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良性発作性頭位めまいの治療法執筆者:聖路加国際病院院長 福井 次矢

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良性発作性頭位めまいとは、どんな病気でしょうか?

おもな症状と経過

 急に上や下を向いたとき、突然ふり返ったときなど、ある一定の方向に頭を動かすと、突然回転性のめまい(自分または天井など自分の周囲がぐるぐる回っているように感じるめまい)がおこる病気です。めまいは、ほとんどの場合十数秒でおさまります。めまいの引きがねとなる頭の動きや姿勢を何回かくり返しているうちに、次第に軽くなったり、おこらなくなったりするのが特徴です。

 良性発作性頭位めまいはその名のとおり良性で、軽い吐き気を伴うことがありますが、耳鳴りや難聴など聴覚の異常、そのほかの中枢神経の異常は伴いません。ほとんどの患者さんでは、特別な治療をしなくても数週間のうちに症状はなくなります。ただし、頻繁におこって日常生活に支障をきたす場合は、頭部を特定の方向に動かす手技(耳石の位置を変える)や薬を用いることもあります。

病気の原因や症状がおこってくるしくみ

 体の平衡感覚は、内耳にある前庭という器官が司っています。前庭は耳石器と三半規管からなっており、耳石器はおもに重力の方向を感じ、三半規管は回転を感じます。耳石器のなかには耳石というある程度重みのある結晶が耳石膜にくっついており、その重みの傾きにより感覚細胞が刺激されて、体の傾きを認識するようになっています。一方、三半規管はドーナツ状の管になっていて、内リンパ液という液体で満たされており、この液体の動きで頭の回転を感知するようになっています。めまいは、この前庭から脳に刺激を伝える前庭神経の部分になんらかの障害があっておこる内耳性のめまい、それ以降の脳幹、小脳、大脳のいずれかの間の経路になんらかの問題があっておこる中枢性のめまい、それらの経路にはなんの問題もないのにおきるそのほかのめまいに大きく分けられます。

 良性発作性頭位めまいは内耳性のめまいですが、原因ははっきりわかっていません。本来、耳石膜にくっついて耳石器のなかにあるはずの耳石の一部がはがれ落ちて、三半規管のなかに入るために生じるのではないかといわれています。重力の方向を感知する耳石がはがれ落ち、その一部が三半規管に入り込んで、なかのリンパ液に流動がおこるため、めまいを感じることになります。

病気の特徴

 めまいの診療では、もっともよくみられるものです。50歳~60歳代の人に多い病気です。

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治療法とケアの科学的根拠を比べる

治療とケア 評価 評価のポイント
発作がおきたら横になったりせず、頭の向きを変えてみる ★2 良性発作性頭位めまいは、平衡感覚を司る前庭という器官にある耳石膜から耳石が部分的にはがれることで生じると考えられます。したがって、はがれてしまった耳石をもとの耳石器にもどせば、症状が改善するという考え方は、臨床研究によって効果が確認されていませんが、専門家からは支持されています。しかし、やみくもに頭の向きを変えてみたからといって、症状が軽減することはありません。 根拠(1)~(4)
薬によってめまいを抑える ★2 発作期間がごく短い場合、薬物治療の必要はありませんが、めまいが数日にわたって続く場合、めまいをなんどもくり返す場合、嘔吐を伴う場合などには、原因について精密検査が必要になります。抗コリン薬、抗ヒスタミン薬、フェノチアジン、ベンゾジアゼピンなどが、一般的なめまいの治療薬として使われます。これらの薬の有効性を示す臨床研究は見あたりませんが、専門家の意見や経験から支持されています。
理学療法(浮遊耳石置換法)を行う ★5 はがれてしまった耳石をもとの耳石器に戻すために、いくつかの理学療法が考案されています。これらには、ブラント・ダロフ法、セモン法、エプリー法などがあります。いずれも非常に信頼性の高い臨床研究で効果が認められています。メイヨー・クリニックのフロエリングらは、50人のこの病気の患者さんを2群に分けて耳石を元の位置に戻すための手技を検証しています。この手技を受けた患者さん24人中12人(50パーセント)、この手技とは異なる手技を受けた26人中5人(19パーセント)が10日以内に症状が改善し、頭部を動かしたときの誘発試験でも前者で16人(67パーセント)、後者で10人(38パーセント)が症状が抑えられたと報告しています。 根拠(1)~(4)

よく使われる薬の科学的根拠を比べる

めまいの発作を抑える薬(点滴静脈注射)

主に使われる薬 評価 評価のポイント
メイロン(炭酸水素ナトリウム) ★2 めまいの発作を抑える点滴静脈注射の薬にはいくつかあり、専門家の意見や経験により支持されています。
プリンペラン(メトクロプラミド) ★2
アタラックスP(ヒドロキシジンン塩酸塩注射液) ★2
セルシン/ホリゾン(ジアゼパム) ★2

内服が可能な場合

主に使われる薬 評価 評価のポイント
プリンペラン(メトクロプラミド) ★2 めまいの発作を抑える飲み薬にはいくつかあり、専門家の意見や経験により支持されています。
トラベルミン(ジフェンヒドラミン・ジプロフィリン配合剤) ★2

総合的に見て現在もっとも確かな治療法

経験的に支持されている薬物治療

 めまいの発作期間がごく短い場合は、薬物治療の必要はありませんが、めまいが数日にわたって続いたり、めまいをなんどもくり返したり、嘔吐を伴ったりする場合には、原因をつきとめる精密検査を含め、治療が必要になります。

 現在、めまいの発作を抑える薬として一般的に用いられている薬は、中枢神経に鎮静作用を有する薬(抗コリン薬、抗ヒスタミン薬、フェノチアジン、ベンゾジアゼピン)や、メイロン(炭酸水素ナトリウム)などです。いずれの薬についても、有効性に関して信頼性の高い臨床研究で確かめられておらず、経験的に支持されているにとどまっているのが実情ですが、副作用の有無に注意しながら、これらの薬を用いることは、現在のところ、許容される臨床判断といえるでしょう。

浮遊耳石置換法を試みる場合も

 良性発作性頭位めまいの原因として、内耳が関係しているのは確実であると考えられています。内耳は体の平衡を司っている器官ですが、内耳にある耳石の一部がはがれ落ちることによって、平衡感覚が失われ、めまいが生じるのではないかといわれています。

 そこで、はがれてしまった耳石をもとに戻すいくつかの理学療法(ブラント・ダロフ法、セモン法、エプリー法など)が考案されています。これらは非常に信頼性の高い臨床研究で効果が確かめられています。

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根拠(参考文献)

  • (1) Froehling DA, Bowen JM, Mohr DN, et al. The canalith repositioning procedure for the treatment of benign paroxysmal positional vertigo: a randomized controlled trial. Mayo Clin Proc 2000; 75:695.
  • (2) von Brevern M, Seelig T, Radtke A, et al. Short-term efficacy of Epley's manoeuvre: a double-blind randomised trial. J Neurol Neurosurg Psychiatry 2006; 77:980.
  • (3) Seo T, Miyamoto A, Saka N, et al. Immediate efficacy of the canalith repositioning procedure for the treatment of benign paroxysmal positional vertigo. Otol Neurotol 2007; 28:917.
  • (4) Prokopakis E, Vlastos IM, Tsagournisakis M, et al. Canalith repositioning procedures among 965 patients with benign paroxysmal positional vertigo. Audiol Neurootol 2013; 18:83.
出典:EBM 正しい治療がわかる本 2003年10月26日初版発行(データ改訂 2016年1月)