絨毛がん
じゅうもうがん
絨毛がんとは?
どんな病気か
胎盤は、子宮と胎児との間でガスや栄養・老廃物を交換する器官で、胎児由来の細胞からできています。そのなかで母体に接する部分にあるのが絨毛細胞です。この絨毛細胞に由来する病気には、胞状奇胎、絨毛がんなどがあり、絨毛性疾患と総称します。
絨毛細胞ががん化したものを絨毛がんといいます。ほとんどの絨毛がんは妊娠のあとに発生します(妊娠性絨毛がん)。大部分は子宮に病巣をつくりますが、肺などの転移巣だけが認められて子宮に病変が見つからないこともあります。まれに妊娠とは無関係に卵巣や精巣にある生殖細胞から絨毛がんが発生することもあります(非妊娠性絨毛がん)。
絨毛がんは、肺、腟、肝臓、脳などに血行性転移を非常に起こしやすいため、かつては致死的とされてきました。しかし最近では、化学療法により大部分が治癒するようになりました。
原因は何か
妊娠性絨毛がんは、約半数が胞状奇胎後に、4分の1が正常妊娠後に、残りの4分の1が流産や子宮外妊娠後に発生します。逆に胞状奇胎のなかの約20%が侵入胞状奇胎や絨毛がんになります。そのために胞状奇胎の治療後は定期検診が重要です。
症状の現れ方
胞状奇胎治療後に定期検診を受けている場合は無症状の段階で発見できます。
自覚症状としては不正性器出血や帯下の増量がみられます。子宮、卵巣の腫大や腹腔内出血による下腹部痛が起こることもあります。妊娠悪阻(つわり)が生じることもあります。肺への転移により、胸痛、咳、血痰、呼吸困難が起こる場合もあります。
検査と診断
絨毛がんなどの絨毛性疾患が疑われた場合には血液中および尿中のヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)というホルモンを測定します。絨毛性疾患ではこのホルモンが高値となります。ただし、正常妊娠や流産、子宮外妊娠でもhCGは高値となります。
婦人科的な診察や腹部超音波検査、MRI、CTにより子宮およびその他の腹部臓器への病変の広がりを調べます。超音波検査などにより豊富な血流像が観察されます。骨盤内の血管造影を行うこともあります。
絨毛性疾患は肺への転移が高率にみられるので、胸部単純X線写真を撮影します。肺への転移や神経症状がある場合は、脳への転移の有無を頭部CT、MRIで検索します。
子宮、腟、肺などの病変を切除して病理学的に診断を確定することもあります。しかし、hCGが異常に高い場合は病理学的診断を行わずに、臨床的に診断することも少なくありません。病理診断を行わない場合は、経過や転移部位などを点数化した「絨毛がん診断スコア」を用いて「臨床的侵入奇胎」と「臨床的絨毛がん」との区別をします。
治療の方法
絨毛性疾患に対しては化学療法(抗がん薬)が非常に有効です。侵入奇胎に対しては通常1種類の抗がん薬による治療を行いますが、絨毛がんの場合は3~5種類の抗がん薬を組み合わせた多剤併用療法を行います。
化学療法のみで効果が不十分な時は、手術や放射線療法を組み合わせて行います。
絨毛性疾患に関連する可能性がある薬
医療用医薬品の添付文書の記載をもとに、絨毛性疾患に関連する可能性がある薬を紹介しています。
処方は医師によって決定されます。服薬は決して自己判断では行わず、必ず、医師、薬剤師に相談してください。
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フェンタニル注射液0.25mg「第一三共」
合成麻薬
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ナルラピド錠1mg
あへんアルカロイド系麻薬
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ナルサス錠2mg
あへんアルカロイド系麻薬
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モルヒネ塩酸塩注射液(モルヒネ塩酸塩注射液10mg「第一三共」)
あへんアルカロイド系麻薬
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ナルベイン注2mg
あへんアルカロイド系麻薬
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メソトレキセート錠2.5mg
代謝拮抗剤
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デュロテップMTパッチ2.1mg
合成麻薬
・掲載している情報は薬剤師が監修して作成したものですが、内容を完全に保証するものではありません。
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コラム子宮がん検診
がんも初期の段階で治療すれば大部分が治癒します。しかし、初期のがんでは自覚症状がほとんどありません。そのため早期発見を目的としてがん検診が行われます。
子宮頸がんは、簡単で負担の少ない診察・検査により早期発見が可能です。そのうえ検診により早期発見・治療することで子宮頸がんによる死亡率が低下しており、検診の有効性が認められています。
子宮頸がん検診では、問診、視診、細胞診、内診を行います。問診では、年齢、妊娠分娩歴、月経の状態、不正出血の有無などを聴取します。視診では腟鏡を挿入して子宮頸部を肉眼で直接観察します。次に子宮頸部から細胞を採取します。綿棒・ブラシ・ヘラなどを用いて子宮頸部をこすり、こすったものをスライドグラスに塗ります。このとき少し出血することがありますが、痛みはほとんどありません。
採取された細胞は固定・染色され、のちほど細胞検査士と細胞診指導医が判定します。細胞採取に引き続いて内診を行い、子宮の位置・大きさ、圧痛・癒着の有無、左右の卵巣・卵管の腫大の有無を調べます。
細胞診で異常が疑われた場合は二次検診(精密検診)が必要です。二次検診では、細胞診の再検、コルポスコピー(腟拡大鏡検査)、ねらい組織検査、子宮頸管粘膜搔爬などを行って診断を確定します。
子宮体がん検診は、最近6カ月以内に不正出血のある人のなかで、①年齢50歳以上、②閉経以後、または③未妊婦で月経不規則のいずれかの条件にあたる人を対象とします。
子宮内膜細胞診は、子宮腟部を消毒したのちに、細い細胞採取器具を子宮の内腔に挿入して子宮内膜細胞を採取します。採取する時に軽い痛みと出血があります。子宮内膜細胞診は子宮体がんの検出方法として非常に有効な方法です。しかし、子宮穿孔や子宮内感染を起こす可能性がわずかにあるため、対象を絞って行います。
有効な検診方法であってもすべてのがんを検出できるわけではありません。検診後にも不正性器出血などの症状があれば、あらためて婦人科を受診してください。
絨毛がんに関する医師Q&A
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