出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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若年性特発性関節炎(若年性関節リウマチ)
じゃくねんせいとくはつせいかんせつえん(じゃくねんせいかんせつりうまち)

もしかして... 関節リウマチ  心膜炎

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若年性特発性関節炎(若年性関節リウマチ)とは?

どんな病気か

 最近まで若年性関節リウマチと呼ばれていました。大人の関節リウマチが小児期(16歳以下)に発症したものと考えられています。関節の内側にある滑膜という場所で炎症が起こり、徐々に軟骨や骨が破壊されるため、関節が動かしにくくなり、最終的には骨と骨がくっついて動かなくなってしまいます。

 いくつかの病型に分かれ、その病型により症状、経過、治療方法、予後が違います。

 全国で約1万人の子どもがこの病気にかかっているといわれ、女子に多い傾向があります。

原因は何か

 詳しい原因はまだわかっていません。発症に影響するものとして、白血球の血液型(HLA)や、免疫の異常、何らかのウイルス感染、外傷、ストレスなどがあります。

症状と病型

 全身型、多関節型、少関節型に大きく分類されます。

①全身型

 発熱、発疹が主で、関節炎は最初は目立ちません。熱は1日のうちで平熱になったり高熱が出たりして、体温の差が大きいこと(弛張熱)が特徴です。

 また、熱が高い時に手足や体に細かい発疹(リウマトイド疹)が現れます。

 そのほか、リンパ節腫脹、肝障害、心膜炎などさまざまな全身の症状を来します。感染症や血液の病気と区別がつきにくく、診断が確定するまでに時間がかかります。

②多関節型

 成人の関節リウマチに似た経過をたどります。指などの小さな関節を含めて、5カ所以上の関節に炎症がみられます。左右で同じ関節が侵されることが多く、発熱は微熱程度です。

③少関節型

 関節炎は4カ所以下です。膝や足首などの大きな関節が侵されることが多く、4~5歳の女児に多い傾向があります。関節炎は他の型に比べると軽く、多くは数年でよくなります。虹彩炎という眼の病気を合併することがあるので、眼科の定期受診が必要です。

検査と診断

 検査では、白血球や血小板が増えたり、炎症反応が強まります。しかし、これらは他の病気でも異常を示し、診断の決め手にはなりません。成人のリウマチで陽性になるリウマトイド因子も、多関節型の一部で陽性になることがある程度です。全身型では血液疾患、感染症、他の膠原病と区別する必要があるために、さまざまな検査を行います。画像検査ではMRIが初期の関節病変の評価に有用です。

治療の方法

 原因が不明のため、根本的な治療ができないのが現状です。関節機能の温存が、治療の最大の目的です。

①薬物治療

 病型により治療法が若干異なります。

a.全身型

 まず、非ステロイド性消炎鎮痛薬を使います。効果のない場合や心膜炎など重症な合併症がある場合は、ステロイド薬を使用します。内服のステロイド薬の効果が乏しい場合には、ステロイド薬を点滴で大量に投与するパルス療法と呼ばれる方法や、免疫抑制薬の併用療法を選択することがあります。

b.多関節型

 非ステロイド性消炎鎮痛薬だけで症状がおさまることもあります。しかし、関節症状が強い場合や、リウマトイド因子が陽性の場合には、早期から免疫抑制薬で治療します。ステロイド薬を併用する場合もあります。

c.少関節型

 非ステロイド性消炎鎮痛薬単独での治療が可能です。虹彩炎がある場合は、眼科で治療を受ける必要があります。

 前記のような治療を行っても改善がみられない時には、リウマチ専門医指導のもと、生物学的製剤の治療を行う場合があります。生物学的製剤とは、体の炎症を抑える抗体を治療薬としたもので、欧米では広く使われていて、日本でも徐々に使用が認められてきています。

②理学療法

a.急性期

 局所の安静を保ちつつ、関節の拘縮、筋肉の萎縮を予防することが重要です。強い曲げ伸ばし運動や、負荷のかけすぎは痛みも強く、避けるべきです。

b.慢性期

 筋力増強、関節の変形・拘縮の予防が中心です。前もって関節や筋肉を十分に温めて、筋肉の血行をよくしておき、関節や筋肉に過度の負担をかけないように、ゆっくりとリハビリテーションを行います。温水プールを利用したリハビリテーションは効果的です。日常生活や学校生活が普通に送れるよう、その人その人の生活パターンを考えてリハビリテーション計画を立てます。

 家族全員でリハビリテーションの指導を受け、家庭で継続したリハビリテーションができるようにするのが理想です。必要に応じて装具も使用します。

病気に気づいたらどうする

 慢性に経過し、心身ともに苦痛を感じることが多いので、社会生活の援助や心理的なサポートが必要です。小児科医(とくに小児リウマチを専門に診ている医師)、整形外科医、リハビリテーション医、理学療法士、心理療法士、学校教師、それに家族が協力していくことが大切です。

(執筆者:新潟医療生活協同組合木戸病院小児科 樋浦 誠)

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