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慢性骨髄性白血病の治療法執筆者:聖路加国際病院院長 福井 次矢

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慢性骨髄性白血病とは、どんな病気でしょうか?

おもな症状と経過


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 白血病は骨髄や末梢血(体内を流れている血液)のなかに、異常な白血球(白血病細胞)が無制限に増える病気です。血液細胞(赤血球、血小板、白血球)のもとになる造血幹細胞が、がん化することによっておこるもので、血液のがんといえるものです。

 ふつう、白血球は芽球と呼ばれる細胞が骨髄の中で分化(未熟な細胞が成熟した細胞になる)し、成熟した白血球となって末梢血にでていきます。急性骨髄性白血病では、がん化した芽球が分化せずに無制限に増え、正常な成熟した白血球はつくられなくなってしまいます。一方、慢性骨髄性白血病では、白血球の一種である顆粒球と血小板が異常に増殖します。

 慢性骨髄性白血病の病気の進み方は非常にゆるやかなので、数年にわたって自覚症状のないまま経過することが少なくありません。このような病気の初期段階を慢性期といい、数カ月から3~4年続きます。

 その後、治療をしても白血球数のコントロールが困難となる移行期を経て、病気が一気に悪化する急性転化期に入ります。急性転化期になると、貧血、体重減少、発熱、出血傾向などの症状が現れます。非常に危険な状態になり、死亡率が高まります。

病気の原因や症状がおこってくるしくみ

 慢性骨髄性白血病の原因として、現在有力とされる説は、遺伝子の異常によるというものです。慢性骨髄性白血病の患者さんでは、ほとんどの人に異常な染色体(遺伝子の集まったもの)が認められるからです。人間がもっている46の染色体のうち、22番染色体が途中から切れて、9番染色体の断片と結合している、つまり、9番と22番の染色体がそれぞれある部分で二つに切断され、互いに入れかわって結合しています。それぞれの遺伝子の断片が結合した結果、新たに融合遺伝子がつくられます。この融合遺伝子が、慢性骨髄性白血病の原因と考えられています。

 遺伝子は、体に必要なたんぱく質をつくり出す働きを担っています。ところが、異常な遺伝子である融合遺伝子がつくり出すたんぱく質は、白血病細胞の異常増殖を引きおこします。その結果、慢性骨髄性白血病を発病させるのではないかと考えられています。

 この遺伝子の異常は、おもに後天的におこるのではないかと考えられています。それは、原爆で被爆した人や放射線治療を受けた人に、この病気の患者さんが多いという統計からも推測されています。

病気の特徴

 慢性骨髄性白血病の発病はすべての年齢層におこりえますが、40歳代~50歳代以降に多くみられます。白血病全体のなかでは、約17パーセントです。

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治療法とケアの科学的根拠を比べる

治療とケア 評価 評価のポイント
根治治療として骨髄移植を行う ★3 骨髄移植は慢性骨髄性白血病を根治させる治療であることが、臨床研究によって確認されています。治癒率は病気の時期や年齢、ドナー(骨髄提供者)の状態などによって異なります。治癒率が高いのは、急性転化期より慢性期、診断がついて1年以上の人より1年以内の人、お年寄りより若い人、非血縁者がドナーとなるより血縁者のドナー、ということがわかっています。 根拠(1)~(3)
化学療法を行い、急性転化の時期を遅らせる ★2 ヒドロキシカルバミドやブスルファンなどの化学療法を慢性期に行うと、血液検査の結果は一時的に改善します。しかし、急性転化の時期を遅らせる効果はほとんどないといわれています。 根拠(4)
骨髄移植ができない場合インターフェロンを用いて急性転化の時期を遅らせる ★5 インターフェロンはヒドロキシカルバミドやブスルファンなどよりも、急性転化の時期を遅らせることがわかっています。これは非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。しかし注射薬しかなく副作用も強いという欠点もあります。はじめて治療を行う慢性骨髄性白血病の患者さんを対象にして、メシル酸イマチニブとインターフェロン+シタラビン併用療法の治療効果を比較する臨床研究が現在行われています。中間報告ではメシル酸イマチニブのほうが効果があり、副作用が少ないと報告されています。 根拠(4)~(6)
急性転化をおこしたときは急性白血病の治療を行う ★3 急性転化期の治療法は、いまだ標準化されたものはありません。急性白血病に準ずる化学療法が行われることも多いのですが、急性白血病を治療するよりも効きめは弱くなる傾向にあります。現在、急性転化をおこした患者さんに対してメシル酸イマチニブを使った臨床研究が行われており、結果が注目されています。 根拠(7)

