキサシン水和物) ★4
カルベニン(パニペネム:ベタミプロン=1:1) ★2
メロペン(メロペネム水和物) ★2

痛みを抑える消炎鎮痛薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
ロキソニン(ロキソプロフェンナトリウム水和物) ★5 急性化膿性中耳炎の痛みに対して、これらの非ステロイド抗炎症薬が有効であることが、非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。 根拠(2)
ボルタレン(ジクロフェナクナトリウム) ★5
ポンタール(メフェナム酸) ★5

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総合的に見て現在もっとも確かな治療法

かぜをひいた乳幼児に多い病気

 急性化膿性中耳炎は、鼻やのどの上気道感染、いわゆるかぜをひいた乳幼児におこりやすい病気です。

 上気道に感染した肺炎球菌やインフルエンザ菌などの原因菌が、耳管を通って中耳に侵入し、そこで炎症をおこして発病します。このとき細菌の侵入経路となる耳管が乳幼児期には太く、直線的であるため、鼻やのどから容易に原因菌が移行してくるため、どうしても耳の炎症もおこしやすくなります。

 のどの痛みや鼻汁・鼻づまりが長びき、それがおさまっても、再び発熱したり、ぐずりが続いたりする乳児などでは、この病気を疑います。また、炎症が進むと激しい痛みを伴います。

肺炎球菌、インフルエンザ菌を想定した抗菌薬を選択

 中耳炎の原因となる細菌は限られています。原因となる細菌のなかでは、肺炎球菌やインフルエンザ菌がもっとも頻度が高いと考えられます。それらの菌を想定して、タリビッド(オフロキサシン)やロメフロン(塩酸ロメフロキサシン)などの点耳薬、あるいはペニシリン系のサワシリン/パセトシン(アモキシシリン水和物)の経口薬が使われます。

 漫然と長期に抗菌薬を用いることは推奨されませんが、必要な期間に限って必要な量を用いることは大切です。乳幼児が嫌がっても、保護者はこのことをよく理解し、勝手な中断などはしないようにしましょう。中途半端な使用は、かえって症状をくり返したり、治りにくくなったりすることにつながります。

難治性では鼓膜切開も

 鼓膜切開は難治性の場合以外はほとんど行われなくなってきました。難治性の場合には、全身的な抗菌薬の使用とともに、鼓膜の切開と鼓膜チューブの留置が有効であるという臨床研究があります。

痛みの激しいときには鎮痛薬を用いる

 痛みについては非ステロイド抗炎症薬を用います。炎症が進んで中耳のなかが化膿し、たまった膿が鼓膜を刺激すると、がまんできないほどの激しい痛みがおこります。乳幼児では、眠れないこともあります。数時間の間隔で反復しておこりますので、痛みがおこったときに頓用で用いるのが適当でしょう。

根拠(参考文献)

  • (1) Kaleida PH, Casselbrant ML, Rockette HE, et al. Amoxicillin or myringotomy or both for acute otitis media: results of a randomized clinical trial. Pediatrics. 1991;87:466-474.
  • (2) Bertin L, Pons G, d'Athis P, et al. A randomized, double-blind, multicentre controlled trial of ibuprofen versus acetaminophen and placebo for symptoms of acute otitis media in children. Fundam Clin Pharmacol. 1996;10:387-392.
  • (3) Takata GS, Chan LS, Shekelle P, et al. Evidence assessment of management of acute otitis media: I. The role of antibiotics in treatment of uncomplicated acute otitis media. Pediatrics. 2001;108:239-247.
  • (4) Dowell SF, Butler JC, Giebink GS, et al. Acute otitis media: management and surveillance in an era of pneumococcal resistance--a report from the Drug-resistant Streptococcus pneumoniae Therapeutic Working Group. Pediatr Infect Dis J. 1999;18:1-9.
  • (5) Goldblatt EL, Dohar J, Nozza RJ, et al. Topical ofloxacin versus systemic amoxicillin/clavulanate in purulent otorrhea in children with tympanostomy tubes. Int J Pediatr Otorhinolaryngol. 1998;46:91-101.
  • (6) Chung A, Perera R, Brueggemann AB, et al. Effect of antibiotic prescribing on antibiotic resistance in individual children in primary care: prospective cohort study. BMJ 2007; 335:429.
  • (7) Lieberthal AS, Carroll AE, Chonmaitree T, et al. The diagnosis and management of acute otitis media. Pediatrics 2013; 131:e964.
  • (8) Leibovitz E, Piglansky L, Raiz S, et al. Bacteriologic and clinical efficacy of one day vs. three day intramuscular ceftriaxone for treatment of nonresponsive acute otitis media in children. Pediatr Infect Dis J 2000; 19:1040.
出典:EBM 正しい治療がわかる本 2003年10月26日初版発行(データ改訂 2016年1月)