よく使われる薬の科学的根拠を比べる

主に使われる薬 評価 評価のポイント
インターフェロン ★5 インターフェロンは非常に信頼性の高い臨床研究によって効果が確認されています。 根拠(4)(5)
ハイドレア(ヒドロキシカルバミド) ★2 ヒドロキシカルバミドやブスルファンを用いると一時的に血液検査の結果は改善しますが、急性転化の時期を遅らせる効果はほとんどないといわれています。インターフェロンにシタラビンを併用すると治療効果が上がることが期待されています。しかし臨床研究の結果では賛否両論があり、まだ評価は定まっていません。 根拠(4)(8)(9)
マブリン(ブスルファン) ★2
キロサイド/サイトサール(シタラビン) ★2
スタラシド(シタラビンオクホスファート) ★3 経口で用いることができるシタラビンオクホスファートとインターフェロンの併用療法に関する臨床研究はまだ始められたばかりです。小規模の研究では、いまのところ良好な効果を認めています。 根拠(10)
グリベック(メシル酸イマチニブ) ★5 慢性骨髄性白血病の原因である異常な遺伝子がつくり出すたんぱく質の働きを阻止する薬剤です。この効果は、非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。 根拠(6)

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総合的に見て現在もっとも確かな治療法

もっとも有効な治療法は骨髄移植

 現在のところ、もっとも有効な治療法は骨髄移植であり、可能な限り行うべきだと思われます。この治療法は、最初に大量の化学療法または放射線療法との組み合わせによって、骨髄を含めた体内にあるすべての白血病細胞と正常な血液細胞を壊します。

 次に、白血球の型がほぼ一致したドナー(骨髄提供者)から正常な骨髄をとり、正常な骨髄を破壊された骨髄と入れかえます。

 しかし、この治療法は白血球のタイプが合うドナーがいなくてはできませんし、年齢制限(高齢になると、安全性の面で問題が大きくなります)などもあります。

 近年、骨髄バンクに登録する人々が増え、ドナーを見つけることが比較的容易になってきていますが、希望しても骨髄移植が受けられないことも少なくありません。

次善の策としてインターフェロンによる治療

 そのような場合には、インターフェロンを単独で用いたり、あるいはそれとキロサイド/サイトサール(シタラビン)と組み合わせて注射する治療が行われます。

 慢性骨髄性白血病の病気の進み方は非常にゆるやかですが、なるべく初期のうちに治療を行ったほうが効果的であることがわかっています。

期待の薬剤、グリベック(メシル酸イマチニブ)

 最近注目されている薬剤がグリベック(メシル酸イマチニブ)です。慢性骨髄性白血病では、染色体の異常な組みかえがおこっています。二つのある特定の染色体の遺伝子の断片が互いに結合して、異常な融合遺伝子をつくり、その遺伝子が異常なたんぱく質をつくり出します。そのたんぱく質が白血病細胞を異常に増殖させるためにこの病気がおこると考えられます。

 グリベック(メシル酸イマチニブ)は、そのたんぱく質のはたらきを阻止することにより、抗白血病薬として働きます。短期間のうちに高い有効性が期待できるとされていて、この薬が登場したことで慢性骨髄性白血病の治療選択は変わるのではないかといわれています。ただ、長期にわたる有効性は現段階では確定していないので、どの時点でこの薬を用いるかに関しては、医師とよく相談してから決めましょう。また、副作用は比較的軽いのですが、吐き気・嘔吐、筋肉のけいれんや筋肉痛、まぶたのむくみや皮膚の発疹などがみられることもあるので、このことも考慮に入れるべきでしょう。

根拠(参考文献)

  • (1) Goldman JM, Apperley JF, Jones L, et al. Bone marrow transplantation for patients with chronic myeloid leukemia. N Engl J Med. 1986;314:202-207.
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  • (9) Baccarani M, Rosti G, de Vivo A, et al. A randomized study of interferon-alpha versus interferon-alpha and low-dose arabinosyl cytosine in chronic myeloid leukemia. Blood. 2002;99:1527-1535.
  • (10) del Canizo MC, Fisac MP, Galende J, et al. Continuous oral cytarabine ocfosfate with interferon-alpha-2b for patients with newly diagnosed chronic myeloid leukaemia: a pilot study. Br J Haematol. 2001;115:541-544.
出典:EBM 正しい治療がわかる本 2003年10月26日初版発行